2026 02 20

インターネットがつないだ「仲間」と、分断を生む「バブル」

かつて、インターネットがまだ一般的ではなかった時代。
特定の趣味や嗜好を持つ人、いわゆる“マニア”や“オタク”と呼ばれる人たちは、現実社会では少数派として存在していました。

自分の好きなものについて語り合える相手は、学校や職場ではなかなか見つからない。
「こんな話をしても理解されないだろう」と、心の中にしまっておくしかなかった人も多かったはずです。

しかし、インターネットの登場はその状況を一変させました。

時間と距離の制約が取り払われ、離れた場所にいる人同士が瞬時につながれるようになった。
趣味や価値観が合う人を検索し、SNSや掲示板で交流できるようになった。
「仲間が仲間を見つけられる」時代がやってきたのです。

これは間違いなく、インターネットの素晴らしい功績の一つでしょう。

ですが――
その仕組みが、いま別の問題を生み出しています。

それが「フィルターバブル」と「エコーチェンバー」です。


フィルターバブルとは何か

総務省の情報通信白書では、フィルターバブルを次のように定義しています。

アルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し、見たい情報が優先的に表示され、利用者の観点に合わない情報から隔離される情報環境。

つまり、私たちは知らず知らずのうちに、自分の好みに最適化された情報空間の中に置かれているのです。

検索履歴
クリック履歴
閲覧時間
購入履歴

これらのデータはCookieなどを通じて収集され、アルゴリズムによって分析されます。

その結果、

・自分が興味を持ちそうなニュース
・関心がありそうな広告
・好みに合いそうな動画

が優先的に表示されます。

一見すると、とても便利な仕組みです。
欲しい情報がすぐ手に入る。無駄な情報を見なくて済む。

しかし、その利便性こそが問題の本質です。

私たちは、自分の見たい情報だけに囲まれた“泡(バブル)”の中に閉じ込められていきます。
反対意見や異なる視点は、そもそも表示されないため、存在にすら気づきにくい。

これがフィルターバブルの怖さです。


エコーチェンバーとの違い

フィルターバブルとよく混同されるのが「エコーチェンバー」です。

エコーチェンバーとは、SNSなどで自分と似た意見を持つ人同士が集まり、意見が増幅していく現象のことです。

閉じた部屋で声が反響するように、
自分の意見に似た意見が返ってきて、
何度も繰り返し同じ主張を聞くことで、
「これが正しい」と強く信じ込んでしまう。

フィルターバブルが“仕組み”だとすれば、
エコーチェンバーは“現象”です。

アルゴリズムによる情報選別が土台となり、
SNSコミュニティで意見が強化される。

この構造が、集団の極端化を生み出します。


なぜ起こるのか ― 3つの機能

フィルターバブルは、主に次の3つの機能によって形成されます。

① トラッキング機能

ユーザーの行動を追跡し、データを蓄積します。
検索履歴、クリック履歴、滞在時間などが対象です。

② フィルタリング機能

収集したデータをもとに、表示する情報を選別します。
見たい情報は表示し、そうでない情報は表示しない。

③ パーソナライゼーション機能

個人ごとに最適化されたニュース、広告、レコメンドを提供します。

これらは本来、利便性向上のための仕組みです。
しかし高度化した結果、私たちの視野を狭める装置にもなっています。


何が問題なのか

フィルターバブルがもたらす影響は小さくありません。

情報の偏り

自分の信念を補強する情報ばかりに触れることで、確証バイアスが強化されます。

社会的分断

異なる意見を持つ人々と接点が減り、対話が成立しにくくなります。

フェイクニュースの拡散

信頼性の低い情報が同じコミュニティ内で循環し、疑われることなく広まる。

創造性の阻害

多様な視点に触れなければ、新しい発想は生まれにくくなります。

2016年の米大統領選挙や、コロナ禍での情報混乱は、その象徴的な例でした。


私が「闇が深い」と感じる理由

個人的には、エコーチェンバーよりもフィルターバブルのほうが深刻だと感じています。

なぜなら、これはインターネット利用者“全員”が対象だからです。

SNSを使っていなくても、
検索エンジンを使えば影響を受ける。
ECサイトで商品を見れば価格や表示が最適化される。

Amazonなどでは、ユーザーによって同じ商品でも表示価格が異なるケースがあるとも言われています。

つまり、構造的に防ぎようがない部分があるのです。


では、どう向き合うか

完全に避けることはできません。
しかし、意識することはできます。

① プライベートブラウズを使う

シークレットモードなどを利用すれば、履歴に基づかない検索結果に近づきます。

② ネット以外から情報を得る

テレビ、新聞、雑誌などは、不特定多数に同じ情報を届けます。
自分が選ばなかった情報に触れる機会になります。

③ 異なる立場の人と話す

これが、私にとって最も効果的な方法です。


私自身の実感

私は仕事柄、本当にさまざまな方とお会いします。

年齢も、職業も、価値観も異なる人たち。

それがとても良いのです。

自分とはまったく違う考え方に触れるたびに、
「ああ、そういう見方もあるのか」と思わされます。

正直に言えば、私自身もフィルターバブルの中にいます。
得ている情報は確実に偏っています。

だからこそ、リアルでの対話が大切だと感じています。

自分の考えを修正する機会。
世の中を俯瞰して見るきっかけ。
バブルの外の空気を吸う時間。

それは、アルゴリズムでは代替できません。


インターネットは敵ではない

誤解してはいけないのは、インターネットそのものが悪いわけではないということです。

マイノリティ同士をつなぎ、
孤独を減らし、
知識へのアクセスを広げた功績は計り知れません。

問題は、
「便利さに無自覚でいること」だと思います。

私たちは、常に何かのフィルターを通して世界を見ています。
そのフィルターの存在に気づけるかどうか。

それが、これからの情報社会を生きるうえでの鍵になるのではないでしょうか。

インターネットがつないだ仲間の価値を大切にしながら、
同時に、バブルの外にも目を向ける。

そのバランスこそが、分断を越える第一歩なのだと思います。

【本日の一曲】
Skee Mask – Reminiscrmx

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