不動産コンサルティング事例① 「曽祖父の代から借りていた土地の調査と対応」
今回は、せとうち不動産にご相談いただいた実際のケースをもとに、
「代々引き継がれてきた土地の使用関係を、どのように整理していったか」についてご紹介します。
不動産というのは、登記簿上の所有者や権利者だけでなく、
“長年の慣習”や“口約束の延長線”のようなものが関係することも少なくありません。
時代が移り、人が代わり、地域の使われ方が変わるなかで、
「この土地、結局どういう関係なんだろう?」という疑問が浮かぶこともあると思います。
今回のご相談も、まさにそんなケースでした。
■ ご相談の内容:曽祖父の代から続く土地の使用
ある日、お客様からこんなお問い合わせをいただきました。
「曽祖父の代から借りている土地があるのですが、
最近になって貸主の方から“使用料の振込について確認したい”と連絡がありました。
先方の相続が発生して、息子さんの代になったのですが、
“そもそも何の使用料なのか?”と聞かれてしまって…どう説明すれば良いのか分からなくて。」
詳しくお話を伺うと、
その土地はもう何十年も前からお客様のご家族が使用しており、
曽祖父の時代から毎年一定の賃料をお支払いしてきたとのこと。
ただ、契約書などの正式な書面は古く、現在の世代では詳細を把握しておらず、
貸主側も代替わりを経て「どのような経緯で貸している土地なのか」がわからない状態でした。
■ 双方の希望:「これを機に整理したい」
今回のやり取りを通じて浮かび上がったのは、
「お互いに関係をきちんと整理したい」という共通の希望でした。
借主側(ご相談者様)は、
「これから先も賃料を払い続けるよりは、この機会に土地を購入できないか」とのご希望。
一方、貸主側(相続された息子様)も、
「先代から引き継いだものの、詳細が分からず管理が大変。
相続も発生していく中で、整理できるならありがたい」とのご意向でした。
こうして、双方の気持ちは「継続」よりも「整理」に傾き、
賃貸関係を清算して売買による解決を目指す方向で動き出しました。
■ まず行ったのは「事実関係の整理」
せとうち不動産では、まず次のような調査を行いました。
- 登記資料の取得と確認
土地の所有者、地目、面積、地上権・抵当権の有無などを登記簿で確認。 - 権利関係の時系列整理
曽祖父の時代から現在までの貸主・借主の関係を追い、
いつ、どんな形で契約が結ばれたのかをできる限り特定。 - 現地確認と使用状況の把握
現在、土地がどのように使われているのかを現地で確認。
過去の契約内容と現況の整合性を見ました。
調査の結果、
曽祖父と当時の貸主の間では**「地上権」が正式に設定**されていたことが判明。
しかも、きちんと対価(使用料)の取り決めもあり、
単なる“口約束”や“慣習上の貸し借り”ではなく、
法的にも整理された契約関係だったことがわかりました。
■ しかし、時代が変わり「使い方」が変化
ただし、その地上権が設定されたのは何十年も前のこと。
当時と現在では、土地の使い方が大きく変わっています。
もともとは農地の一部を借りていたものが、
今では一部を駐車スペースとして利用する程度になっており、
契約時の「使用目的」や「地上権の範囲」とは異なってきていました。
また、貸主側もすでに県外にお住まいで、
現地の管理や今後の相続対応を考えると、
このまま“半端な権利関係”を残しておくのはリスクになる状況でした。
■ 提案:売買による整理と所有権の取得
こうした経緯をふまえて、せとうち不動産からは次のような提案を行いました。
「これまでの賃貸関係をベースに、
今後は売買によって所有権を取得する形に整理してはいかがでしょうか。」
双方が納得して合意できれば、
毎年の賃料のやり取りや地上権の更新といった手間もなくなり、
お互いにすっきりとした形で関係を終えることができます。
売買金額の設定については、
現在支払われている賃料をもとに換算し、
将来的な利用価値や周辺相場を加味して試算。
貸主側に提示する形で、話し合いを進めていきました。
■ 法的手続き:司法書士との連携
今回のケースでは「地上権」が登記されていたため、
契約解除や所有権移転にあたっては司法書士による手続きが必要になります。
せとうち不動産では、提携している司法書士事務所と連携し、
・地上権抹消登記
・売買契約書の作成
・所有権移転登記
といった流れをサポートしました。
地上権というのは、一般の方には少し馴染みの薄い権利形態です。
簡単に言えば「他人の土地を使う権利」で、
通常の賃貸借よりも強い権利が認められるもの。
そのため、正式に解除・移転を行うには、
きちんとした書類の整備と法的な確認が欠かせません。
こうした手続きを専門家とともに行うことで、
双方にとって安心・安全な契約となりました。
■ 結果:代を超えてすっきりとした整理に
最終的に、貸主・借主双方が合意し、
土地の売買契約が無事に成立しました。
借主側(ご相談者様)は、長年使用してきた土地を正式に自分の所有として登記でき、
将来的にも安心して使えるように。
貸主側も、相続による煩雑な管理を解消し、
遠方からの対応負担を減らすことができました。
双方にとって「代が変わったタイミングで関係を整理する」という選択が、
とても良い結果をもたらしたケースでした。
■ せとうち不動産の考える「不動産コンサルティング」
このような事例は、実は珍しくありません。
長年の慣習で続いてきた土地の貸し借り、
親の代で口約束だけしていた土地使用、
あるいは登記が古いままで実態と合わない権利関係…。
不動産という資産は、「時間」とともに複雑化することがあります。
そして、その整理には「調査力」「法的理解」「当事者間の調整力」のすべてが必要です。
せとうち不動産では、
単に物件の売買や仲介を行うだけでなく、
こうした不動産の“背景”にある関係や権利を整えるお手伝いも行っています。
特に、相続・地権・境界・借地・共有など、
「誰に相談したらいいか分からない」といったお悩みこそ、
私たちの得意とする分野です。
■ 最後に:土地と向き合うことは、“家族の歴史”と向き合うこと
今回のケースを通して感じたのは、
不動産というのは単なる「土地」や「モノ」ではなく、
家族の歴史そのものでもあるということです。
曽祖父の代から続く土地のつながりには、
当時の生活や地域との関わり、そして代々の思いが詰まっています。
だからこそ、今の時代に合わせた形で整理していくことは、
その“歴史を受け継ぎながら未来につなぐ”大切な作業でもあります。
せとうち不動産では、
そんな土地や家族の想いに丁寧に寄り添いながら、
一つひとつのケースに最適な解決策をご提案しています。
せとうち不動産の不動産コンサルティング
土地・建物の調査/権利関係の整理/相続や売買のサポート
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【本日の一曲】
Digable Planets – Jettin’