2025 10 31

UA値(外皮平均熱貫流率)とは?

〜住宅の断熱性能を「正しく」測る新しい物差し〜

住宅の性能を語るときによく耳にする「UA値(ユーエーち)」という言葉。
家づくりを検討している方や、省エネ住宅に興味を持っている方なら一度は聞いたことがあるかもしれません。
しかし、「なんとなく断熱性能の指標だとは分かるけど、正直よく分からない」という方も多いと思います。

この記事では、UA値の意味や計算方法、かつて使われていた「Q値」との違い、そしてなぜこの基準が採用されるようになったのかを、できるだけわかりやすく解説します。


UA値とは?

UA値とは「外皮平均熱貫流率(がいひへいきんねつかんりゅうりつ)」の略称です。
一言でいうと、「建物全体からどれだけ熱が逃げやすいか」を表す指標。

建物の外側を覆う「外皮」——屋根、壁、床、窓、ドアなど、外気に触れている部分——のすべてを対象に、そこからどれだけ熱が逃げていくかを平均した数値です。

数値の単位は
W/㎡・K(ワット毎平方メートル・ケルビン)
と表され、数値が小さいほど「熱が逃げにくい」、つまり「断熱性能が高い」ことを意味します。


UA値の計算方法

UA値は以下の式で求められます。

これをわかりやすく言い換えると、
「建物全体の外皮から逃げる熱の総量」を、「外皮全体の面積」で割った数値です。

計算の手順は以下の通りです。

  1. 外皮の部位ごとの熱損失量を計算する
    外皮とは、建物の内部と外部を隔てる天井(または屋根)、壁(窓やドアを含む)、床などのこと。
    それぞれの部位について、面積と使用されている建材の熱貫流率(U値)をもとに、どれだけ熱が逃げやすいかを計算します。
  2. 外皮総熱損失量を求める
    各部位の熱損失量をすべて合計します。
  3. 外皮総面積を求める
    建物の外側すべて(屋根、壁、床、窓、ドアなど)の表面積を合計します。
  4. UA値を計算する
    外皮総熱損失量を外皮総面積で割ることで、UA値が算出されます。

このように、UA値は「家の外側のどこからどれだけ熱が逃げていくか」を、建物の形状を踏まえて客観的に評価できる指標なのです。


Q値との違い

UA値の前に使われていたのが「Q値(熱損失係数)」です。
Q値もまた住宅の断熱性能を示す指標でしたが、次のような問題がありました。

Q値の計算方法

Q値は次の式で求められます。 Q値=(外皮からの熱損失量+換気による熱損失量)延べ床面積\text{Q値} = \frac{\text{(外皮からの熱損失量+換気による熱損失量)}}{\text{延べ床面積}}Q値=延べ床面積(外皮からの熱損失量+換気による熱損失量)​

つまり、熱の逃げる量を建物の「床面積」で割っていました。

このため、同じ断熱材を使ったとしても、建物の形状(平屋か2階建てかなど)によって数値が変わってしまうという欠点がありました。

たとえば、平屋は外壁や屋根の面積が多く、外気に触れる部分が広いため熱が逃げやすくなります。
一方、2階建ては上下に重なる分、外皮面積が減り、同じ断熱仕様でもQ値が良く見える(数値が小さくなる)傾向にありました。

このため、Q値だけで断熱性能を比較すると「平屋が不利、2階建てが有利」といった不公平さが生まれてしまっていたのです。


UA値への変更理由

こうした背景から、より公平で実態に即した基準として採用されたのが「UA値」です。

UA値は、延べ床面積ではなく「外皮面積(外気に接する表面積)」で割るため、建物の形や階数による影響を受けにくくなりました。
つまり、建物そのものの「断熱性能」を純粋に比較できるようになったのです。

この変更によって、設計段階でより正確な断熱性能の評価が可能になり、地域や建物の形状を問わず、客観的に性能を判断できるようになりました。


UA値の考え方は「立体」的

建物は平面ではなく、立体的な構造を持っています。
そのため、延べ床面積のような「平面的な指標」で評価するよりも、「外皮表面積」という立体的な指標を使う方が、建物の実際の熱の出入りを正確に表せます。

たとえば、同じ延べ床面積の建物でも、窓の位置や屋根形状、壁面の凹凸などによって外皮面積は異なります。
これらの違いを反映できるのがUA値の大きな利点です。


UA値をめぐる余談 「容積率」

少し話はそれますが、不動産の「容積率(ようせきりつ)」という考え方をご存じでしょうか?
容積率とは、延べ床面積を敷地面積で割って算出する指標で、都市計画上の建築制限で「建蔽率(けんぺいりつ)」と一緒に使われています。

建蔽率は平面の話なので良いのですが、容積率は建物の「Q値」の考え方のように、立体の話なのにいまだに「平面の面積」を基準にする考え方です。

筆者自身もこの業界に入った時から、「建物は立体なのに、容積率は平面の足し算で決まるんだな」と思い続けていたりしますw。
いつ改正されるのかな? って。


UA値が示す“暮らしの快適さ”

UA値の数値が小さいほど、外からの熱の出入りが少なくなります。
これはつまり、夏は涼しく、冬は暖かい家であることを意味します。

さらに、断熱性能が高い家は室温のムラが少なく、ヒートショック(急激な温度差による健康リスク)を防ぐことにもつながります。
光熱費の削減や、冷暖房機器の効率的な使用にも貢献するなど、UA値の良い住宅は「エネルギー効率」と「健康・快適さ」を両立できる家といえます。


地域によるUA値の基準

UA値の基準は全国一律ではなく、地域の気候条件によって異なります。
たとえば、北海道のように寒さの厳しい地域では、より低い(高性能な)UA値が求められます。

地域区分基準UA値(住宅の断熱等性能等級5の場合)
1(北海道など)0.46以下
2(北海道など)0.46以下
3(東北・北陸)0.50以下
4(関東・東海)0.60以下
5(近畿・中国・四国)0.87以下
6(九州など)0.87以下

香川県は地域区分「6」にあたり、基準UA値は0.87以下が目安です。
これを下回る(数値が小さい)住宅は、省エネ性能が高い家といえます。


まとめ

UA値とは、建物の「外皮」を通してどれだけ熱が逃げるかを示す指標です。
Q値時代のような建物形状による不公平さを解消し、より正確に断熱性能を比較できる基準として、今の省エネ住宅づくりの中心にあります。

数値だけを見ると難しそうですが、要するに 「UA値が小さいほど、冬は暖かく夏は涼しい家」
それが、暮らしやすさ・光熱費の安さ・健康への安心につながっています。

これから家を建てる方、リフォームを検討している方も、
「間取り」や「デザイン」だけでなく、UA値という“見えない性能”にも目を向けてみることをおすすめします。

【本日の一曲】
PANTERA BLUE – Lágrima