太陽光パネル設置から10年、FIT終了後に考える「これからの使い方」
10年ほど前、住宅の屋根に太陽光パネルを設置した方の多くは、当時の「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)」による売電収入を期待していたのではないでしょうか。
「売電で月に1万円以上入っていた」「住宅ローンの足しになっていた」──そんな声もよく聞かれました。
しかし、設置から10年を迎える頃になると、「以前のように売電収入が入らなくなった」「維持費ばかりかかる」と感じる方が増えてきています。
なぜ、そうした変化が起こるのか。
そして、10年目以降の太陽光発電をどう活かすべきか。
今回は、FIT終了後の賢い選択肢について詳しく見ていきましょう。
1. FIT制度とは?―導入時代の背景
2012年にスタートした再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)は、国が再エネ普及を進めるために導入した仕組みです。
太陽光で発電した電気を電力会社が一定期間・一定価格で買い取ることを義務づける制度で、一般家庭の場合、その買取期間は「10年間」でした。
導入当初の買取価格は、1kWhあたり40円前後という非常に高い水準。
設置費用の回収や、売電による副収入が見込めたことから、全国的に太陽光パネルが急速に普及しました。
2. FIT終了後に起こること ― 売電単価が激減
では、その10年の買取期間が終了すると、どうなるのでしょうか。
結論から言えば、「売電単価が大幅に下がる」ことになります。
FIT期間中は、国が定めた高い価格で買い取ってくれていましたが、期間満了後は「卒FIT」と呼ばれ、買取価格は電力会社ごとの独自設定になります。
多くの場合、1kWhあたり7〜9円程度。FIT時代の1/4〜1/5ほどにまで下がるのが一般的です。
その結果、これまで月に1万円前後あった売電収入が、数千円、場合によっては千円台にまで落ち込むこともあります。
さらに、パワーコンディショナー(パワコン)などの機器が10年前後で寿命を迎えることも多く、交換費用(20万円〜30万円ほど)が発生するケースもあります。
「維持費ばかりかかる」と感じるのは、まさにこのタイミングなのです。
3. 卒FIT後の選択肢 ― 「売る」から「使う」へ
では、卒FITを迎えた太陽光発電システムをどうすべきか。
ここで注目されているのが、「自家消費型」への転換です。
これまでは「発電した電気を電力会社に売る」時代でしたが、これからは「自分の家で使う」時代へと移り変わっています。
電力会社への売電単価が下がった一方で、買電単価(電気代)は年々上昇しています。
FIT終了後は「売るメリット」が減少します。
ではどうすればよいか──答えは、「発電した電気をできるだけ自宅で使う」ことにあります。
4. 蓄電池の導入で「発電した電気を無駄なく使う」
太陽光発電は昼間しか発電しません。
そのため、日中に家を空けている家庭では、せっかく発電した電気の多くを売電に回すしかありませんでした。
しかし、「蓄電池」を導入すれば、日中発電した電気をためて、夜間に使用することができます。
〈蓄電池のメリット〉
- 電気代の削減
昼間の余剰電力を夜間に使うことで、電力会社からの購入電力を減らせる。 - 停電時の安心
災害などで停電が起きた際にも、一定時間は家の電気を使える。 - 環境にやさしい暮らし
自家発電・自家消費によってCO₂排出を削減。持続可能な暮らしに近づく。
5. 蓄電池導入の費用と採算性
では、蓄電池を導入する場合の費用はどのくらいかかるのでしょうか。
家庭用蓄電池の価格は容量やメーカーによって異なりますが、現在は 100〜200万円前後 が相場です。
「高い」と感じるかもしれませんが、電気代が高騰し続けている今、長期的には大きな節約効果があります。
また、各自治体によっては補助金制度が設けられている場合もあり、実質負担を減らせるケースもあります。
さらに、太陽光パネルと蓄電池を組み合わせた「ハイブリッドシステム」にすることで、エネルギーの自給率を高め、電気代の変動リスクに左右されない暮らしが実現できます。
6. 自家消費のシミュレーションをしてみよう
実際に自家消費へ切り替えることで、どのくらいのメリットが得られるのか。
これは各家庭の電力使用状況によって大きく変わります。
たとえば、
- 日中に在宅している時間が長い家庭
- オール電化住宅
- 電気自動車(EV)を所有している家庭
などは、自家消費率を高めやすく、蓄電池の効果も出やすい傾向にあります。
逆に、共働きで昼間はほとんど電気を使わない家庭では、蓄電池の導入によって効率的に電気を活用できるようになります。
現在は、電力会社や販売業者による「自家消費シミュレーション」も多く提供されており、年間電気代の削減効果を具体的に確認できます。
導入前に一度試算してみると、今後の方向性が見えやすくなります。
7. 卒FITは「終わり」ではなく「次のステージ」へ
FIT制度が終わると、「もう太陽光は意味がない」と感じる方もいます。
しかし、実際にはここからが「太陽光の本当の活かし方」が始まるタイミングです。
これまで国のサポートに依存していた再エネ利用を、今度は自分たちのライフスタイルに合わせて最適化していく。
それが「自家消費型太陽光」の考え方です。
売るより、使う。
その切り替えによって、より合理的で持続可能な住まいが実現します。
8. まとめ ― これからのエネルギーとの付き合い方
太陽光発電を設置して10年。
FITの終了は一つの節目ですが、決してマイナスの出来事ではありません。
むしろ、エネルギーを「自分でつくって自分で使う」時代への入口です。
- FIT終了後は売電単価が下がる
- 蓄電池を導入すれば発電した電気を自宅で使える
- 自家消費型へ切り替えることで電気代を削減できる
- 補助金やシミュレーションを活用して、最適な方法を選ぶ
電気代が上がり続ける今だからこそ、卒FIT後の対応がこれからの家計と環境を左右します。
「売る」から「使う」へ──。
太陽光の価値は、これからもう一度、見直す時期に来ているのかもしれません。
【本日の一曲】
Mild High Club – Homage