香川県の水道料金が大幅に増える見通し
―人口減少とインフラ老朽化がもたらす“静かな危機”―
2025年度、香川県の水道事業が初めて「赤字」に転落する見通しとなりました。
これまで当たり前のように使ってきた“蛇口をひねれば出る水”が、今やその安定供給を維持することが難しくなっているのです。
香川県広域水道企業団によると、現在の年間の整備費はおよそ87億円ですが、今後は老朽化した施設や水道管の更新により、120億円程度まで増加する見込みです。
さらに、総費用全体では2028年度に約170億円まで膨らみ、2038年度には134億円の赤字になるという深刻な試算が出ています。
この見通しを受け、香川県では2026年度中に県内統一の新しい水道料金を決定し、2028年度からの値上げを予定しています。
「値上げは避けられない状況」との発表が示す通り、いま香川県の水道事業は持続可能性の岐路に立たされています。
■ なぜ水道料金は上がるのか?
水道料金の値上げには、主に3つの要因があります。
① 人口減少による使用量の減少
香川県の人口は年々減少しており、それに伴って水の需要も減っています。
水道事業の収入は「水を使う量」に比例するため、利用者が減ると必然的に収入も減少します。
広域水道企業団の試算では、2038年度の水使用量は2023年度比で約11%減。
つまり、同じ設備を維持するにも、利用者一人当たりの負担が大きくなるということです。
② 老朽化したインフラの更新費
水道管の多くは高度経済成長期に整備されたもので、今や法定耐用年数40年を超える管が全国的に増加しています。
香川県内でも老朽化が進み、漏水や破裂などの事故が今後増える懸念があります。
これらを更新するには莫大な費用がかかります。
加えて、材料費や人件費の上昇もあり、維持コストは今後も右肩上がりが続くとみられています。
③ 維持管理にかかる人材・エネルギーコスト
水道は24時間365日稼働している社会インフラです。
施設を監視し、トラブルに対応し、水質を管理するためには、熟練した技術者とエネルギーコストが欠かせません。
人材の高齢化や後継者不足も課題となっており、運営コスト全体を押し上げています。
■ 水道は「公共財」から「持続可能なサービス」へ
これまで水道は「公共サービスの象徴」として、誰もが安価で安心して利用できる存在でした。
しかし人口減少と財政制約が進む中で、水道事業は**“料金で支え合う共同事業”**という性格が強まっています。
香川県のように広域で水道を統合し、運営効率を高める取り組みは全国的にも進んでいます。
それでもなお、老朽化のスピードとコスト増を補いきれず、料金改定が避けられないのが現状です。
水道の維持は、単に「水を供給すること」ではなく、
- 安全な水質を保つ
- 災害時にも機能を維持する
- 未来の世代に安定して水を届ける
といった“持続可能な生活基盤”を守るための投資でもあります。
■ 値上げは「負担」か、それとも「未来への備え」か
料金値上げというニュースは、どうしても「家計への負担増」として受け止められがちです。
しかし、もし水道管が破裂して断水が続けば、その影響は数十倍の不便やコストとなって私たちに跳ね返ってきます。
香川県の水道事業は、今後も安定した供給を続けるために、
設備更新・災害対策・人材育成といった長期的な投資が欠かせません。
これを「未来への必要な支出」と捉え、地域全体で支え合うことが求められています。
■ これから起こるのは「水道だけの問題」ではない
今回の香川県のケースは、水道だけの話ではありません。
電気・ガス・道路・下水道・公共交通など、あらゆるインフラが同じ課題を抱えています。
人口が減り、税収が減る一方で、インフラの老朽化は待ってはくれません。
「直す人・お金・時間」が足りないまま、修繕が追いつかない地域がこれから急増するでしょう。
特に地方都市では、**インフラの“縮退”**が現実的な選択肢として議論され始めています。
すべてを維持するのではなく、人口の集中するエリアに資源を集中させ、効率的にインフラを再構築する方向へ。
そうした“選択と集中”の議論が、いよいよ香川県でも必要になってきています。
■ 家庭でできる「水のリスク対策」
水道料金の値上げは避けられませんが、家庭レベルでできる対策もあります。
- 節水型設備への交換
節水トイレや節水シャワーヘッドに交換することで、年間の使用量を10~20%減らすことも可能です。 - 雨水タンクの活用
庭や家庭菜園の水やりに雨水を使うことで、生活用水の一部を自給できます。 - 災害時の備蓄水を確保
インフラの老朽化は災害時のリスクを高めます。1人あたり3日分(約9L)の水を備蓄しておきましょう。 - 地域での水道の見守り活動
漏水や異音、道路の陥没など、異変を早めに報告することで大きな事故を防ぐことができます。
■ これからのインフラは「支え合う意識」で守る時代へ
私たちの暮らしを支えるインフラは、半世紀以上にわたって築かれてきた「地域の資産」です。
しかし、その維持には確実にコストがかかり、利用者一人ひとりの負担なくしては成り立ちません。
香川県の水道料金値上げは、決して明るいニュースではありません。
けれどもこれは、**“水道を守るための値上げ”**であり、将来の断水や設備崩壊を防ぐための大切な一歩です。
■ まとめ ― 「安定した水を未来へつなぐために」
- 香川県では人口減少と老朽化により、2028年度からの水道料金値上げがほぼ確実
- 現在87億円の整備費は将来的に120億円へ、赤字は2038年度に134億円に拡大見込み
- 水道料金の値上げは“負担”ではなく、“未来のための維持費”
- 水道問題は他のインフラにも共通する「地域課題」
これからは、安い・便利だけでなく、どう守り、どう持続させていくかを考える時代。
香川県の水道問題は、私たち一人ひとりが地域の未来を考えるきっかけになるはずです。
【本日の一曲】
Yaahn Hunter Jr. – Vintage Chill Vibes (feat. Ana Pshokina) (House Mix)