不動産コンサルティング事例② 「道路拡幅工事に伴う住まいの再建と土地活用」
不動産の相談内容には「売りたい」「買いたい」といった単純な取引だけでなく、行政や生活環境の変化に伴って発生する複雑な課題も多くあります。
今回ご紹介するのは、「道路拡幅工事によって、現在の住まいの大部分が収用されることになった」お客様のケースです。
住まいの再建、新しい生活の拠点の確保、そして残地の有効活用までをトータルでご提案した、不動産コンサルティングの実例をご紹介します。
1. ご相談の背景
お客様のご自宅は、長年暮らしてきた住宅地の一角にありました。
市の進める「道路拡幅工事」により、敷地の大部分が事業区域に含まれることが決まり、立ち退きが必要となりました。
補償金が支払われるものの、それで新しい住まいを確保できるかどうか、どのように資金計画を立てればよいかという点で不安を抱えておられました。
「生活圏をできるだけ変えずに、今の地域で暮らし続けたい」
「補償金の範囲で無理のない住み替えをしたい」
これが、お客様からの最初のご要望でした。
2. 相談内容と検討の方向性
今回のご相談では、大きく3つの選択肢が考えられました。
- 自己所有地(農地)を宅地に転用して新築を建てる
- 新たに土地を取得して新築住宅を建てる
- 中古住宅を購入する
それぞれの選択肢にメリット・デメリットがあり、また補償金の使途や建物解体費、引っ越し費用などを考慮する必要があります。
私たちはまず、補償金の金額と、生活希望のバランス を整理するところからスタートしました。
3. 補償金と資金計画の立て方
市からの補償金には、「土地収用に対する補償」と「建物の移転補償」などが含まれます。
この金額は、あくまで“今ある資産を失うことへの補償”であって、新しい住まいをそのまま丸ごと建て替えるには不足する場合もあります。
そこで、補償金を基準に次のような項目を整理しました。
- 新しい住宅の建築費(または購入費)
- 既存建物の解体費用
- 農地転用や登記などの諸手続き費用
- 引っ越し・仮住まいなどの生活移行費
- 残地の整備や外構工事費
これらを総合的に見える化することで、「無理のない資金計画」 を立てることができます。
4. 生活圏を変えないという希望
お客様にとって最も重要だったのが「今の地域で暮らし続けたい」という想いでした。
長年慣れ親しんだご近所との関係や、通い慣れたスーパー・病院・お子様の通学ルートなど、生活の基盤はできるだけそのままにしたいというご希望。
そこで私たちは、候補地の一つである「お客様が所有する農地」に注目しました。
その農地は現在のご自宅からごく近くにあり、生活圏もほぼ変わりません。
問題は「農地を宅地に転用できるかどうか」。
農地法上の手続きが必要となるため、行政との協議や書類準備など時間を要するケースですが、幸い条件が整っており、転用許可が得られる見通しが立ちました。
5. 自己所有地を活かした新築計画
最終的に選ばれたのは、自己所有地の農地を宅地に転用し、新たに住宅を建築するプラン でした。
この方法のメリットは次の通りです。
- 土地取得費用がかからない
- 現在の住まいから近く、生活環境が変わらない
- 補償金を建築費や諸経費に集中できる
- 残地(従前の住まい跡地)を別用途で活用できる
一方で、農地転用や造成、地盤改良など初期費用が発生します。
これらをすべて資金計画に含め、トータルで無理のない予算内に収めるよう設計しました。
建築プランは、生活動線や採光、将来的なメンテナンス性を重視した平屋ベースの住宅。
長く快適に暮らせることを第一に考えた設計となりました。
6. 既存建物の解体と残地の利用
一方、現在の住まい跡には一部「残地」が残ります。
この土地をどのように使うかも重要なポイントでした。
新居が近隣に建つため、残地は「離れ」や「倉庫用地」としても利用可能です。
お客様は日常的に農作業をされているため、農機具や軽トラックを保管できる場所として活用することに。
結果的に、“住まいの再建+生活基盤の維持” を両立させるかたちとなりました。
7. コンサルティングで重視したこと
今回のように、行政の事業(道路拡幅・土地収用など)に関わる場合は、
「補償金額」だけを基準に判断してしまうと、後から資金が不足するケースがあります。
そのため、私たちは常に次の3つを軸にご提案を行っています。
- 資金計画の全体像を可視化すること
補償金で賄える部分と、追加で必要になる費用を明確にし、早い段階で方針を定めます。 - 生活圏・暮らしの継続性を大切にすること
慣れた地域での暮らしを維持することは、金額以上に大きな価値があります。 - 将来を見据えた土地活用を考えること
残地や周辺の土地も、将来的な資産としてどのように維持・活用できるかを一緒に検討します。
8. 今回の結果
結果として、お客様は 自己所有地を有効活用し、新しい生活を同じ地域で再スタート されました。
新しい住まいは、生活導線がスムーズで明るく、断熱性・耐震性にも優れた安心の住宅。
旧宅跡地は、農作業の拠点として利用しながら、いずれは倉庫や小規模な駐車スペースとしても活用できるよう整備しました。
「住み慣れた場所を離れずに済んでよかった」
「新しい家も使いやすく、落ち着いた生活ができている」
と、ご満足いただけた結果となりました。
9. おわりに
不動産コンサルティングは、単に「土地や建物を取引すること」ではありません。
お客様の暮らしや価値観、地域とのつながりを大切にしながら、最適な選択肢を一緒に探していく仕事です。
今回のように、行政による事業で住まいが影響を受ける場合、
「補償金で何ができるのか」「今後どう生活を立て直すのか」を冷静に整理することが何より重要です。
私たちは、
・補償金の範囲で無理のない資金計画を立てたい
・生活圏を変えずに住み替えたい
・残った土地を有効活用したい
といったご相談に、経験に基づく具体的な提案でお応えしています。
もし同じような状況でお悩みの方がいらっしゃいましたら、
ぜひ一度ご相談ください。
生活の再出発を、安心して迎えられるように。
不動産の立場から、最善のサポートをさせていただきます。
【本日の一曲】
Kim Sang Hee – (They Long to Be) Close to You