本当はダメだけど、意外と知られていないこと −年末お掃除編−
年末が近づくと、気になってくるのが「おうちの大掃除」。
一年の汚れを落として、すっきり新年を迎えたい、という方も多いのではないでしょうか。
テレビやネット、SNSを見ていると、
「これを敷くだけで汚れ防止!」
「つけるだけで掃除が楽!」
といった便利グッズが数多く紹介されています。
ですが実はその中には、本当は推奨されていない使い方や、
場合によっては危険につながることも含まれています。
今回は、不動産・建築に携わる立場から、
「良かれと思ってやっているけれど、実は注意が必要な掃除・設備の話」
をいくつかご紹介します。
IH調理器に「汚れ防止シート」は危険?
最近よく見かけるのが、IHクッキングヒーターの上に敷く
汚れ防止シート。
油はねを防ぎ、掃除も楽になるということで、
ホームセンターやネットでも人気の商品です。
ところが、この使い方について、
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) が
注意喚起を行っています。
なぜ危険なのか?
IH調理器には、鍋底の温度を検知するための
温度センサーが組み込まれています。
ところが、
温度センサーと鍋の間に汚れ防止シートが挟まることで、
温度を正しく検知できなくなる場合があります。
実際に、
- 汚れ防止シートを敷いた状態で揚げ物を調理
- 温度センサーが過熱を検知できず
- 油が異常加熱し、炎が上がった
- 周囲を焼損し、やけどを負った
という事例も報告されています。
掃除が楽=安全、ではない
「メーカーが売っているから大丈夫」
「みんな使っているから問題ない」
そう思いがちですが、
IH調理器の多くは、シート使用を前提に設計されていません。
どうしても使いたい場合は、
- IH本体の取扱説明書を確認
- シート側の注意事項を確認
- 揚げ物調理時は特に注意
- 調理中は絶対にその場を離れない
このあたりは最低限守る必要があります。
換気扇の「使い捨てフィルター」は万能ではない
次に多いのが、換気扇に取り付ける使い捨てフィルター。
「掃除が楽になる」
「油汚れを防げる」
というイメージから、
レンジフードや浴室、トイレまで
一律につけているご家庭も少なくありません。
ですが、これも設置場所によって向き・不向きがあります。
換気扇フィルターの基本的な問題点
使い捨てフィルターをつけると、
- 空気の通り道が狭くなる
- 換気効率が低下する
- モーターに余計な負荷がかかる
というデメリットが生じます。
例えるなら、
マスクをしたままマラソンを走るような状態。
短時間なら問題なくても、
長期間続けば機械に負担がかかるのは想像しやすいと思います。
レンジフードにはつけないほうがいい?
レンジフード用のフィルターは特に人気ですが、注意が必要です。
メリットとしては、
- 油汚れの付着を軽減
- 大掃除の手間が減る
といった点があります。
一方で、
- 目詰まりによる換気能力の低下
- 油分を含んだフィルターの発火リスク
- モーター故障の原因
といったリスクもあります。
特に、
コンロとレンジフードの距離が近い住宅では、
油を含んだフィルターへの引火リスクはゼロではありません。
「掃除が楽だから」とつけっぱなしにせず、
燃えにくい素材を選ぶ、
こまめに交換する、
といった配慮が必要です。
トイレは「条件付きでOK」
トイレの換気扇については、
こまめに交換するのであれば有効なケースもあります。
- 臭い対策
- ホコリの侵入防止
- 掃除の手間軽減
といったメリットがあります。
ただし、
フィルターが汚れたままだと換気効率が下がり、
逆に臭いがこもる原因になります。
「つけるなら必ず定期交換」
これが前提条件です。
お風呂場は注意が必要
浴室は湿気が非常に多い場所です。
使い捨てフィルターをつけると、
- 水分を含んで目詰まり
- 換気性能の低下
- 湿気がこもりやすくなる
結果として、
カビが発生しやすくなることがあります。
浴室換気扇は、
- フィルターなし
- こまめな掃除
- 定期的な換気運転
この方が結果的にトラブルが少ない場合も多いです。
IHコンロのガラストップ掃除、正解は?
IHクッキングヒーターの
ガラストップについた焦げや油汚れ。
「金たわしでゴシゴシ」
は、絶対にNGです。
正しい掃除方法
- クリームクレンザーやIH専用洗剤を使用
- ラップやアルミホイルを丸めて
- 優しくくるくるこする
ラップやアルミは洗剤を吸い込まないため、
研磨剤をガラス表面で転がすように使えます。
一見、傷がつきそうですが、
クリームクレンザー程度の研磨力なら問題ありません。
金属たわしだけは避けましょう。
外壁掃除で「高圧洗浄機」は要注意
最後は、建物の外壁について。
最近は家庭用の高圧洗浄機も普及し、
外壁や駐車場を洗う方も増えています。
ですが、
サイディング外壁に高圧洗浄機は要注意です。
なぜダメなのか?
① 塗膜が剥がれる
サイディング外壁は、
表面の塗膜によって紫外線や汚れから守られています。
強い水圧を当てると、
- 塗膜が剥がれる
- 防水性が低下
- 汚れが付きやすくなる
- 劣化が早まる
といった悪循環に陥ります。
② シーリング材の劣化
外壁の継ぎ目に使われているシーリング材。
経年劣化で硬くなっている部分に
高圧洗浄を当てると、
- ひび割れ
- 剥離
- 雨水侵入
につながる可能性があります。
実際、
メーカーが高圧洗浄を推奨していないケースも多いのが現状です。
まとめ:掃除は「やりすぎない」も大事
年末の大掃除は、
家を大切にする良い機会です。
ただし、
- 便利そうだから
- みんなやっているから
という理由だけで行うと、
かえって設備を傷めたり、
安全性を損なったりすることもあります。
「楽をするための工夫」が、
「余計な修理や交換」につながらないよう、
少し立ち止まって考えることも大切です。
掃除は、
家を長持ちさせるためのメンテナンス。
無理をせず、
正しい方法で、
できる範囲で行っていきましょう。
【本日の一曲】
Donny Benet – Bernard’s Boogie