「喪中ハガキが廃止されてた」——気づかないうちに変わっていた日本の郵便文化
年末が近づき、そろそろ年賀状や挨拶状の準備を始める人も多い季節になりました。そんな中、先日、私自身の家族に不幸があり、喪中ハガキを作る機会がありました。
宛名を書こうと、購入していたハガキの梱包を開けた瞬間、小さな違和感が走りました。
「……あれ? 切手のデザイン、こんなんだったっけ?」
これまで当然のように存在していた 胡蝶蘭の切手入り喪中用ハガキ が、どこを見ても見当たらない。
“たまたま売り切れなのかな?”
そう思って調べてみると、驚きの事実に辿り着きました。
■ 喪中ハガキ、実は「廃止」されていた
結論から言うと、
「喪中はがき」として使われてきた胡蝶蘭デザインの通常はがきは、2024年10月1日に廃止されていました。
ただし、正確には “喪中ハガキという専用商品が無くなった” のではなく、
「弔事に使われる前提で販売されていた胡蝶蘭(およびユリ)デザインの通常はがき」が販売終了した という形です。
実は郵便局には、もともと「喪中はがき」というカテゴリーの商品は存在していませんでした。
喪に服す雰囲気を持つ「胡蝶蘭・ユリ」のデザインが、長年 “事実上の喪中はがき” として親しまれてきた、というのが実態です。
しかし昨年(2024年)10月の郵便料金改定に合わせ、この胡蝶蘭の通常はがきは quietly(静かに)姿を消しました。
■ 気づきにくい理由は「昨年の料金改定」の影響
今回の廃止に気づかなかった方も多いと思います。
私自身も、昨年の郵便料金の値上げ(84円→85円など)が大きなニュースとして記憶に残っていて、胡蝶蘭はがき廃止の情報は完全に影に隠れてしまっていました。
たしかに昨年の喪中ハガキの時期には、胡蝶蘭デザインのはがきが少なかった気がします。
今思えば「あの時すでに廃止されていた」のだと、後になってようやく理解できました。
■ 廃止の背景——郵便コストの見直し
胡蝶蘭の廃止は、決して “デザインの問題” ではありません。
背景にあるのは、郵便事業のコスト削減 です。
郵便局の通常はがきには、これまでいくつものデザインラインナップがありました。
・年賀状
・私製はがき
・胡蝶蘭(弔事向け)
・絵入りデザインはがき
など。
しかしラインナップが増えれば増えるほど、
◎ 印刷コスト
◎ 在庫管理コスト
◎ 物流コスト
が積み重なっていきます。
郵便物が年々減少している中、これらのコストを維持するのは厳しい現実があり、
その結果、今回の「胡蝶蘭デザイン廃止」という決断につながったのです。
■ 今までのような切手で喪中ハガキを出したい場合はどうするのか?
方法は次の通りです。
● 私製はがき + 弔事用普通切手(85円)
現在も「弔事用普通切手」は発行されています。
2024年9月には新しいデザインに刷新され、青みを帯びた菊の意匠が印象的です。
・郵便局窓口 → 1枚から購入可能
・ネットショップ → 100枚単位で購入可能
■ “手書き文化の衰え” を思い知らされた出来事
今回、久しぶりに喪中ハガキの宛名を手書きで書いていて、ふと気づいたことがあります。
「手が、疲れる……」
少し書いただけで指がだるい。
もっと書き続けると、若干つりそうになることも。
昔はこんなこと、なかったはずなのに。
さらに困ったのは、
・漢字が出てこない
・書きながら「これで合ってたっけ?」と不安になる
という現象。
手書きの手帳を使い、できるだけ手書きができるときはしてるのですが
スマホやPC利用の多い生活を送っていると、こんなにも字を書く力が失われていくのか…と痛感しました。
“使わない機能は衰える”
という事実を、まざまざと実感することに。
少し寂しい気持ちにもなりましたが、同時に「年に数回は手書きの機会を作ろう」と思わせてくれる出来事でもありました。
■ 「喪中を知らせる」という文化はこれからも続く
郵便局の胡蝶蘭はがきが廃止されたことで、
「喪中ハガキってもうなくなるの?」
と感じられた方もいるかもしれません。
しかし喪中ハガキの本質は、“形式” ではなく 気持ち にあります。
・年賀の挨拶を控える
・相手に心配や失礼がないようにお知らせする
・故人への哀悼の気持ちを共有する
こうした日本の長い文化は、デザインが変わっても確実に受け継がれていくでしょう。
■ 最後に
「喪中ハガキが廃止」という言葉だけを聞くと
“え、そんな大きな変化が?”
と驚きますが、実際にはデザインが見直されただけで、喪中の文化が無くなるわけではありません。
むしろ、あえて時間をかけてハガキを書くことで、
改めて「人に気持ちを届ける」営みの大切さに気づかされました。
これから喪中ハガキを出す方は、
ぜひ一度、弔事用切手や私製はがきをチェックしてみてください。
少し手間は増えますが、そのぶん “心を込める余白” が広がるはずです。
【本日の一曲】
Oscar Peterson – Sunny