2025 12 18

久万高原町の吉野屋菓子舗に寄ってきました

―― 四国の山あいで出会う、変わらない甘さ ――

先日、父の仕事の関係で愛媛県の久万高原町へ行ってきました。
父も高齢になり、長距離の運転はさすがに心配な年齢。今回は私が運転手兼助手という立場での同行です。助手といっても、実際はほぼ運転手ですが(笑)。

久万高原町を訪れるのは、ここ最近では年に1〜2回ほど。頻繁というほどではありませんが、不思議と「久しぶり」という感覚もなく、訪れるたびに安心感のようなものを覚える場所です。
「四国の軽井沢」と呼ばれるだけあって、標高は高く、街の空気は澄んでいます。今回も幸い天候に恵まれ、冬場にもかかわらず雪ではなく快晴。青空の下、冷たいけれど心地よい空気が広がっていました。

四国山地に抱かれた、高原のまち・久万高原町

久万高原町は、愛媛県のほぼ中央部に位置し、旧久万町・面河村・美川村・柳谷村の4町村が2004年に合併して誕生した高原のまちです。
松山市から国道33号線を南へ進み、標高720mの三坂峠を越えておよそ34km。かつては「山を越える」という感覚が強かった道のりも、三坂道路の開通により、現在では松山ICから町中心部まで車で約30分ほどと、ぐっと身近な存在になりました。

総面積は584平方キロメートルと、愛媛県内の市町村では最大。石鎚山をはじめとする四国山地に囲まれ、標高300m〜1,000mのエリアに集落や農地が点在しています。
また、近年「仁淀ブルー」で全国的に知られるようになった仁淀川。その源流となる面河川や久万川が流れる、水源地域でもあります。

平均標高は約800m。夏でも涼しく、昔から避暑地として親しまれてきました。面河渓、石鎚山、皿ヶ嶺、四国カルストなど、自然を目的に訪れる人も多く、アウトドアや登山、ドライブが好きな方にはたまらないエリアです。
さらに、美術館や天文観測館、山岳博物館、上黒岩遺跡、四国霊場など、文化・歴史資源も非常に豊富。自然と人の営みが、無理なく同居している町だと感じます。

用事のあとに、必ず寄りたくなる場所

今回の訪問も、父の用事自体は無事に終了。
そして、そのあとに立ち寄るのが、ほぼ毎回のお決まりコースになっている「吉野屋菓子舗」さんです。

正直に言えば、「ついで」ではありません。
このお店に寄ること自体が、久万高原町を訪れる目的のひとつになっていると言っても過言ではないです(笑)。

吉野屋菓子舗は、四国の山あいにある、昔ながらの和菓子屋さん。
派手な外観でも、観光向けの演出があるわけでもありません。しかし、一歩店内に入ると、どこか懐かしく、落ち着いた空気が流れています。

名物は、まさかの「カステラ」

ここで少し意外に思われるかもしれません。
吉野屋菓子舗の名物は、なんと「カステラ」。

長崎や九州を思い浮かべる方も多いカステラですが、四国の山の中で、しかも久万高原町でカステラが名物と言われると、最初は少し驚きます。
ですが、このカステラが本当に美味しい。

全国菓子博覧会で何度も賞を受賞している、まさに“実力派”。
ふわっとした食感、しっとりとした口当たり、そして甘すぎない優しい味わい。派手さはありませんが、「また食べたい」と素直に思わせてくれるカステラです。

個人的には、どこか昔ながらの「おやつ」の記憶を呼び起こす味だと感じています。特別な日に食べる高級菓子というよりも、日常の延長線上にある、少しだけ贅沢なおやつ。
それが、吉野屋菓子舗のカステラの魅力なのかもしれません。

何本も買ってしまう理由

今回も、気がつけばカステラを何本も購入していました。
自宅用はもちろん、家族や知人へのお土産としても重宝します。派手さはないけれど、「ちゃんと美味しいもの」を渡したいときに、これほど安心できるお菓子はなかなかありません。

そして不思議なことに、何度食べても飽きない。
久万高原町を訪れるたびに、「今回も買って帰ろう」と自然に思ってしまうのです。

お店の方の対応もとても丁寧で、必要以上に距離を詰めてくることもなく、でも冷たいわけでもない。
この距離感もまた、久万高原町という土地柄を表しているように感じます。

変わらないものがあるという価値

久万高原町を訪れるたびに思うのは、「変わらないものがある」という安心感です。
道路が整備され、アクセスが良くなり、町としても交流人口や定住人口を増やすための取り組みが進められています。一方で、町の空気感や、人の距離感、そして吉野屋菓子舗のカステラの味は、大きく変わっていないように感じます。

便利さや効率が重視される時代だからこそ、こうした「変わらなさ」は、実はとても貴重なのではないでしょうか。
久万高原町の自然、歴史、文化、そして一軒のお菓子屋さん。どれもが、この町らしさを静かに支えているように思います。

父の仕事に付き添う形ではありましたが、結果的に今回も、心が少し整うような時間を過ごすことができました。
また次に久万高原町を訪れるときも、きっと吉野屋菓子舗に立ち寄り、同じようにカステラを何本も買ってしまうのでしょう。

そう思える場所があること自体が、少し贅沢なことなのかもしれません。


◻︎◻︎吉野屋菓子舗 住所:愛媛県上浮穴郡久万高原町久万166-1
         時間:8:00~20:00(日曜は19:30まで)
         定休日:毎月3日・13日・23日
         https://maps.app.goo.gl/HAVEEPuATqP5xCZk8




【本日の一曲】
Loyae – Slow Season