2026 01 24

さすがの手塚治虫。時代を軽々と超えてくる「囊(ふくろ)」

改めて感じる、手塚治虫という作家の異常なまでの想像力と構成力

今回観たのは、1970年代に描かれた短編作品「囊(ふくろ)」。
ブラック・ジャックでおなじみのキャラクター「ピノコ」に直結する、いわば“原型”とも言える物語です。

この作品が描かれたのは今から58年も前
にもかかわらず、古さを感じるどころか、
「今描かれた作品です」と言われても違和感がない。

さすが、手塚治虫。
この一言に尽きます。

ピノコ誕生の源流にある物語

ブラック・ジャックに欠かせない存在であるピノコ。
彼女が初登場するのは1974年のエピソード「畸形嚢腫」ですが、
その6年前に描かれた「囊」は、ピノコ出生秘話の先駆的作品と言われています。

テーマとなっているのは「嚢腫」、
医学的には双子の一方がもう一方の体内に取り込まれ、発育する現象

医師免許を持つ漫画家・手塚治虫ならではの、
医学的知識とフィクションを大胆に融合させた設定です。

ただ、この作品が凄いのは、
医学ミステリーにとどまらない点にあります。

ラブストーリーであり、ミステリーでもある

物語は、主人公の男性が、
偶然出会った女性「リカ」に強く惹かれるところから始まります。

雨に濡れた髪、
ペイネの絵のような佇まい、
フランス映画や音楽を好む感性。

淡く、どこか夢のような恋。

しかし、物語は次第に不穏な空気を帯びていきます。
彼女は突然姿を消し、
家を訪ねると「そんな娘はいない」と告げられる。

代わりに現れるのは、姉の「マリ」。

そっくりで、でも違う。
双子でもないという。

ここから、
ラブストーリーは一気にミステリーへと姿を変えます。

夢と現実、生と死の境界線

物語の中盤、リカが語る悪夢。
刃物を持った誰かに追いかけられ、切り裂かれる夢。

それは単なる悪夢ではなく、
彼女自身の存在を暗示する伏線として、静かに置かれています。

やがて明かされる真実。
マリの体内には、
「双子のもう一人」が“脳だけの存在”として生き続けていた。

愛した女性は、
実体を持たない存在だったのか。
それとも、確かにそこに「生きていた」のか。

この曖昧さが、作品に強烈な余韻を残します。

58年前とは思えないテーマ性

驚かされるのは、
この作品が描いているテーマの深さです。

・人はどこからが「一人の存在」なのか
・肉体がなくても「生きている」と言えるのか
・愛は、形を持たなければ成立しないのか

これらは、
現代の生命倫理やAI論争にも通じる問いです。

それを、
1970年代以前に、
漫画という表現で、
ここまで静かに、そして美しく描いている。

改めて、手塚治虫の先見性に背筋が伸びます。

ブラック・ジャックへとつながる系譜

「囊」を知ると、
ブラック・ジャックの世界観が、より立体的に見えてきます。

命を救うとは何か。
医療はどこまで踏み込んでいいのか。
感情と倫理は、どこで折り合いをつけるのか。

ピノコというキャラクターも、
単なるマスコットではなく、
この深い問いの延長線上に生まれた存在なのだと分かります。

やはり、さすがは手塚治虫

正直なところ、
「昔の名作だから」と身構えて観始めました。

しかし、そんな心配は一瞬で消えました。

引き込まれる物語。
緻密な構成。
静かな恐怖と、切ない余韻。

58年という時間を、軽々と飛び越えてくる力。

やはり、
手塚治虫は別格です。

まだ観たことがない方には、
ぜひ一度触れてみてほしい作品です。

そして、すでに知っている方も、
今の感覚で見返してみると、
きっと新しい発見があるはずです。

◻︎◻︎手塚治虫公式サイト 嚢 https://tezukaosamu.net/jp/manga/424.html

◻︎◻︎手塚プロダクション公式チャンネル https://www.youtube.com/@tezukaproductions

【本日の一曲】
Richie Hawtin – DEX EFX X0X Sonar Lisboa – April 11, 2025

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