25年の新設住宅74万戸、過去61年で最低
――「新築神話」は本当に終わったのか
2025年の新設住宅着工戸数が、ついに74万戸まで落ち込みました。
国土交通省が発表したこの数字は、1964年以降、過去61年間で最低水準。
住宅業界に身を置く人間としても、かなり重たい数字です。
かつては「人口が増え、家族が増え、家は新築で建てるもの」という前提が当たり前のように語られていました。しかし今、その前提そのものが静かに、しかし確実に崩れ始めています。
統計データだけでなく、日々現場でお客様と向き合っている立場から、
なぜ新築住宅が売れなくなったのか
これから住宅・不動産はどうなっていくのか
を整理して考えてみたいと思います。
想定以上に厳しい「新築住宅」の現実
2025年の新設住宅着工戸数は、前年から7%減。
持ち家と分譲住宅は、ともに約8%減少と、特に落ち込みが大きくなりました。
野村総合研究所では、当初2025年度の着工戸数を85万戸程度と予測していましたが、実際にはそれを大きく下回る結果となっています。
同社のシニアコンサルタントも「予想以上の減少」とコメントしており、業界全体としても危機感は相当なものです。
この背景には、単なる景気の波では説明できない、構造的な変化があります。
建設費高騰と「買えない現実」
最大の要因は、やはり建設費の高騰です。
・資材価格の上昇
・人件費の上昇
・物流コストの増加
これらが重なり、数年前と比べて同じ規模・同じ仕様の住宅でも、総額は大きく上がっています。
住宅を購入する中心層である30〜40代にとって、
「欲しいかどうか」以前に
「そもそも手が届くのか」
という問題が現実的にのしかかってきています。
結果として、住宅購入の選択肢は、新築から中古住宅+リフォームへとシフトしつつあります。
「家は新築が一番」という価値観、いわゆる新築神話は、すでに多くの家庭にとって現実的ではなくなっているのです。
ハウスメーカーも迫られる方針転換
こうした流れの中で、住宅メーカー各社も大きな転換を迫られています。
たとえば、旭化成ホームズは、国内新築に依存しない体制を目指し、海外事業を大きく拡大。
アメリカ・テキサス州では自社工場の稼働も予定しており、海外売上高を大幅に伸ばす計画です。
また、ミサワホームでは、リフォームや既存住宅関連のストック事業が、新築事業を上回る利益割合にまで成長しました。
これは一時的な動きではなく、「住宅は建てて終わり」ではない時代に入ったことを象徴しています。
今後は、業界再編もさらに進むでしょう。
YKK APとパナソニック系住宅部門の再編など、メーカー同士の連携・統合は今後も増えていくはずです。
省エネ義務化がもたらす「着工難民」
2025年から、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務化されました。
これは環境面では重要な一歩ですが、現場では別の問題が起きています。
それが、省エネ計算の対応不足です。
中小工務店を中心に、省エネ計算を自社で対応できないケースが多く、計算代行業者への依頼が急増。
結果として、着工までに時間がかかり、「建てたいのに着工できない」という状況が続いています。
実際、計算代行の受注棟数は前年の約2倍。
制度はできても、現場が追いついていない典型例と言えるでしょう。
金利上昇と、鈍かった年末年始の動き
昨年12月、住宅ローン金利の上昇が明確になったタイミングで、
正直なところ、お客様の動きはかなり鈍くなりました。
「もう少し様子を見よう」
「今は動くタイミングじゃないかもしれない」
そんな声を多く聞いた年末でした。
年が明けてからも、しばらくは低調な状態が続きましたが、ここにきてようやく問い合わせが増え始めています。
ただ、その動きは前向きというより、
「待っていても状況は良くならない」
「インフレも金利も、下がる要素が見えない」
という消極的な判断の結果としての動きに近い印象です。
香川県という地域で考える住宅購入
香川県は、都市部と比べると所得が上がりにくい地域です。
一方で、物価・資材・エネルギーコストは全国的に上昇しています。
つまり、
「収入は大きく変わらないのに、出費だけが増える」
という構造に置かれている家庭が多い。
その中で、高額な新築住宅を購入することに慎重になるのは、極めて自然な判断だと思います。
だからこそ、今後は
・中古住宅の活用
・リフォーム・リノベーション
・無理のない資金計画
といった選択肢が、より重要になってきます。
補助金・制度の不透明さという課題
さらに悩ましいのが、住宅・不動産関連の補助金制度の不透明さです。
選挙の影響もあり、来年度の制度内容が年度末ギリギリまで決まらない、場合によっては年度をまたぐ可能性すらあります。
「制度が分からないから動けない」
「今建てるのが得なのか損なのか分からない」
こうした不安が、購入意欲を削いでいる面も否定できません。
少しでも住宅取得やリフォームに取り組みやすい環境を整えていかなければ、
新築住宅のハードルは今後ますます高くなるでしょう。
「新築が正解」ではない時代へ
新築住宅の着工戸数減少は、単なる不況ではありません。
価値観の転換と社会構造の変化が同時に進んでいる結果です。
これからの住宅選びにおいて大切なのは、
「新築か中古か」ではなく、
「自分たちの暮らしに本当に合っているか」。
住宅・不動産の仕事に携わる立場として、
お客様一人ひとりの状況に寄り添い、
最適な選択肢を一緒に考えていく必要性を、これまで以上に感じています。
「新築神話」が崩れた今こそ、
無理のない、現実的で、納得できる住まい選びが求められているのではないでしょうか。
◻︎◻︎出典:国土交通省 建築着工統計調査報告(令和7年計分)
https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001350.html
日本経済新聞 25年の新設住宅74万戸、過去61年間で最低 「新築神話」は崩壊
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC29BD40Z20C26A1000000/
【本日の一曲】
Andrea Motis & Jurandir dã Silva – Complicidad
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