首都圏に集まる預金 その裏で地方で起きていること
「お金はどこへ向かうのか」という話
最近、こんなニュースがありました。
2025年度末時点で、銀行預金のうち実に50%超が首都圏(一都三県)に集中しているというものです。
日銀統計によると、東京・神奈川・埼玉・千葉の預金量は計523兆円超。日本全体の50.7%を占めるとのこと。
日本の人口の約3割が暮らす首都圏ですが、預金については人口比率以上にお金が集まっている状況です。
このニュースを見て、不動産の仕事をしている立場からも、なるほどと思う部分がありました。
単なる「都市が豊かで地方が弱い」という単純な話ではなく、そこには相続や人口移動、そしてインフレという、今の日本らしい背景が見えてくるからです。
世界最大の都市圏・日本の首都圏という存在
まず改めて考えると、日本の首都圏はかなり特殊な地域です。
一都三県、つまり東京・神奈川・埼玉・千葉を合わせた人口は約3700万人。
これは世界最大の都市圏と言われています。
日本人のおよそ3人に1人がこのエリアに住んでいる計算です。
仕事、大学、企業、本社機能、行政、医療、情報…。
ありとあらゆるものが集中し、人も自然と集まる。
地方から進学や就職で東京圏へ移り、そのまま家庭を持ち、生活基盤を築く。
これは高度成長期以降、長く続いてきた日本の人口移動の大きな流れでした。
そして、その「人の移動」が、今度は「お金の移動」として表面化してきているのかもしれません。
地方の親から都市部の子へ。相続が生む資金移動
今回の統計で特に興味深いのが、「相続」が預金流入の一因として挙げられている点です。
これは実感としても、かなり多いのではないでしょうか。
地方に住んでいた親世代。
その子どもは進学や就職で東京や首都圏へ。
そして親が亡くなった際、預金や金融資産が都市部に住む子どもへ相続される。
こうした流れです。
例えば香川に実家があり、親世代は地元で暮らしていたとします。
一方で子どもは東京で就職し、マンションを購入し、家族を持って生活している。
親が亡くなり、相続手続きが進むと、預金は香川の金融機関から東京側へ移っていく。
これは決して珍しい話ではありません。
不動産でも似たような光景があります。
相続した実家をどうするか。
住む予定はない。
管理も難しい。
結果として売却となる。
そしてその売却代金や相続財産が、相続人の住む都市部へ移っていく。
つまり、人が都市へ移動した時点では終わっていなかった人口流出が、数十年後、相続という形で資産流出として再び現れているとも言えそうです。
インフレが変えた「タンス預金」の行き先
もう一つ見逃せない背景があります。
それがインフレです。
日本では長く「デフレ」が続きました。
物価があまり上がらない時代。
現金を持っていても価値は大きく変わらない。
むしろ安心感の方が大きかった。
そのため、高齢世帯を中心に、いわゆる「タンス預金」も相当額存在すると言われてきました。
ところがここ数年、日本は30年ぶりとも言えるインフレ局面に入りました。
スーパーへ行けば食品が高い。
ガソリンも光熱費も上がる。
「現金を置いておくだけでは目減りする」
そんな感覚が、広く共有され始めています。
投資へ向かう人もいますが、高齢世代すべてがそうではありません。
年齢的にリスク資産を積極的に持つよりも、まずは銀行へ預けよう。
自宅保管より安全だし、金利も少し戻ってきた。
そう考える方も多かったはずです。
結果として、家の中にあった現金が銀行預金へ移った。
そして人口が多い都市部では、その動きもより大きく現れた可能性があります。
地方銀行はどうなるのか
こうした預金集中は、単なる統計の話では終わりません。
銀行にとって預金は「貸し出しの原資」です。
つまり、地域経済を支えるための土台でもあります。
もし地方から預金が流出し続ければ、地方銀行の経営基盤は弱くなる。
融資余力が縮小し、地域企業への資金供給にも影響が出るかもしれません。
日銀統計でも、地方によって増加率に大きな差が出ています。
宮城、広島、福岡など都市機能を持つ地域は比較的伸びていますが、高知や秋田などは低水準。
地方の中でも「勝ち組」「苦戦組」が分かれ始めているようにも見えます。
さらにネット銀行の利用増加もあります。
今や銀行を選ぶ基準は「近くに支店があるか」ではなく、「アプリが使いやすいか」「金利が良いか」に変わりつつあります。
地域と金融機関の結びつきも、少しずつ変化しているのでしょう。
お金の流れは、人の暮らしの流れ
不動産の仕事をしていると感じることがあります。
お金だけが単独で動くことは、ほとんどありません。
人が動く。
暮らしが変わる。
家族構成が変わる。
相続が起きる。
その結果として、お金も動く。
今回の預金集中のニュースも、単なる金融統計ではなく、日本人の暮らし方そのものを映しているように感じます。
地方で育ち、都市で暮らす。
親世代と子世代の居住地が離れる。
そして相続によって資産が移動する。
これは数字の話であると同時に、家族と人生の話でもあるのです。
だからこそ、不動産や相続に関わる仕事をしていると、このニュースは決して他人事ではありません。
お金の流れを見れば、人の暮らしが見えてくる。
そして、その先にはこれからの地方のあり方も見えてくるのかもしれません。
◻︎◻︎時事ドットコム 銀行預金、首都圏に5割超集中 相続で地方から流出―日銀統計
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026051900658&g=eco
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