2026 06 11

「急に具合が悪くなる」という言葉

カンヌのニュースで知った一本の映画

先日、カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したというニュースを見ました。

作品名は『急に具合が悪くなる』。

最初にタイトルを見た時の正直な感想は、

「なんだか変わったタイトルの映画だな」

というものでした。

その後、濱口竜介監督の作品だと知ります。

『ドライブ・マイ・カー』で世界的な評価を受けた監督の新作。

それだけでも興味を引かれましたが、さらに調べていくと、この映画には同名の原作本があることを知りました。

そして作品の背景やストーリーを読んでいるうちに、ある記憶がよみがえってきたのです。

それは一昨年、親しい知人から聞いたある言葉でした。

「急に具合が悪くなるみたいなんですよ」

映画のタイトルそのままの言葉です。

その瞬間、この作品は私にとって単なる映画ではなくなりました。


本当に「急に」やってくる

人は具合が悪くなる時、何か大きな前触れがあるように思いがちです。

しかし実際にはそうではありません。

私の知人もそうでした。

それまで何も変わりませんでした。

普通に会い、
普通に話し、
普通に仕事をし、
普通に笑っていました。

ところが、ある日突然体調を崩します。

「急に具合が悪くなる」

その言葉の重みは、経験した人にしか分からないのかもしれません。


SNSでは見えない心の動き

体調を崩してから、直接会う機会は少しずつ減っていきました。

代わりにLINEでのやり取りが増えていきます。

不思議だったのは、SNSを見ている限りでは何も変わらないことでした。

仕事の投稿。

日常の投稿。

いつも通りの発信。

見ている側からすると、元気そうに見えます。

実際、多くの人はそう感じていたと思います。

しかし、個人的にやり取りをしていると、その裏側にある心の動きが少しずつ伝わってきます。

不安。

焦り。

希望。

諦め。

覚悟。

そしてまた希望。

人の心は一直線ではありません。

良い日もあれば悪い日もある。

前向きな日もあれば、どうしようもなく落ち込む日もある。

その揺れ動きを約10か月ほど見てきました。

だからこそ、「急に具合が悪くなる」という言葉に強く反応してしまったのだと思います。


病気は本人だけの問題ではない

病気になると、本人が大変なのはもちろんです。

しかし、その周囲にいる人たちもまた大きく影響を受けます。

何を言えばいいのか。

どこまで踏み込んでいいのか。

励ましていいのか。

そっとしておくべきなのか。

答えはありません。

相手によっても違います。

その時々によっても違います。

だから難しい。

それでも、人は誰かと関わりながら生きています。

原作となった書籍『急に具合が悪くなる』は、哲学者の宮野真生子さんと人類学者の磯野真穂さんによる往復書簡だそうです。

病気について語りながらも、単なる闘病記ではなく、生きることや人との関係について深く考える内容だと聞きます。

映画の紹介文には「魂の分け合い」という言葉が出てきました。

とても印象的な表現です。

人は誰かの痛みを完全に理解することはできません。

しかし、その痛みに寄り添おうとすることはできる。

もしかすると、それが「魂の分け合い」ということなのかもしれません。


まだ映画も原作も見ていないけれど

実は私はまだ映画も観ていませんし、原作も読んでいません。

それなのに、これだけ気になっている作品は珍しいかもしれません。

それはきっと、タイトルの中に現実の記憶が重なっているからです。

一昨年のあの知人とのやり取り。

病気になってからの心の揺れ。

表からは見えない葛藤。

それらが「急に具合が悪くなる」という一言に凝縮されているように感じます。

もし明日、自分がそうなったら。

もし大切な人がそうなったら。

私たちは何を話し、何を伝えるのでしょうか。

映画の公開はまだ先ですが、今から少し楽しみにしています。

作品そのものを観たいという気持ちもありますが、それ以上に、このタイトルが投げかけてくる問いに向き合ってみたいと思っています。

「急に具合が悪くなる」

誰にでも起こり得るその現実を、改めて考えさせられる作品になりそうです。


◻︎◻︎「急に具合が悪くなる」公式サイト
  https://www.bitters.co.jp/soudain/


【本日の一曲】
iri – Valerie

◻︎◻︎せとうち不動産 https://setouchi-fudosan.com/◻︎◻︎