いい不動産って、どんな不動産?

不動産に関する仕事をしていると、よくこんな質問を受けます。
「結局、いい不動産ってどういうものなんですか?」
この問いに対して、私がいつもまずお伝えするのは——
「不動産は、場所がすべてです」
ということです。
これ、決して大げさな表現ではありません。むしろ、不動産に関しては最も本質的なポイントかもしれません。
不動産は動かせないもの
「不動産」という言葉は、「動かせない財産」と書きます。
つまり、一度買ってしまえば、その土地や建物は、そこから一歩たりとも動かすことはできないのです。
たとえば、家電製品であれば、買った後に後悔しても、フリマサイトに出品したり、人に譲ったりすることができます。
洋服や車も、使い心地が悪かったら、別のものに買い替えられるかもしれません。
でも、不動産はそうはいきません。
買ったあとで「やっぱりもう少し駅の近くが良かったな」とか、「隣の家のほうが日当たりが良さそう」なんて思っても、引っ越しはできても、土地や建物を移動させることはできないんです。
だからこそ、買う前に「本当にこの場所でいいのか?」を慎重に考える必要があります。
一見似ていても、価値は大きく違うことがある
土地や建物というのは、ほんの少しの場所の違いで価値がガラリと変わることがあります。
たとえば、道路を一本はさんで向かい側の土地。
広さも形もほぼ同じ。建物の築年数も同じくらい。だけど、片方は「人気の学区」内、もう片方は「学区外」だったりします。
当然、向かい側の土地になるので方角は逆になります(こちらが南側道路なら、向こう側は北側道路)。それだけで日当たり・風向きは全然異なってきます。
また、少し坂を上っただけで日当たりが全然違ったり、幹線道路に面しているかどうかで騒音や安全性に大きな違いが出たりします。
にもかかわらず、「隣より高いから高すぎる」「向かいの家より安いからお得」といった表面的な比較だけで判断するのは、とても危険です。
高いには高いなりの、安いには安いなりの理由がある
よく、「この物件、高いなぁ」と言われることがあります。
でも、たいていの場合、「高い」にはちゃんとした理由があります。
たとえば、
- 小学校まで徒歩5分
- 駅まで平坦な道で徒歩10分以内
- スーパーや病院も近い
- 津波や土砂災害のリスクが低い
- 新しい道路が整備される計画がある
などなど、「安心して長く暮らせる」「将来も人が住みたいと思える」要素がそろっていると、自然と価格は上がります。
逆に、価格が安い物件も、「なぜ安いのか?」をよく確認すべきです。
たとえば、
- 最寄り駅までバス便で不便
- 周辺に空き家が目立つ
- 過去に水害があった
- 再建築できない
- 隣地との境界が不明確
など、今は気にならなくても、将来大きな問題になる可能性があるポイントが隠れていることも。
つまり、「高いからダメ」「安いからお得」ではなく、「なぜ高いのか? なぜ安いのか?」という視点が大切なのです。
「相場」ではなく「将来価値」を考える
不動産を買うとき、多くの人が周辺の物件と比較して、「相場より高いか安いか」を気にされます。もちろん、それも大事な情報です。
でも、それ以上に大切なのが——
「この不動産の将来価値はどうなっていくのか?」
という視点です。
たとえば、今は周囲にあまり家が建っていなくても、近くに大型商業施設の建設が予定されていたり、道路が整備されて利便性が大きく上がる可能性があるエリアは、今の価格より将来高くなる可能性があります。
逆に、今は静かでいい場所に見えても、高齢化が進んで若い人が住まなくなっていく地域では、将来的に価格が下がる可能性もあります。
「安く買えた=得」ではない。売るときにこそ差が出る
不動産の購入は、「買ったときにお金が不動産に変わる」だけ。
その時点では、実は損も得もしていないんです。
本当に「得をした」のか「損をした」のかがわかるのは、売るとき。
買った時より高く売れれば、その不動産は「いい不動産」だったことになりますし、いくら安く買っても売るときに値段がつかなければ、結果的には「損した買い物」だったと言わざるを得ません。
「いい不動産」を選ぶために必要なのは想像力
未来の価格は、誰にもわかりません。
でも、「わからないから考えない」ではなく、想像する力がとても大事です。
- この街はこれからどう変わっていくのか?
- 住む人は増えるのか、減るのか?
- 地域の魅力はこれからどうなるか?
- 自分がもし10年後に売るなら、買いたい人はいるか?
そんな視点で考えると、「いい不動産」がどういうものか、自然と見えてくるはずです。
最後に
「いい不動産」というのは、人によって価値観も違います。
駅近がいい人もいれば、静かな郊外を好む人もいる。広い庭を大切にする人もいれば、メンテナンスのしやすさを優先する人もいます。
でも、どんな人にとっても共通して言えるのは、
「将来価値が下がりにくい不動産」こそ、いい不動産
だということ。
目先の価格や外見だけで判断するのではなく、その不動産の「未来」に目を向けること。それが、後悔しない不動産選びの第一歩です。
あなたにとっての「いい不動産」に、出会えますように。
そして、せとうち不動産はそのお手伝いができたら幸いです。
【本日の一曲】
Lenny Kravitz / Sugar