2025 08 14

夏休み特集③ 花火の不思議

打ち上げ花火には、科学の知恵が詰まっている!【花火のひみつ】

夏の夜空を鮮やかに彩る打ち上げ花火。家族や友達と見上げるその大輪の光は、夏の風物詩として欠かせない存在です。しかし、あの美しい光や複雑な形の裏には、緻密な科学と職人の高度な技術が隠されています。
今回は「花火のひみつ」を科学的な視点と歴史的背景の両面から探り、日本の花火文化の奥深さをひも解いていきます。


どうして花火はいろんな色を出せるの?

花火大会では、赤やオレンジだけでなく、青や緑、紫など多彩な花火が夜空を彩ります。この色の秘密は、化学の世界で「炎色反応」と呼ばれる現象です。
火薬だけが燃えるとオレンジ色になりますが、そこに金属を加えることで別の色を作り出せます。例えば――

  • リチウム:赤
  • ナトリウム:黄色
  • :青緑
  • バリウム:黄緑
  • ストロンチウム:深い赤

さらに複数の金属を組み合わせることで、ピンクや水色などの複雑な色も表現できます。花火師は、色の組み合わせや比率を企業秘密レベルで工夫し、オリジナルの花火を生み出しています。


打ち上げ花火の仕組み

花火大会のクライマックスを飾る打ち上げ花火は、どのようにして空高く飛び、爆発するのでしょうか?
花火は、火薬を詰めた「花火玉」を専用の筒から発射し、上空で爆発させます。このとき、花火玉に火がつき、空中で破裂すると、中に詰まった火薬と金属が燃え、光と音を生み出します。

現代の花火大会では、この演出が高度にシステム化されています。どのタイミングでどの花火を打ち上げるか、音楽とどのように同期させるかといった演出は、コンピューターで精密に管理され、職人技と最新技術の融合で壮大なショーが実現しているのです。


花火玉の秘密と「星」

花火玉の中には「星」と呼ばれる粒がびっしり詰まっています。この星こそが花火の色と形を決める要素です。
星は、火薬に金属を混ぜて固めた小さな球で、花火が爆発した際に光を放ちます。星の配置や大きさを工夫することで、円形やハート形、スマイルなどのユニークな花火が作られます。
さらに、星の中に異なる金属を層状に仕込むことで、時間差で色が変化する花火も可能になります。これらの設計には、職人の経験と独創性が欠かせません。


きれいな形を描くための工夫

花火が夜空にきれいな円を描くのは偶然ではありません。花火玉は、打ち上げ後に速度がゼロになる瞬間に爆発させることで理想的な形を実現します。
しかし、そのタイミングを正確に合わせるのは至難の業。導火線の長さや火薬の量をミリ単位で調整し、何度も試射を重ねて完成します。
さらに、花火師は「目の残像効果」を計算に入れ、光が消えた後も大きく、美しく見えるよう工夫しているのです。


なぜ花火は「ドーン」と音を出すの?

花火の迫力を増す「ドーン」という音は、爆発のエネルギーによる空気の急膨張で生じる衝撃波が原因です。
この音があることで、花火は視覚だけでなく聴覚でも楽しめる「五感のエンターテインメント」になります。


花火と科学教育

花火は単なる娯楽にとどまらず、科学教育の宝庫です。炎色反応、空気の膨張、視覚効果など、化学や物理の要素がぎっしり詰まっています。
夏休みには、お子さんと一緒に花火を見ながら――
「なぜ青い花火ができるの?」
「どうして音が鳴るの?」
と問いかけてみましょう。こうした疑問は、自然と科学への興味を広げます。さらに、家庭でできる自由研究として、手持ち花火を使った「炎色反応の観察」もおすすめです。


江戸時代から続く日本の花火文化

日本の打ち上げ花火の歴史は江戸時代にさかのぼります。隅田川で行われた「両国川開き」が花火大会の始まりとされ、庶民の娯楽であると同時に、疫病退散や鎮魂の意味を持っていました。
その後、花火は進化を重ね、現在では「八重芯」や「千輪咲き」など世界でもトップレベルの芸術性を誇る花火が生まれました。


世界から見た日本の花火

国連加盟国は192カ国ありますが、花火文化を持つ国は約30カ国。さらに、一般市民が花火を楽しめる国はわずか約15カ国です。
この事実は、日本の花火文化がどれほど特別であるかを物語っています。
火薬を市民に触れさせるということは「平和の象徴」でもあります。戦争の道具になり得る火薬を、娯楽に開放できる社会は、それだけ平和だという証拠なのです。


最近の花火トレンド

現代の花火大会は、伝統を守りながら新しい演出も取り入れています。

  • ミュージック花火:音楽と完璧に同期した演出
  • キャラクター花火:アニメや映画とのコラボ
  • エコ花火:煙や音を減らし、環境に配慮

さらに、オンライン配信や有料席の充実など、楽しみ方も多様化しています。


日本の花火は文化であり、科学であり、平和の象徴

日本の打ち上げ花火は、江戸時代から続く伝統を守りつつ、科学と技術で進化を遂げてきました。夜空に広がる一瞬の美しさの裏には、花火師の情熱と高度な知識、そして平和な社会があります。
この夏、花火を眺めるときは、その背景にある文化と科学、そして平和の価値を感じてみてください。

【本日の一曲】
Manu Chao / Radio Bemba Sound System (Live)