2025 11 05

みんな大好き「高知・日曜市」──300年の伝統を未来へつなぐ挑戦

日曜日の朝、高知市の追手筋。お城の麓からずらりと並ぶ緑色のテント。
新鮮な野菜、田舎寿司、干物、果物、手づくりの工芸品…。
そこかしこから土佐弁が飛び交い、笑顔と人情が溢れる——
それが、高知が誇る「日曜市」です。

この日曜市、実は300年以上もの歴史を持つ伝統の「街路市」。
観光客にも人気のスポットですが、近年は出店者の高齢化や後継者不足により、少しずつ空きスペースが目立つようになってきました。

そんな中、高知市では街路市の未来を守るための新たな挑戦を始めています。
その名も、「高知といえば日曜市!みんなで未来につなごう!プロジェクト」
街路市の出店を応援するため、クラウドファンディングがスタートしました。


江戸時代から続く「生活市」

高知市の街路市の歴史は、なんと**元禄3年(1690年)**にさかのぼります。
当時の藩法「元禄大定目」によって、町ごとに市日が定められたのが始まり。
明治時代の太陽暦導入をきっかけに「定日市」から「曜市」へと変わり、現在のような「日曜市」が誕生しました。

昭和元年に現在の形が整い、戦後の昭和23年には追手筋で復活。
以来、街の暮らしとともに歩み続け、いまでは年間を通じて毎週日曜日に開催される、全国でも類を見ない「午後まで続く定期市」として知られています。

現在では約900mにわたり約370店が軒を連ね、多い日には2万人を超える人出で賑わいます。
まさに「土佐の台所」であり、地元の人々にとっては生活の一部。
観光で訪れる人にとっては、“高知らしさ”を体感できる特別な場所です。


テントがつくる「高知の風景」

日曜市の景観を形づくるのは、通りをずらりと彩る深緑色の専用テント
片流れ屋根に軒がついたこのテントは、雨の日でも買い物客が濡れずに歩けるよう工夫されています。
さらに、隣同士を連結できる設計で、どこまでも続く緑の屋根が街のシンボルにもなっています。

このテントの下では、季節ごとの旬の野菜や果物が並び、土佐弁が飛び交います。
「こじゃんと安いで!」「袋に入れちょくき!」——そんな声を聞くと、自然と笑顔になってしまう。
まさに、高知の人情が息づく“ふれあいの場”なのです。


出店者の減少という課題

しかし今、この日曜市が岐路に立っています。
出店登録者数は、最盛期の昭和45年には1117人を数えましたが、令和に入った今では約800人減少
高齢化や後継者不足が進み、通りのあちこちで空きスペースが目立ち始めています。

一方で、「自分も出店してみたい」という若い世代からの問い合わせも少しずつ増えています。
ところが、その新しい一歩を踏み出す際に大きな壁となっているのが——街路市専用テントの準備です。

このテントは街路市らしい景観を保つために欠かせないものですが、近年の資材高騰により価格が上昇。
「買いたいけど費用が厳しい」という理由で、出店を断念する人も多いのです。


クラファンで実現「お試し出店」事業

そんな現状を打開するために立ち上がったのが今回のクラウドファンディング。
高知市では、新規出店者を支援するために**「お試し出店」事業**を開始しました。

この取り組みでは、寄付金を活用して街路市専用テントを5張り購入し、一定期間貸し出すことで、初めて出店する人のハードルを下げようというもの。
テントを持っていなくても出店体験ができるようになれば、新たな出店希望者が増え、空きスペースの解消にもつながります。

さらに、統一感のある深緑のテントが並ぶ「日曜市らしい景観」も守ることができます。
つまりこのプロジェクトは、出店者支援と文化継承を両立させる試みなのです。


みんなで育てる「土佐の市文化」

街路市の魅力は、品物だけではありません。
生産者と買い手が直接顔を合わせ、世間話を交わしながら商品を選ぶ。
そのコミュニケーションこそが、他の市場にはない温かさです。

「まけるき」「ありがとうねぇ」「また来てよ」——そんな言葉のやりとりが、市全体の空気を柔らかく包みます。
そしてその光景こそが、高知の“暮らしの文化”を物語っているのです。

最近では、高校生や大学生がフィールドワークとして日曜市を訪れたり、商業高校のジビエ部が出店に挑戦したりと、新しい世代の関わりも広がっています。
街路市は今、学びと出会いの場としても再び注目されています。


多くの人の思いが支える日曜市

今回のクラウドファンディングには、さまざまな立場の人たちが賛同しています。

街路市活性化推進委員会の廣末幸彦さんは、

「専用テントがずらりと並ぶ光景は、高知市の象徴。お試し出店で新しい出店者が増え、あの賑わいが戻ることを期待しています」
と語ります。

長年出店を続ける組合長の山﨑泰一さんも、

「お城下に広がる緑のテントの景観は、高知の宝。若い世代が出店しやすくなれば、街路市の未来は明るい」
とエールを送ります。

また、漫画家の井上淳哉さんや、日曜市マップを制作した上総毬椰さんなど、県内外のクリエイターからも応援の声が寄せられています。


寄付の方法と記念品

このプロジェクトは、ふるさと納税の仕組みを活用して実施されています。
寄付金はテント購入費用に充てられ、目標金額は100万円
(11月初旬現在で達成率15%・支援者10名)

寄付額に応じて、以下のような記念品が用意されています。

  • 5千円以上:高知市長からのお礼状(メール配信)
  • 1万円以上:日曜市特製ポストカード5種
  • 3万円以上:街路市PR動画のエンドロールにお名前掲載
  • 5万円以上:「探検!発見!日曜市ウォーク」参加権

どれも“お礼の品”というより、街路市を応援する気持ちを共有できる記念の品です。


市長からのメッセージ

岡崎誠也高知市長もこのプロジェクトに強い思いを寄せています。

「街路市は市民の生活の場であると同時に、高知の魅力を伝える観光資源です。
高齢化や出店者減少に対応しながら、時代に合った形で街路市を次世代につなげていくことが大切です。
ぜひ温かいご支援をお願いいたします。」


未来へ、緑のテントを

日曜市の朝。
テントの下には、野菜を並べるおばあちゃん、観光客と話す若者、そして笑い声。
その一つひとつが、300年の時を経て今も続く“土佐の暮らし”そのものです。

出店者と訪れる人、地元と観光客、そして支援する人——。
そのすべての力が合わさって、街路市の景色は守られていきます。

高知のまちの原風景を、これからも残していくために。
あなたの寄付が、新しい出店者の一歩を支え、緑のテントの列を未来へとつなげます。


▽クラウドファンディング概要

プロジェクト名: 高知といえば日曜市!みんなで未来につなごう!プロジェクト
目標金額: 1,000,000円
寄付受付期間: 2025年9月25日〜12月1日
実施主体: 高知市商業振興課


土佐の太陽の下、緑のテントの列を未来へ。
高知の日曜市を、みんなで守り育てていきましょう。

出典:ふるさとチョイス 「高知といえば日曜市!みんなで未来につなごう!プロジェクト
   https://www.furusato-tax.jp/gcf/4478?srsltid=AfmBOorxb1_kOm3WqBqSrpfe-FFdcyIQrKU6pqJerAbofbf-S4LvMu5T

   高知市 「街路市の新規出店者を募集しています」
   https://www.city.kochi.kochi.jp/site/gairoichi/recruit.html

【本日の一曲】
Led Zeppelin – Black Dog