2025 12 07

火災が多い季節に改めて考える「住宅火災の現実」と私たちができる備え

12月に入り、空気が乾燥し、冷たい風が吹きはじめると、毎年のように火災のニュースを目にする機会が増えてきます。
この季節は、不動産管理に携わる私たちにとっても、お住まいの安全を改めて見直す大切なタイミングです。

今回は、総務省消防庁が発表した「2024年の火災状況」をもとに、住宅火災の実態やその傾向、そしてこれから私たちができる「火災予防の考え方」について整理してみたいと思います。


■ 1. 2024年の火災件数 ― 住宅火災は1.1万件超

消防庁が2024年の火災状況として公表したデータによると、年間の総出火件数は 3万7,141件
前年より1,531件減っているものの、決して安心できる数字ではありません。

特に注目すべきは、建物火災の内訳です。

  • 建物火災:20,972件(全体の56.5%)
  • 住宅火災:11,839件(建物火災の56.5%)

つまり、建物火災のうち 半分以上が住宅
私たちが日々過ごす「家」がもっとも火災リスクが高い場所と言っても過言ではありません。

住宅火災の区分を細かく見ると、

  • 一般住宅:7,817件
  • 共同住宅:3,766件
  • 併用住宅:256件

戸建て・マンションに関わらず、広く住宅全体で火災が発生している現状があります。


■ 2. 出火原因トップは「コンロ」― 日常生活の“ちょっとした油断”

住宅火災の出火原因として最も多かったのは 「コンロ」1,745件(14.7%)

続いて

  • たばこ:1,242件(10.5%)
  • 電気機器:965件(8.2%)
  • ストーブ:812件(6.9%)
  • 配線器具:788件(6.7%)

特別な理由ではなく、どれも日常生活の中に普通に存在するものばかりです。

「台所でちょっと目を離した」
「灰皿に吸い殻をまとめて捨てた」
「電源タップをそのまま使い続けていた」

この“少しの油断”が、大きな事故につながる可能性があることを強く示しています。

出火箇所として最も多いのは 「居室」5517件
寝室・リビングなど、家の中でもっとも長く過ごす空間で火災が起こりやすいというのは、想像以上に深刻です。


■ 3. 住宅火災の死者 1,030人 ― 高齢者が75%以上を占める現実

2024年の火災による死者総数は 1,451人
そのうち住宅火災で亡くなった方は 1,030人 にのぼります。

特に重要なポイントは以下です。

  • 65歳以上の高齢者:779人(75.6%)
  • 原因別死者数
     ・たばこ:147人
     ・ストーブ:111人
     ・配線(電灯・電話など):62人

高齢者が圧倒的に多い原因としては、
「逃げ遅れ」「判断の遅れ」「身体の自由がきかない」
などが挙げられます。

日本はこれからも高齢化が進むため、住宅の火災対策は年々重要度を増していくでしょう。

特に、これから不動産オーナーとして高齢の入居者が増えることを考えると、
火災対策は「資産を守る」ためにも必要不可欠な管理項目となっていきます。


■ 4. 火災が増えるのは「12月〜5月」― 特に1月・3月・4月が危険

建物火災は季節によって大きく変動します。
火災が増えるのは、まさに今の時期である 12月〜5月 の冬〜春。

特に火災件数が多いのは、

  • 1月
  • 3月
  • 4月

この3つの月に集中しています。

火災が多発する主な理由は以下の通り。

● ① 空気が乾燥し風が強い

火が燃え広がりやすい典型的なコンディション。

● ② 暖房器具の使用増

ストーブ・ファンヒーター・電気毛布など、火災原因が増える季節。

● ③ 年末の忙しさによる注意力低下

「つい」「うっかり」が事故を生みます。

冬の住宅管理は、火災予防が最優先と言えるほど重要度が高くなります。


■ 5. 不動産の現場で見える“住宅火災のリアル”

せとうち不動産では、日頃から物件の管理やオーナー様の資産サポートを行っていますが、現場にいると火災のトラブルがいかに多く、また被害が大きいかを強く実感します。

● コンロの火の消し忘れ
● 電気ストーブの前に物を置いてしまう
● 古い電源タップを使い続けて発火
● ベランダにある物が風で倒れ電気コードを傷つける

こういったことは珍しいことではありません。

火災は「発生から数分」で一気に広がり、建物・家財・賃貸経営に甚大なダメージを与えます。
オーナー様にとっても入居者にとっても、火災はもっとも避けなければならない事故です。


■ 6. 今日から実践すべき「火災予防のポイント」

ここで、入居者・オーナー様双方に知っておいていただきたいポイントをまとめます。


■(1)コンロまわりを見直す

  • 揚げ物中は絶対にその場を離れない
  • IHでも油に火はつきます
  • 消火器 or 簡易消火スプレーの設置

■(2)電気機器・配線を定期的に確認

  • トラッキング現象(埃)に注意
  • たこ足配線の見直し
  • 古い電源タップは交換する

■(3)ストーブの前後1mは「無置物エリア」

  • 洗濯物を乾かすのは非常に危険
  • 石油ストーブは給油時のこぼれに注意

■(4)寝たばこは絶対にしない

毎年多数の死者が出ている“最悪の火災原因”。


■(5)高齢者の住まいは特に手厚い対策を

  • 自動消火装置
  • 見守りセンサー
  • 火災報知器の増設

高齢化が進む日本では特に重要な対策です。


■ 7. 火災報知器の「設置」だけでなく「交換」が必要

火災報知器は 10年で交換 が推奨されています。
実は誤作動も増え、センサー精度が低下するためです。

築年数が経った賃貸物件では、交換されていないケースが非常に多く見られます。

オーナー様の資産を守るためにも、ぜひこの機会に見直しをおすすめします。


■ 8. 火災は「防げる事故」だからこそ、日常の備えがすべて

今回のデータを見て感じるのは、住宅火災の多くは特別な理由ではなく、

“日常の少しの注意で防げる事故”

だということです。

しかし、その油断こそが最も大きなリスク。
乾燥する冬の時期は、ほんの数分・数秒の不注意が取り返しのつかない結果につながります。

せとうち不動産では、

  • 入居者様向けの安全案内
  • オーナー様への防災アドバイス
  • 建物設備点検のサポート

などを行いながら、地域の安全な住環境づくりに努めています。


■ まとめ

● 住宅火災は年間1.1万件超

● 出火原因は「コンロ」「たばこ」「電気」がトップ

● 死者の75%以上が高齢者

● 火災は冬〜春(12〜5月)に集中

● 火災は“日常の注意”で大部分が防げる

火災の多い時期だからこそ、住まいの安全をもう一度見直すタイミングです。
オーナー様・入居者様・地域の皆様が安心して暮らせる住環境づくりのため、これからも情報発信を続けていきます。

【本日の一曲】
chelmico – Easy Breezy