年末年始にご家族で話してみませんか? 「空き家」のこと — これからの暮らしと未来につながる話題
年末年始――帰省して家族が集まるこの時期は、普段なかなか話せない「将来のこと」をゆっくり話す良い機会でもあります。
旅行やおせち料理、子どもの成長の話など、和やかな会話が中心になると思いますが、その中に「実家や親の家のこれから」というテーマをそっと入れてみませんか。
なぜなら、それは誰にとっても他人事ではない話題だからです。
今「自分には関係ない」と思っていても、将来的には状況が変わる可能性が十分あります。
そもそも空き家ってどれくらいあるの?
香川県内の空き家は年々増加していて、2023年の統計では、空き家総数は約9万1千戸。
これは県内の住宅全体の**約18.5%**に当たる数字で、全国平均(約13.8%)よりも高く、全国でも上位に位置しています。
さらに、統計では空き家を用途別に分類していますが、「賃貸用」や「二次的住宅」などではなく、将来方向性が定まらないまま放置されがちな空き家が多いことも明らかになっています。
この「その他の住宅」に分類される空き家は、県内では空き家の半数以上を占めており、放置されるリスクが高いものとして課題視されています。
つまり単に「空き家が多い」というだけでなく、用途が決まらないまま放置される空き家が特に多いことが香川県の特徴でもあるのです。これは全国でも高い水準にあります。
空き家がそのままだと起きる問題
空き家を所有すること自体は、必ずしも悪いことではありません。
ただ、そのまま放置してしまうと、さまざまな問題が起きる可能性があります。
● 安全性の低下
老朽化した建物は倒壊のリスクがあります。風雨で屋根や外壁が崩れると、通行人や近隣の住人に危険を及ぼす可能性もあります。
● 防犯・防災のリスク
放置された空き家は、不法侵入や不法投棄、火災の危険性が高くなります。時には犯罪者の拠点になってしまうことも。
● 近隣への影響
雑草が伸び、景観が損なわれるだけでなく、 空き家周辺の不動産価値にも悪影響を与える可能性があります。
● 法的責任
空き家が原因で事故が起きた場合、所有者は法律上の責任を問われることもあるのです。
このように、空き家の「所有と放置」は、単に不動産を持っているだけの話ではなく、暮らしと安全、そして家族の将来にかかわる大切なテーマなのです。
空き家というのは将来あなたにも関係する話
「でも空き家なんてウチには関係ないよ」と思う人もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ガイドブックではこうした注意喚起がされています。
現在空き家を所有していなくても、将来空き家の所有者(管理者)になる可能性は十分にある。
親と同居している人はもちろん、離れて暮らしている人や、いま賃貸住宅に住んでいる人にも関係があります。
例えば次のようなケースでも、空き家を管理する立場になる可能性があります。
- 両親の家を相続することになった
- 長年住んだ実家を手放すかどうか迷っている
- 転勤で住まなくなった家がある
- 高齢の親が施設に入居し、家を空けることになった
- 子どもが独立し、自宅だけが残った
どれも他人事ではありません。
年末年始に親や兄弟姉妹と集まるときこそ、こうした話題を共有し、家族で方向性を考えるきっかけにするのがとても有意義です。
空き家と「相続」の話
空き家の話で必ず出てくるのが相続の問題です。
不動産は現金や株式のように簡単に分けることができず、うまく議論がまとまらないとトラブルの原因になることがあります。
また、相続税の申告は原則として相続が発生した日から10ヶ月以内です。
このタイミングで遺産分割が決まっていないと、税制上の「特例」などを受けられない可能性も出てきます。こうした税制上の特例は、うまく利用すれば税負担を抑えることができるため、事前に家族で話し合っておくことが望ましいのです。
たとえば「特定居住用土地等の小規模宅地の特例」は、相続税の計算で対象となる宅地の評価額を減額できる制度であり、相続時の大きな負担軽減につながるものです。しかもこれは事前の取り決めや協議があって初めて有効になります。
つまり、親が元気なうちに話し合っておくことは、単に遺産分割をスムーズにするだけではなく、将来の税負担や暮らしの基盤にも直結するのです。
「管理」と「利活用」について考える
◎ 空き家をきちんと管理する
雨漏りや雑草、小動物の侵入といった“劣化・危険の芽”を防ぎ、近隣や家族への負担を減らすことが大切です。
「適切な管理空き家」は、行政サービスの支援対象になりやすいものです。
◎ 家財や不要物を整理・処分する
空き家になると、生活用品や家財がそのまま残っていることが多く、その整理は想像以上に大変です。
年末年始の機会に、家族で整理の必要性を話すのも良いかもしれません。
◎ 賃貸や売却など利活用を考える
空き家を賃貸物件にする、売却して現金化する、あるいはリノベーションして別の形で活用するなど、選択肢はさまざまです。
自治体による補助制度もありますので、専門家に相談しながら検討する価値は十分あります。
香川県の空き家支援制度も活用しよう
香川県では、空き家の管理や利活用に関するさまざまな支援制度や相談窓口が整備されています。
例えば、老朽危険空き家の除却支援や改修補助、家財処分補助など、空き家問題を進める際の負担を軽減する制度もあります。
また、各自治体では、空き家の状態が地域環境に悪影響を与える可能性があると判断された場合、行政が助言や指導、場合によっては命令を出すといった制度も動いています。これは所有者の責任と地域の暮らしの安全を守るためのしくみです。
まとめ――空き家の話は「未来の暮らし」を考えること
年末年始に家族がそろうと、ついつい日常の話や思い出話に花が咲きます。
それはもちろんとても大切な時間です。
でも、「将来、実家のこと」を話すきっかけをつくるのも同じくらい大切なことです。
空き家は放置すればリスクになりますが、きちんと向き合えば家族の財産であり、地域にとっても資産になり得ます。
だからこそ、この年末年始――
暖かい部屋で、こたつを囲みながら、実家の空き家について、家族みんなで“未来の暮らし”の話をしてみませんか。
話せば、気持ちも整理できます。
話せば、道も見えてきます。
そして何より、家族の絆がもう一度深まる時間になるはずです。
◻︎◻︎出典:香川県 空き家ガイドブック
https://akiya.pref.kagawa.lg.jp/upload/files/R6%E7%A9%BA%E3%81%8D%E5%AE%B6%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF.pdf
【本日の一曲】
Kan Sano – Mental Sketch Live #1 Rooftop In Tokyo