2025 12 17

本当はダメだけど、意外と知られていないこと −年末お掃除編−

年末が近づくと、気になってくるのが「おうちの大掃除」。
一年の汚れを落として、すっきり新年を迎えたい、という方も多いのではないでしょうか。

テレビやネット、SNSを見ていると、
「これを敷くだけで汚れ防止!」
「つけるだけで掃除が楽!」
といった便利グッズが数多く紹介されています。

ですが実はその中には、本当は推奨されていない使い方や、
場合によっては危険につながることも含まれています。

今回は、不動産・建築に携わる立場から、
「良かれと思ってやっているけれど、実は注意が必要な掃除・設備の話」
をいくつかご紹介します。


IH調理器に「汚れ防止シート」は危険?

最近よく見かけるのが、IHクッキングヒーターの上に敷く
汚れ防止シート

油はねを防ぎ、掃除も楽になるということで、
ホームセンターやネットでも人気の商品です。

ところが、この使い方について、
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)
注意喚起を行っています。

なぜ危険なのか?

IH調理器には、鍋底の温度を検知するための
温度センサーが組み込まれています。

ところが、
温度センサーと鍋の間に汚れ防止シートが挟まることで、
温度を正しく検知できなくなる場合があります。

実際に、

  • 汚れ防止シートを敷いた状態で揚げ物を調理
  • 温度センサーが過熱を検知できず
  • 油が異常加熱し、炎が上がった
  • 周囲を焼損し、やけどを負った

という事例も報告されています。

掃除が楽=安全、ではない

「メーカーが売っているから大丈夫」
「みんな使っているから問題ない」

そう思いがちですが、
IH調理器の多くは、シート使用を前提に設計されていません。

どうしても使いたい場合は、

  • IH本体の取扱説明書を確認
  • シート側の注意事項を確認
  • 揚げ物調理時は特に注意
  • 調理中は絶対にその場を離れない

このあたりは最低限守る必要があります。


換気扇の「使い捨てフィルター」は万能ではない

次に多いのが、換気扇に取り付ける使い捨てフィルター

「掃除が楽になる」
「油汚れを防げる」

というイメージから、
レンジフードや浴室、トイレまで
一律につけているご家庭も少なくありません。

ですが、これも設置場所によって向き・不向きがあります。


換気扇フィルターの基本的な問題点

使い捨てフィルターをつけると、

  • 空気の通り道が狭くなる
  • 換気効率が低下する
  • モーターに余計な負荷がかかる

というデメリットが生じます。

例えるなら、
マスクをしたままマラソンを走るような状態

短時間なら問題なくても、
長期間続けば機械に負担がかかるのは想像しやすいと思います。


レンジフードにはつけないほうがいい?

レンジフード用のフィルターは特に人気ですが、注意が必要です。

メリットとしては、

  • 油汚れの付着を軽減
  • 大掃除の手間が減る

といった点があります。

一方で、

  • 目詰まりによる換気能力の低下
  • 油分を含んだフィルターの発火リスク
  • モーター故障の原因

といったリスクもあります。

特に、
コンロとレンジフードの距離が近い住宅では、
油を含んだフィルターへの引火リスクはゼロではありません。

「掃除が楽だから」とつけっぱなしにせず、
燃えにくい素材を選ぶ、
こまめに交換する、
といった配慮が必要です。


トイレは「条件付きでOK」

トイレの換気扇については、
こまめに交換するのであれば有効なケースもあります。

  • 臭い対策
  • ホコリの侵入防止
  • 掃除の手間軽減

といったメリットがあります。

ただし、
フィルターが汚れたままだと換気効率が下がり、
逆に臭いがこもる原因になります。

「つけるなら必ず定期交換」
これが前提条件です。


お風呂場は注意が必要

浴室は湿気が非常に多い場所です。

使い捨てフィルターをつけると、

  • 水分を含んで目詰まり
  • 換気性能の低下
  • 湿気がこもりやすくなる

結果として、
カビが発生しやすくなることがあります。

浴室換気扇は、

  • フィルターなし
  • こまめな掃除
  • 定期的な換気運転

この方が結果的にトラブルが少ない場合も多いです。


IHコンロのガラストップ掃除、正解は?

IHクッキングヒーターの
ガラストップについた焦げや油汚れ。

「金たわしでゴシゴシ」
は、絶対にNGです。

正しい掃除方法

  • クリームクレンザーやIH専用洗剤を使用
  • ラップやアルミホイルを丸めて
  • 優しくくるくるこする

ラップやアルミは洗剤を吸い込まないため、
研磨剤をガラス表面で転がすように使えます。

一見、傷がつきそうですが、
クリームクレンザー程度の研磨力なら問題ありません。

金属たわしだけは避けましょう。


外壁掃除で「高圧洗浄機」は要注意

最後は、建物の外壁について。

最近は家庭用の高圧洗浄機も普及し、
外壁や駐車場を洗う方も増えています。

ですが、
サイディング外壁に高圧洗浄機は要注意です。

なぜダメなのか?

① 塗膜が剥がれる

サイディング外壁は、
表面の塗膜によって紫外線や汚れから守られています。

強い水圧を当てると、

  • 塗膜が剥がれる
  • 防水性が低下
  • 汚れが付きやすくなる
  • 劣化が早まる

といった悪循環に陥ります。

② シーリング材の劣化

外壁の継ぎ目に使われているシーリング材。

経年劣化で硬くなっている部分に
高圧洗浄を当てると、

  • ひび割れ
  • 剥離
  • 雨水侵入

につながる可能性があります。

実際、
メーカーが高圧洗浄を推奨していないケースも多いのが現状です。


まとめ:掃除は「やりすぎない」も大事

年末の大掃除は、
家を大切にする良い機会です。

ただし、

  • 便利そうだから
  • みんなやっているから

という理由だけで行うと、
かえって設備を傷めたり、
安全性を損なったりすることもあります。

「楽をするための工夫」が、
「余計な修理や交換」につながらないよう、
少し立ち止まって考えることも大切です。

掃除は、
家を長持ちさせるためのメンテナンス

無理をせず、
正しい方法で、
できる範囲で行っていきましょう。

【本日の一曲】
Donny Benet – Bernard’s Boogie