ついに登場!観光業を守る「クマ保険」
― 損害保険の原点に戻りつつある?意外と深い“保険とリスク”の歴史
「クマ保険」。
その言葉を聞いて、なんとも時代を映した商品だな…と思った方は多いのではないでしょうか。
近年、全国各地でクマの出没が相次ぎ、人的被害だけでなく、観光施設・キャンプ場・宿泊施設などへの経済的影響も無視できなくなってきました。そんななか、東京海上日動火災保険がついに“観光業向けクマ保険”を開発し、12月に販売をスタートします。
施設にクマが侵入して一時的に営業停止となった場合、その期間中の「利益相当額」を最大1000万円まで補償し、さらに電気柵の設置費用やクマスプレーの購入費まで支援するという、業界初の試み。
観光業にとっては非常に心強い内容です。
しかし、実はこの「クマ保険」、歴史をたどってみると、損害保険の原点と驚くほどよく似ています。
実際のところ、損害保険は“自然や外敵から身を守るための仕組み”から始まったもの。
海賊や嵐から身を守ってきた保険が、時を経て今度は“クマ”から観光地を守るようになった——そんな人類の長い営みの流れを感じさせる出来事なのです。
ここでは、そんなユニークな「クマ保険」の登場を入口として、損害保険の歴史や背景を少し深掘りしてみたいと思います。
■ 観光業向け「クマ保険」とは?
東京海上日動が新たに提供するのは、クマの侵入によって営業が止まってしまった場合、その間の損失や再発防止の費用を補償する保険です。
▼ 補償される主な内容
- クマ侵入で施設が閉鎖され、キャンセルが発生した際の 利益損失
- 再発防止のための 電気柵の設置費
- 安全確保へ向けた クマスプレーなどの備品の購入費用
▼ 利用できる施設
- 宿泊施設
- キャンプ場
- ゴルフ場
- そのほか観光・レジャー事業者全般
補償額は最大1000万円、保険料は年間10万〜50万円ほど。
条件としては、クマの侵入が防犯カメラなどで確認できること、施設閉鎖を公式に発表していることなどが求められます。
自然と隣り合う観光地にとって、クマの出没は「ただ怖い」だけの問題ではありません。
営業停止は宿泊キャンセル・イベント中止など大きな経済損失につながります。
そのリスクを軽減する制度として、この保険は確かに時代に合った商品と言えるでしょう。
■ 実は…保険の始まりは「海賊」と「嵐」だった!
現在では自動車・火災・地震・賠償責任など多くの保険商品がありますが、損害保険の歴史をたどればすべては
“危険と隣り合わせの生活を、みんなで支え合う”
という考え方から生まれています。
▼ 古代ギリシャの海が舞台
損害保険のルーツは、古代ギリシャの船旅にあります。
航海では嵐や海賊に遭遇すると、積荷を捨てて逃げるという判断を迫られることがありました。
その損害を「荷主と船主で分担しよう」という習慣が出発点とされています。
この“助け合い”の仕組みが発展し、金融業者が航海に必要な資金を貸し、
- 成功したら利子を払う
- 失敗(=沈没や海賊の襲撃)したら返済しなくてよい
という海上保険の原型が作られていきます。
これ、まさに現代の保険そのものですよね。
■ ロンドン大火が保険を「陸」に持ち込んだ
その後、保険は海から陸へ上陸します。
契機となったのが 1666年のロンドン大火。
この大火を教訓に、海上保険を参考にした「火災保険」が誕生し、
さらに過去のデータを使い保険料を設定するなど、現代の損害保険に近い仕組みが生まれました。
産業革命で都市化が進み、建物・工場・交通が発展すると、
あらゆるリスクを補償する制度として保険は急速に拡大していきます。
■ 日本の保険の歴史も「海」から始まった
日本でも、海は保険発展の舞台でした。
16〜17世紀、朱印船貿易では「抛金(なげかね)」という制度があり、
航海が成功すれば利子を払う、失敗した場合は返済不要という仕組みでした。
これは日本版・海上保険の原型と言われています。
さらに幕末・明治期には外国貿易が盛んになり、近代的保険制度が日本にも広まりました。
- 1869年:日本人による初の保険が実施
- 明治〜大正:損害保険会社が続々誕生
- 戦後:自動車保険・火災保険が普及し、生活に欠かせないインフラへ
こうして保険は現代社会の“安全の土台”として定着していきます。
■ そして現代——保険が再び「自然との闘い」に戻ってきた
こうして長い歴史を振り返ると、今回登場した「クマ保険」は決して突拍子もない商品ではありません。
むしろ、自然や外敵から人と経済を守るという保険の原点に、少し戻ってきたようにも見えます。
- 海賊から船を守る保険
- 火災から住宅を守る保険
- 交通事故から人を守る保険
- 災害から地域を守る保険
そして今回—— - 野生動物から観光地を守る保険
時代が変われば、リスクも変わる。
そのリスクに応じて新しい保険が生まれるのは、ある意味とても自然な流れです。
■ 観光地の未来を支える「リスク対策」として
クマ保険は話題性だけでなく、地方観光における“現実的な課題”への回答でもあります。
キャンプやアウトドア人気が高まる一方で、山間部への人の出入りが増え、
野生動物との距離がかつてより近くなっています。
同時に、地方では人口減少により林業・狩猟の担い手が減り、
山の管理が十分に行き届かなくなるという背景もあります。
そうした時代の変化の中で、
「自然と共存しながら安全な観光地を守る」
という目的に合った商品が今回の保険だと言えるでしょう。
■ 保険は“時代を映す鏡”
今回の「クマ保険」の登場は、一見するとユニークで話題性のあるニュースに見えます。
しかし歴史を振り返ると、これは損害保険の原点——
人々の生活を脅かすリスクをみんなで分かち合う仕組み
に立ち戻ったような動きでもあります。
海賊から海を守り、火災から街を守り、事故から人を守ってきた保険が、
今度はクマから観光地の経済を守ろうとしている。
リスクが変われば、求められる保険も変化していく——
そんな保険の本質をあらためて感じさせてくれる出来事です。
自然とともにある地域にとって、今回の保険は大きな安心材料になるはず。
そして、この新しい保険が、山や観光地で働く人々の安全と、地域の魅力づくりを支える一助となることを願っています。
◻︎◻︎出典:共同通信 東京海上、観光業向けクマ保険 営業停止を補償
https://news.jp/i/1366793293556154452
【本日の一曲】
Geisha Girls – Blow Your Mind (Kenny “Dope” Gonzalez Remix)