2025 12 21

不動産コンサルティングとは?

――「売る・買う」だけではない、不動産の本当の相談役

「不動産コンサルティング」と聞いて、皆さんはどのような仕事を思い浮かべるでしょうか。
不動産屋さんが少し難しいアドバイスをしてくれる仕事?
それとも投資家向けの専門的なサービス?

実は、不動産コンサルティングは、分かりにくいイメージを持たれがちな仕事の一つです。
私自身、「不動産コンサルティングマスター」という資格を保有し、不動産に関するコンサルティング業務を行っていますが、日常の会話の中で「それって何をする仕事なんですか?」と聞かれることは少なくありません。

そこで今回は、「不動産コンサルティングとは何か」「どんな場面で役に立つのか」「なぜ今、必要とされているのか」を、できるだけ分かりやすく整理してお話ししてみたいと思います。


不動産コンサルタントとは何をする人?

不動産コンサルタントとは、不動産の売買・活用・管理・相続・投資などについて、専門的な知識と経験をもとに、依頼者にとって最適な判断を支援する専門家です。

一般的な不動産会社が「物件を売る・貸す」ことを主な役割としているのに対し、不動産コンサルタントは、

  • そもそも売るべきか、持ち続けるべきか
  • 貸すとしたら、どんな形が最適か
  • 将来を見据えたとき、この不動産はどう活かすべきか

といった、より上流の判断を一緒に考える立場にあります。

つまり、不動産そのものを見るだけでなく、「人」「家族」「会社」「将来の計画」まで含めて、不動産をどう位置づけるかを考える仕事だと言えます。


なぜ今、不動産コンサルティングが注目されているのか

近年、不動産業界は大きな転換期を迎えています。

  • 人口減少・高齢化
  • 空き家の増加
  • 不動産価格の二極化
  • 相続問題の複雑化
  • 金利や税制の変化

こうした環境の変化により、「とりあえず売る」「とりあえず建てる」といった単純な判断が、かえってリスクになるケースも増えてきました。

だからこそ今、
専門的な知識をもとに、中立的な立場で全体像を整理し、最適解を導く存在として、不動産コンサルタントの役割が注目されています。


不動産コンサルタントの主な業務内容

不動産コンサルティングの仕事は、実に幅広いものです。主な業務を整理すると、次のようになります。

1.相談対応

不動産コンサルティングは「相談」から始まります。

  • 家を買うべきか、借りるべきか
  • 相続した土地をどうしたらいいか
  • 遊休地を活かしたいが、何ができるのか
  • 賃貸経営を続けるべきか、売却すべきか

こうした悩みに対して、感覚ではなく、根拠をもって整理していくのが役割です。

2.調査・分析

次に行うのが、客観的な調査と分析です。

  • 市場価格や賃料相場
  • 法規制(用途地域、建築制限など)
  • 権利関係
  • 物件固有のリスク

これらを丁寧に確認し、「できること」「できないこと」「注意すべきこと」を明確にします。

3.企画・提案

調査・分析を踏まえたうえで、最適な選択肢を提案します。

  • 売却
  • 賃貸
  • 建替え
  • リノベーション
  • 土地賃貸
  • 事業用としての活用

大切なのは、「一つの正解」を押し付けるのではなく、複数の選択肢を示し、そのメリット・デメリットを丁寧に説明することです。

4.事業執行・実行支援

不動産コンサルタントの中には、提案だけでなく、その後の実行まで関わるタイプもあります。

  • 交渉のサポート
  • 契約手続き
  • プロジェクトの進行管理

依頼者が安心して前に進めるよう、伴走するイメージです。


「企画提案型」と「事業執行型」の違い

不動産コンサルタントは、大きく2つのタイプに分けられます。

企画提案型コンサルティング

  • 課題整理
  • 調査・分析
  • 方向性の提案

までを担い、実行は別の専門家や事業者に委ねるスタイルです。

事業執行型コンサルティング

企画提案に加え、

  • 交渉
  • 手続き
  • 実行管理

まで一貫して関わるスタイルです。

どちらが良い・悪いではなく、依頼者の状況やニーズによって使い分けることが重要です。


不動産コンサルティングは「仲介」とどう違う?

よくある誤解が、「不動産仲介と同じでは?」というものです。

不動産仲介は、基本的に「取引の成立」が目的です。
一方、不動産コンサルティングは、「その取引が本当に最適かどうか」を考えるところから始まります。

場合によっては、

「今は売らない方がいい」
「何もしない、という選択肢が最善」

という結論に至ることもあります。

この“何もしない判断”も含めて支援する点が、コンサルティングの特徴です。


不動産コンサルティングの本質とは

不動産コンサルティングの本質は、
不動産を「目的」ではなく「手段」として捉えることにあります。

  • 家族の将来
  • 事業の成長
  • 資産の承継
  • 安心できる暮らし

そのために、不動産をどう使うのか。
それを一緒に考え、整理し、道筋を示すのが、不動産コンサルタントの役割です。


まとめ ― 不動産で悩んだら「相談する」という選択を

不動産は、多くの人にとって人生最大級の資産です。
だからこそ、「よく分からないまま決める」ことは、大きなリスクになります。

  • 売る前に
  • 買う前に
  • 建てる前に
  • 相続する前に

一度立ち止まり、専門家と一緒に考える。
それが、不動産コンサルティングを活用する最大の価値です。

不動産は難しいものではありますが、
正しく向き合えば、人生や事業をしっかり支えてくれる心強い存在になります。

「不動産で迷ったときの相談役」
それが、不動産コンサルティングなのです。

【本日の一曲】
Donny Hathaway – Love, Love, Love