ついに動き始めた住宅設備メーカーの再編——YKKとパナソニックの提携がつくる“窓の次の時代”とは
日本の住宅設備業界で、「再編が来るのでは」と長く言われていた流れが、ついに現実のものになりました。
2025年11月、パナソニックホールディングスは、住宅設備子会社である”パナソニック ハウジングソリューションズ(PHS)”の株式80%をYKKへ売却すると発表しました。
これまでパナソニックが掲げてきた “家まるごと提案” の戦略は、ここで大きな区切りを迎えることになります。
そして同時に、業界全体が次のステージへ進もうとしている、そんな節目となる出来事でもあります。
「産業の構造そのもの」の変化が、今回の再編を呼んだと言えます。
個人的には、深澤直人氏がデザインしたパナソニックの住設機器には一定のファンがいたと感じてます。(私は深澤デザインは無印良品などは好みですが、PHSはそこまででもないです。)
■ パナソニックの“家まるごと”戦略はなぜ壁にぶつかったのか?
パナソニックは長年、家電・設備・建材をまとめて提案する「トータルハウス」構想を推し進めてきました。
- キッチン
- お風呂
- 洗面
- 収納
- 照明
- 給湯
- 気密断熱の設備
——家じゅうをパナソニック製で統一できる、そんな未来を描いていたわけです。
しかし実際の市場は、それほど甘くありませんでした。
● 新築戸数が減り続けている
2005年度の125万戸から、2024年度には82万戸まで減少。
住宅設備のマーケットそのものが縮小しています。
● 住設の利益率は非常に低い
PHSの利益率は約1.9%。LIXILもほぼ同じ水準。
大量の投資を続けるには、やや厳しい状況でした。
● 家電との“相乗効果”も限定的だった
住設と家電を合わせれば最強のはず……という期待も、現場レベルでは大きく花開かなかった面があります。
こうした状況を受け、パナソニックは「すべてを自社で抱えるより、得意領域へ集中する」という判断を下したのでしょう。
■ YKKはなぜPHSを買収するのか?
——実は“自然な流れ”でもある
YKKといえば「窓の会社」というイメージが強いですが、もっと大きく見ると、YKK APは “家の入口・境界”をつくる会社 と言えます。
- 窓
- 玄関ドア
- 外回り建材
- 開口部の性能向上
ここを得意としてきたYKKが、今回PHSを迎え入れることで、
家の外側から、家の内部=水回りへと一気に領域が広がる。
これは長年の宿敵であるLIXILと真正面から競い合う体制になる、という意味でも非常に大きな転換です。
■ PHSの技術はYKKにとって“新しい武器”になる
PHSは、パナソニック製品の技術を住設に応用してきた企業です。
- IoT(スマートホーム系)
- 換気や空調まわりの技術
- 収納・生活動線のノウハウ
- 真空断熱ガラス「Glavenir」
- 樹脂窓メーカー「エクセルシャノン」
特に、窓と断熱の技術がYKKの得意領域と非常に相性が良い ため、今後は省エネ住宅の提案力が一段と高まると言われています。
“家の中で熱が最も出入りするのは窓”
だから「窓を制する者が断熱を制する」と言われる世界です。
ここにPHSの技術が加わることで、
YKKは “窓の会社” から “家全体を性能でデザインする会社” へ進化していくでしょう。
■ では、LIXILはどう動くのか?
今回の動きにより、住宅設備業界は久しぶりに「二大巨頭」の構図に戻りつつあります。
- YKK+PHS(パナソニック)
- LIXIL
国内市場は縮小傾向なので、必然的に競争はより厳しくなります。
LIXILが今後強化しそうな領域は、
- 樹脂窓への再投資
- 海外市場での攻勢
- デザインのリブランディング
- IoT住宅の新たな仕組みづくり
などが予想されます。
LIXILは5社が一緒になってからすでに14年が過ぎ、構造改革でスリム化を進めています。
潮田家の時代の“総合化”とは違う冷静な経営が行われている。
■ そして気になる“TDY”の関係性
——この再編でショールームはどうなるのか?
ここは業界の多くの関係者が気にしているポイントです。
TOTO・DAIKEN・YKK AP
の3社が連携し、全国で展開してきた共同ショールーム「TDY」。
ここでは水回り、建材、窓を横断して“暮らし方の提案”を行ってきました。
これまでTDYは、メーカーの壁を越えた非常に珍しい取り組みとして評価されてきました。
しかし今回、YKK APがPHS(キッチン・バスメーカー)を迎え入れることで、業界内の力関係が大きく揺れ動きます。
● TOTOとPHSは競合になる
→ 風呂・洗面などでの競争は避けられない。
● YKK APは水回りを手に入れた
→ これまでの“窓専門”から大きく立ち位置が変わる。
● DAIKENは建材の中心で中立的
→ どちらに寄るかでプロモーションが変わる可能性も。
そのため今後、TDYショールームを
- 現行のまま維持するのか
- 展示内容を変更するのか
- 新しいブランド軸をつくるのか
といった議論が避けられません。
TDYのショールームのあり方が変わる可能性は十分あります。
■ “現場で働く人”にとって、この提携は何をもたらすのか?
● ① 提案の幅が広がる
窓と水回りが同じグループとなり、家全体の統一提案がしやすくなる。
● ② スマートホーム連携が一気に進む
パナソニックのIoT技術とYKKの窓技術は非常に相性が良い。
● ③ リフォーム・リノベ市場が活性化
中古住宅への関心の高まりと重なり、競争が一段と激しくなる。
● ④ 新築より“性能向上リフォーム”が主戦場に
省エネ義務化の流れもあり、窓・断熱・換気の連携した提案が中心になる。
YKKワンストップで話ができる形をどこまで完成させられるかが重要で
かつてのLIXILは5社が一緒になった後も長い間 連携がうまく行ってない部分ありました。
(どちらかというと”モノ”ではなく”人”の方で)
■ これから住宅設備業界はどこへ向かうのか?
住宅着工数が減り、人口が減り、家づくりが小さくなる時代。
そんな中で企業は、
- リフォーム市場
- 断熱性能向上
- 環境エネルギー
- IoTスマートホーム
といった 「家の質を高める領域」 へ舵を切っています。
今回のYKK×PHSの提携は、その流れを象徴する出来事と言えます。
窓から始まり、家全体へ。
設備から性能へ。
メーカー競争から、暮らし方の競争へ。
業界は今、大きな節目の中にいます。
◻︎◻︎出典:東洋経済オンライン パナソニック「低収益」続いた住宅設備事業を売却、ようやく現実味帯びてきた楠見社長の経営改革プランは加速できるか
https://toyokeizai.net/articles/-/918755
【本日の一曲】
The Chemical Brothers – Block Rockin’ Beats (Don Diablo Remix)