2025 11 20

【植物のある暮らし  ローズマリー編 花が咲く季節に】

朝晩の空気がすっかり冷え込み、長く続いた夏が嘘のように静かに終わりを告げました。季節が大きく動いたことを感じる11月。我が家の庭でも、その変化を知らせるようにローズマリーの小さな花がふわりと咲き始めました。

夏の間は旺盛に伸び続けていた枝葉が、ここにきて少し落ち着き、代わりに可愛らしい青紫の花が顔を見せます。ローズマリーはどちらかといえば「葉」の印象が強いハーブですが、花が咲くとその存在感が一段と増し、庭の景色に柔らかな彩りを添えてくれます。

うちのローズマリーは、以前不動産取引をご一緒したオーナーさまからいただいたもの。何でも、ご自宅でも長年育てていた株の挿し木だそうで、「丈夫だから育ててみてください」と手渡してくださった、思い出深い一本です。それから数年、雨の日も晴れの日も我が家の庭を見守るように根づき、今年もまた変わらず可愛らしい花を咲かせてくれました。

ローズマリーというと、やはり料理の香りづけに使うイメージが強いですよね。肉料理や焼き菓子、ハーブティーなど、ほんの一枝添えるだけで香りがぐっと豊かになります。でも、育ててみるとそれだけでは終わらない奥深さがあるのが、この植物のおもしろいところです。


ローズマリーの基本情報と歴史

学名:Rosmarinus officinalis
和名:マンネンロウ(迷迭香)
科名:シソ科 / 属名:マンネンロウ属(ロスマリヌス属)

ローズマリーは地中海沿岸が原産の常緑低木で、全草に力強く清涼感のある香りがあります。この芳香のおかげで古くから人々の暮らしに寄り添ってきた植物で、古代ギリシャ時代には「記憶の象徴」とされていました。学生が試験の際にローズマリーの花冠をかぶって臨んだ、という話も残っているほどです。

また、魔除けや神秘的な力をもつとも考えられ、葬儀では棺に小枝をのせたり、結婚式では花嫁の冠に編み込んだりと、人生の節目に寄り添う植物でもありました。

薬草としての歴史も長く、葉の浸出液が強壮剤として使われたり、外傷のケアに利用されたりと非常に重宝されてきました。近年では、強い抗酸化作用をもつ成分「ロスマリン酸」が注目され、“若返りのハーブ”と呼ばれることもあります。

種類が多いローズマリーですが、どれもほぼ同じ薬効をもつといわれています。立ち性、ほふく性、その中間など樹形もさまざまで、庭植えはもちろん、鉢植えやハンギング仕立てなど、育て方のバリエーションが豊富なのも魅力です。

花色も青紫だけでなく、白やピンクなどがあり、斑入り葉などの観賞価値の高い品種もあります。秋から春にかけて長い期間花をつけるため、寒い季節の庭を明るくしてくれる頼もしい存在です。


さまざまな用途と楽しみ方

ローズマリーは、ハーブの中でも特に用途が広い植物です。

飲食用

  • 肉料理の香りづけ
  • ハーブティー
  • 焼き菓子のアクセント

特に肉料理との相性は抜群で、鶏肉やラムに一枝添えるだけで香りの輪郭がぐっと深まります。

香料・美容

  • アロマオイル
  • ポプリ
  • 入浴剤

清涼感のある香りは気分をリフレッシュさせてくれます。

クラフト

  • リース
  • 花束やスワッグ
  • トピアリー

常緑で形が崩れにくいので、インテリアの素材にも向いています。

薬用

  • チンキ剤
  • 湿布剤
  • 血行促進
  • 疲労回復

中世では“若返りの秘薬”として有名で、特にハンガリー王妃エリザベートの逸話はよく知られています。

近年は、ローズマリーの芳香が脳を活性化させるとして、認知症予防や介護現場でも注目されています。


育てやすさも魅力のひとつ

ローズマリーは非常に丈夫で、乾燥した痩せ地でも育つほど強健です。海岸に自生する植物で塩害にも強いため、瀬戸内のような海風のある地域でも育てやすいハーブのひとつです。

育てる上で気をつけたいポイントは以下のとおりです。

  • 水をやりすぎない(乾燥気味が好き)
  • 日当たりが良い場所を好む
  • 通気性のいい土で育てる
  • 風通しを確保する
  • 定期的に刈り込むと形が整い、花つきも良くなる

特別な手入れがなくても元気に育つため、ガーデニング初心者にもおすすめです。


ローズマリーの花が咲く季節に思うこと

11月の冷たい空気の中で咲くローズマリーの花を見ていると、植物が季節を教えてくれることに改めて気づかされます。香りが強く、どちらかと言えば“実用的”な印象のハーブですが、ひっそりと咲く花には、控えめながら確かな存在感があります。

いただいたローズマリーが毎年花を咲かせてくれるたび、贈ってくださったオーナーさまのことをふと思い出します。植物には、こうした“記憶を運ぶ力”があるのかもしれません。玄関先を通るたび、料理のときに一枝摘むたび、その人の顔が自然と浮かんでくる。そんな小さな温かさが、植物のある暮らしの魅力なのだと感じます。

季節の移ろいを少しずつ感じながら、今年もまたローズマリーの花が咲く季節を迎えることができました。庭に寄り添いながら育つ植物とともに、ゆったりと冬を迎える準備をしていきたいと思います。


【本日の一曲】
Federico Arreseygor – Al Cantor