2025 12 13

AI以降の世界で、“効率の良さ”は本当に正解なのか

── 効率神話の終焉と、失敗から始まるこれからの働き方

「効率よく動くことが正しい」
日本の多くの会社で、長い間これが“正義”として扱われてきました。

・前例を踏襲する
・リスクは避ける
・ムダを省く
・確実に成果が出る方法を選ぶ

確かに、安定的に仕事を回すという意味ではこれらは重要な価値観です。しかし、AIが浸透し、世の中の“正解”が一瞬で検索できるようになった今、この価値観が 根本から揺らぎ始めています

むしろ今は、効率を追い求めるほど「AIの劣化版になる」という、なんとも皮肉な時代に入ってきました。
なぜそんな時代になったのか?そして、私たちはどう働いていけば良いのか?

この記事では、効率神話をアップデートし、「失敗することの価値」について掘り下げてみたいと思います。


■「効率が良い」は“正解がある場合”だけ有効だった

効率という考え方は、本来「明確な正解がある仕事」に対して効果を発揮する概念です。

・マニュアルがある
・手順が決まっている
・答えが固定されている
・繰り返し作業が多い

こうした業務で「効率化」は強力な武器になります。

しかし、私たちが日々取り組んでいる仕事の多くは、実は 未知の案件の連続です。
新しい提案、新しい取引先、新しいプロジェクト、前例のない対応……。

正解がどこにあるかわからない。それどころか、そもそも「正解」という概念が存在しない場合すらあります。

そんな“未知”に立ち向かうとき、「効率」はかならずしも最良の価値観ではありません。

むしろ、未知の仕事にとって必要なのは

失敗して、検証して、改善するサイクル

この泥臭いやり方こそが、本来の“創造的な仕事”の本質です。


■AIが奪うのは「失敗しない仕事」から

今のAIは、過去の膨大なデータを学習し、最も“正解らしい”答えを高速で出す仕組みになっています。

つまり、

・前例を探す
・効率的なルートを選ぶ
・ムダをなくす
・リスクを避ける

これらは AIの得意分野であり、人間が勝てる領域ではありません。

かつて会社で「優秀」とされてきた人材――
・リスクを避ける
・ミスをしない
・無難にまとめる
・効率的に仕事を進める
・確実性の高い方法しか選ばない

こうした“ソツのない優等生タイプ”ほど、AIと真正面から競合してしまうのです。

つまり、

「失敗しないように動く人」ほど AIに仕事を奪われる構造になっている。

これは極めて残酷な現実ですが、すでに多くの企業で静かに起きています。


■では、人間が勝てる領域とはどこなのか?

AIが苦手なものは何か?

それは、

「過去データが存在しない領域」

つまり実際に手を動かし、体験し、失敗し、現場でしか得られない“経験知”です。

AIは膨大な過去データは持っていますが、

・あなたが現場で見た景色
・顧客の表情
・その場の空気感
・人間同士の温度
・あなた自身が感覚的に判断したこと
・実験しないとわからないこと

こうした情報はひとつも持っていません。AIは「経験知」を持っていないのです。

そのため、人間がAI時代に生き残るためには

失敗を恐れず、自分だけの経験知を積み上げる

これが唯一の方法と言っていいほど重要な戦略になります。


■失敗は「損失」ではなく「検証費用」

多くの組織ではいまだに、

・失敗すると怒られる
・減点される
・評価が下がる
・恥ずかしいこと
・責任を問われる

こういう文化が強く残っています。

しかし、AI時代にこの価値観はまったく通用しません。

なぜなら、

「事前に調べればわかる失敗」と「やってみなければわからない失敗」

を事前に完全に区別することは不可能だからです。

特に経験の浅い時期はなおさら。
仮に前例がある仕事であっても、実際に取り組んで失敗してみることでしか身につかないことは山ほどあります。

だから本来、失敗とは

損失ではなく検証費用

なのです。

もし組織がこの価値観に気づかないままでいると、そこで働く人は「失敗しないための人材」に育っていきます。つまり、

どんどん“劣化版AI”になってしまう。

これこそが、今もっとも危険なキャリアの罠です。


■「失敗できる環境」はAI時代の特権である

AI時代において安定とは、

・効率化することでも
・ミスしないことでも
・前例を踏襲することでもなく

失敗を繰り返しながら、経験知を蓄積すること

この一点に尽きます。

そして、これを実現するためには
自分が働く環境が非常に重要です。

あなたの職場がもし、

・失敗=悪
・減点主義
・挑戦を評価しない
・前例主義
・効率マニュアル至上主義

であれば、そこに居続けることは

あなたのキャリアをAI以下の存在へと押し下げる危険性が高い

と言えます。

逆に、

・挑戦が歓迎される
・失敗しても咎められない
・改善を評価する
・アイデアを試す機会がある

こんな環境は、AI時代の「宝」と言って良いほど価値があります。


■AI以降の世界で問われるのは「あなたはどれだけ失敗してきたか?」

これから問われる“能力”はシンプルです。

AIの知らない経験知をどれだけ自分の中に持っているか?

これは、失敗をしなければ絶対に積み上がりません。

効率は、正解がある仕事にのみ機能する価値観でした。
しかし私たちの仕事の多くは「正解がない」「やってみなければわからない」領域に広がり続けています。

そんな時代に必要なのは、

■効率よりも、試行錯誤

■正確さよりも、挑戦

■失敗しないことより、失敗から学ぶこと

この価値観の転換です。

そしてこれは、おそらくAI以降の社会がもっとも重要視する“人間らしい能力”になっていくでしょう。


■AI時代に必要なのは「痛みを伴う道」を選ぶ勇気

自分の失敗を正面から受け止めるのは、気持ちのいいものではありません。

・プライドが傷つく
・恥ずかしい
・評価が下がるかも
・周りから何か言われるかも

しかし、この“痛み”こそが 唯一、AIに真似できない人間の成長プロセスです。

今まで正義だと思われてきた効率性や失敗回避は、AIにすべて奪われていきます。

これからの時代に必要なのは、

■未知の領域へ踏み出す勇気

■試してみる行動力

■何度失敗しても立ち上がるしぶとさ

これが、AI以降の世界で人間が価値を発揮し続ける唯一の方法なのだと思います。

◻︎◻︎出典:東洋経済 会社にとっての優等生が、知らぬ間に「劣化版AI」に成り下がる決定的理由
     https://toyokeizai.net/articles/-/920064?display=b

【本日の一曲】
Chara – Everybody Look