2025 12 24

街の紹介vol.10 三豊市編 ”高瀬駅が新しくなりました”

――木の駅舎がつなぐ、まちの記憶とこれから

「高瀬駅が新しくなったらしいよ」
そんな話を聞き、実際に足を運んでみると、想像以上に印象的な駅舎がそこにありました。

まず感じたのは、木の存在感
木造平屋建ての駅舎は、派手さはないものの、どこか落ち着きがあり、周囲の風景にすっと溶け込んでいます。コンクリートや鉄骨の無機質な駅が増える中で、木の温もりを前面に出した駅舎は、地方駅ならではの魅力をあらためて感じさせてくれます。

待合スペースもシンプルながらおしゃれで、ただ電車を待つための場所ではなく、「少し腰を下ろして過ごしたくなる空間」になっていました。

そして、個人的に少し驚いたのが切符の自動販売機が1台だけだったこと。
最近は交通系ICカードやスマホ決済で「ピッ」が当たり前になり、切符を買う人自体が減っているとはいえ、時代の変化を実感しますね。
便利になる一方で、「駅の役割」そのものも、少しずつ変わってきているのかもしれません。


12月15日から順次供用開始した新駅舎

JR予讃線・高瀬駅の新駅舎は、2025年3月から整備が進められてきました。
そして2025年12月15日から、いよいよ順次供用が開始されています。

新駅舎は、木造平屋建て・延床面積約490㎡
そのうち待合スペースは約30㎡とコンパクトですが、必要十分で居心地の良い空間です。
男女別トイレに加え、バリアフリー対応の公衆トイレも整備され、誰にとっても使いやすい駅になっています。

また、約150台を収容できる無料駐輪場も整備されているのは大きなポイント。
高瀬駅は、通勤・通学で自転車を利用する方も多い駅です。こうした「日常の使いやすさ」をきちんと押さえている点に、今回の整備の意図がよく表れています。

供用開始のスケジュールは以下の通りです。

  • 12月15日:公衆トイレ、通路、券売機室
  • 12月18日:駐輪場
  • 12月24日:待合スペース(完成記念式典終了後)

本日12月24日には、市主催による完成記念式典も開催され、挨拶やテープカット、施設見学が予定されています。
まちの駅が新しくなるというのは、それだけで一つの「節目」ですね。


市とJR四国が協働で整備した駅

今回の高瀬駅建て替えは、三豊市とJR四国の協働事業として進められました。

駅舎や駅前広場、駐輪場などの整備は三豊市が担当し、約1億4,000万円を負担。
一方で、JR四国は旧駅舎の解体や券売機室の整備を担っています。

地方都市において、駅は単なる交通施設ではなく、まちの顔でもあります。
その駅づくりに自治体が積極的に関わるという姿勢は、今後の地方都市にとって非常に重要なポイントだと感じます。


三豊市役所・学校の最寄り駅としての高瀬駅

高瀬駅は、三豊市役所の最寄り駅であり、四国学院大学香川西高校なども近くにあります。
2024年度の1日あたりの乗車人員は587人。
決して大きな駅ではありませんが、地域の日常をしっかり支えている駅です。

なお、2024年3月からは無人駅となっています。
無人化は全国的な流れではありますが、だからこそ駅舎の「居心地」や「安心感」が、以前にも増して大切になってきます。

その点、新しい高瀬駅は、派手な設備はなくとも、丁寧につくられた印象が強く、無人駅であることをあまり感じさせません。


100年以上の歴史をもつ高瀬駅

高瀬駅の歴史は古く、開業は大正2年(1913年)12月20日
当時は「上高瀬駅」という名前で、讃岐線の多度津~観音寺間延伸に合わせて誕生しました。

その後、昭和30年(1955年)に周辺町村が合併し高瀬町となり、
昭和34年(1959年)10月1日に駅名も「高瀬駅」へと改称されます。

前駅舎は、その改称を前にした昭和34年6月に建て替えられたもの。
築66年を迎えていました。当時としては珍しい鉄筋コンクリート造の近代的な駅舎で、地域の象徴的存在だったと言われています。

昭和36年(1961年)には、予讃線の列車が蒸気機関車からディーゼルカーへと切り替わり、高瀬駅には準急列車も停車するようになりました。
この時には「国鉄近代化完成祝賀会」も開かれたそうです。

農村の小さな駅だった上高瀬から、地域の中心駅へ。
前駅舎は、まさにその成長を象徴する建物だったのでしょう。


近代的な駅舎から、木の駅舎へ

今回の建て替えで象徴的なのは、鉄筋コンクリートから木造への転換です。
これは単なるデザインの変更ではなく、時代や価値観の変化を映しているように感じます。

大量輸送・効率・近代化を象徴したコンクリートの駅舎から、
地域性・居心地・環境への配慮を感じさせる木の駅舎へ。

人口減少や利用者数の変化が進む中で、駅に求められる役割も変わってきました。
「大きくて立派」よりも、「身の丈に合って、長く愛される」こと。
高瀬駅の新駅舎は、そんな方向性を示しているように思います。


駅が変わると、まちの見え方も変わる

駅は、まちを訪れる人が最初に目にする場所です。
同時に、毎日使う人にとっては、暮らしの一部でもあります。

高瀬駅の新駅舎は、過剰ではなく、でも確かに誇れる存在です。
「派手じゃないけど、いい駅だね」
そんな声が自然と出てきそうな、ちょうどいい佇まい。

これから先、この駅を使う学生や通勤者、帰省してくる人たちにとって、
この木の駅舎が「いつもの風景」となっていくのでしょう。

駅は完成した瞬間がゴールではなく、そこからがスタート。
高瀬駅が、これからの三豊市の日常を静かに支え続けてくれることを期待したいと思います。

【本日の一曲】
Loyae – Level Up