建物に合った暖房器具を選ばないといけない理由
― 冬の快適さと健康を守るために知っておきたい住宅と暖房の関係 ―
いよいよ本格的な冬がやってきましたね。
朝晩の冷え込みも厳しくなり、「暖房をつけっぱなしにする時間が増えた」「どの暖房器具が一番いいのか迷っている」という方も多いのではないでしょうか。
ところで皆さんのお宅では、どんな暖房器具を使っていますか?
エアコン、石油ファンヒーター、ストーブ、オイルヒーター、床暖房……。
実はこの”「暖房器具の選び方」”、単に好みや暖かさだけで決めてしまうと、
・健康被害
・結露やカビ
・住宅そのものの劣化
につながる可能性があることをご存じでしょうか。
大切なのは、「家のつくりに合った暖房器具を選ぶこと」。
今回は、住宅の構造と暖房器具の関係について、少し掘り下げてお話ししたいと思います。
昔の家と今の家は、そもそも“空気の考え方”が違う
まず前提として知っておきたいのが、昔の日本の家と現代住宅の違いです。
ひと昔前、たとえば私の祖母が幼かった頃の家だと囲炉裏があり、冬になると家の中で火を焚いて暖をとっていました。
今の感覚からすると、「家の中で火を燃やすなんて危険では?」と思いますよね。
しかし、当時の住宅は
・土壁
・真壁仕上げ
・建具の隙間
が多く、自然に空気が入れ替わる家だったのです。
つまり、燃焼によって発生する煙やガスも、知らず知らずのうちに外へ逃げていました。
いかに昔の家が“隙間だらけ”で、常に換気されていたかが想像できると思います。
現代住宅は「勝手に換気されない家」
一方、現代の住宅はどうでしょうか。
・クロス貼りの大壁仕上げ
・高気密・高断熱
・樹脂サッシや複層ガラス
これらによって、冷暖房効率は格段に向上しました。
しかしその反面、意識して換気をしないと空気が入れ替わらない家になっています。
ここが、暖房器具選びで非常に重要なポイントです。
燃焼系暖房器具が「使える家」「使ってはいけない家」
暖房器具は大きく分けると、
燃焼系と非燃焼系に分けられます。
■ 燃焼系暖房器具
・石油ストーブ
・石油ファンヒーター
・ガスファンヒーター
これらは燃料を燃やして熱をつくるため、
・二酸化炭素
・一酸化炭素
・水蒸気
を室内に発生させます。
◯ 使用しても問題が少ない家
・土壁の真壁仕上げ
・隙間の多い古民家
・自然換気が十分に行われる家
× 注意が必要な家
・クロス貼りの大壁仕上げ
・高気密住宅
・24時間換気を止めている家
高気密住宅で燃焼系暖房を使うと、一酸化炭素中毒のリスクが高まります。
これは命に関わる非常に危険な状態です。
石油ファンヒーターの「加湿効果」と落とし穴
石油ファンヒーターは人気のある暖房器具です。
理由の一つが、すぐに暖まって「部屋が乾燥しにくい」という点でしょう。
実際、灯油は燃焼時に大量の水蒸気を発生させます。
灯油1Lを燃やすと、約1Lの水蒸気が発生すると言われています。
このため、
・加湿器なしでも湿度が上がる
・喉や肌が乾燥しにくい
・ウイルス対策になる
といったメリットがあります。
しかし、その水蒸気がどこへ行くかを考えたことはありますか?
高気密住宅では、
・窓
で結露となり、
・カビ
・ダニ
・建材の劣化
を引き起こす原因になります。
特にカーテンのカビは分かりづらく、気づいた時にはカビ・ダニがかなり増えているケースも少なくありません。
非燃焼系暖房器具が向いている現代住宅
現代住宅におすすめなのは、非燃焼系暖房器具です。
■ 非燃焼系暖房器具
・エアコン
・オイルヒーター
・パネルヒーター
・床暖房
これらは室内で燃焼を行わないため、
・一酸化炭素が発生しない
・換気不足による事故が起こりにくい
という大きなメリットがあります。
特に高気密・高断熱住宅では、エアコンだけでも十分に暖かさを確保できるケースが増えています。
真壁から大壁への移行期に起きた「シックハウス問題」
ここで少し、住宅の歴史に目を向けてみましょう。
真壁仕上げから大壁仕上げへと高度経済成長期に急激に移行しました。
この時期の住宅は、
・気密性が一気に高まった
・建材の化学物質基準が今より曖昧だった
という特徴がありました。
その結果、
・ホルムアルデヒド
・揮発性有機化合物(VOC)
が室内に滞留し、シックハウス症候群が社会問題となりました。
頭痛、めまい、目や喉の違和感、アトピーの発症など、健康被害が続出したのです。
24時間換気システムが義務化された理由
この問題を受け、2003年の建築基準法改正で
「24時間換気システム」の設置が義務化されました。
義務化の背景
・シックハウス症候群の急増
・高気密・高断熱住宅の普及
・窓開け換気だけでは不十分
24時間換気では、1時間あたり0.5回以上の換気が行われています。
つまり、現代住宅は
「換気設備があって初めて安全が保たれる家」
なのです。
暖房器具選びは「家を知ること」から始まる
暖房器具は、
・暖かければ良い
・昔から使っているから安心
という理由だけで選ぶ時代ではありません。
家の構造・気密性・換気計画を理解した上で選ぶことが、
・家族の健康
・住宅の寿命
・快適な暮らし
につながります。
もし「うちはどの暖房が合っているのか分からない」という方は、
ぜひ一度、ご自身の住まいを見直してみてください。
冬を安全で快適に過ごすために、
暖房器具と建物の相性、この冬は少し意識してみてはいかがでしょうか。
【本日の一曲】
Tyler, The Creator · Kali Uchis – See You Again
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