長距離と短距離の走り方の違い
― 丸亀ハーフを前に、あらためて「走る」を考える ―
2月1日開催の丸亀国際ハーフマラソンのゼッケンが、ついに自宅に届きました。
以前は大会会場での受け渡しが当たり前でしたが、コロナ禍をきっかけに郵送へと切り替わり、今ではそれがすっかり定着しましたね。封筒を開けてゼッケンを手に取ると、「ああ、いよいよだな」と気持ちが一段引き締まります。
開催まで残り2週間ほど。
練習も仕上げの時期に入り、疲労を抜きながらも感覚を研ぎ澄ませていくフェーズ。こういう時期は、ただ走るだけでなく、「走りそのもの」について改めて考えたくなります。
そんな中で、非常に腑に落ちる解説に出会いました。
元400m日本記録保持者・為末大さんが語る「長距離と短距離の走り方の違い」です。
同じ“走る”という動作なのに、なぜあんなにもフォームが違うのか。
長距離ランナーはどこか流れるようで、短距離選手はバネの塊のよう。
今回は、その違いを自分なりに噛み砕きながら整理してみたいと思います。
同じ「走る」でも、動きはまったく違う
「短距離と長距離って、走り方が全然違いますよね。
あれって、同じじゃダメなんですか?」
為末さんの元には、こうした質問がよく届くそうです。
一見すると、「同じ人間が同じように走っている」のに、なぜここまで違いが生まれるのか。不思議に感じるのも当然です。
では、いちばんの違いはどこにあるのか。
表情?
腕振り?
足の長さや筋肉量?
もちろん細かな違いはいくつもありますが、為末さんが指摘する本質は、非常にシンプルでした。
**それは「回転数の違い」**です。
回転数がすべてを分ける
長距離と短距離の最大の違いは、**脚の回転数(ピッチ)**にあります。
長距離ランナーの場合、脚の回転はおおよそ
1秒間に2〜3回転。
一方でスプリンターは、
1秒間に4.5〜5回転、トップレベルではそれ以上。
この数字を聞いただけでも、その異次元さが伝わってきます。
たとえば、力を抜いて脚を前後にブラブラさせると、自然と1秒に1回程度の動きになります。
少し頑張って2回転。
それ以上になると、かなり苦しくなってきます。
では、どうやって1秒間に5回も脚を回すのか。
答えは、「楽な動きを捨てる」ことにあります。
「後ろに流す」か、「キャンセルする」か
長距離ランナーのフォームを横から見ると、脚が後ろにスーッと流れていく動きがよく見られます。
これは決して悪いことではありません。むしろ、長時間動き続けるために最も効率的な動きです。
一方、短距離ではその「後ろに流す動き」をほぼ行いません。
なぜなら、後ろまで脚を流している時間があれば、回転が間に合わないからです。
そこでスプリンターは、
後ろに行きかけた脚を、瞬時に前へ引き戻す
いわゆる「キャンセル動作」を行います。
脚の可動域をあえて小さくし、
前後ではなく「前で回す」。
この違いこそが、フォームの違いとして私たちの目に映るわけです。
移動速度がフォームを変える
では、なぜこの違いが生まれるのか。
理由は単純で、移動速度が違うからです。
・長距離ランナー
時速10〜20km前後
・短距離スプリンター
時速35〜40km以上
為末さんの見立てでは、
時速35〜36kmあたりが分岐点。
そこを超えると、長距離的な動きではもう間に合わなくなり、短距離特有の動きへと切り替えざるを得なくなるそうです。
つまり、
「走り方を変えている」のではなく、
「スピードに合わせて、身体が勝手に変わっていく」
というのが実態なのです。
疲れるからこそ、長距離は流れる
1秒間に5回も脚を回す動きは、とにかく疲れます。
これは、短距離選手がなぜ100mしか走らないのかを考えれば納得です。
5000mは速い人で13分台。
一般ランナーなら20分、30分。
その時間ずっと、どこかに強い力を入れ続けることは不可能です。
だから長距離では、
・力を抜く
・脚を流す
・リズムを一定に保つ
という戦略が必要になります。
一方、スプリンターは10秒前後。
その短い時間に全神経を集中させ、一気に回転数を引き上げる。
求められる能力も、身体の使い方も、まったく別物なのです。
それでも長距離に「短距離の要素」は必要か?
ここで、とても重要な質問が出てきます。
「じゃあ、長距離ランナーに
短距離的なキャンセル動作は必要ないのか?」
答えは、NOです。
むしろ近年は、
「長距離選手にもスピードが必要」
という考え方が主流になってきています。
その理由が、ラストスパートです。
ラストスパートは回転数の世界
5000m、1万m、ハーフマラソン。
レース終盤、突然ペースが上がり、順位が大きく入れ替わる場面を何度も見てきました。
あの瞬間、何が起きているのか。
実はあれ、
一時的に短距離の世界に入っている状態なのです。
脚の回転数を一気に引き上げられない選手は、
「ついていきたくても、身体が動かない」。
つまり、
キャンセル動作を持っていないと、
ラストスパートで勝負にならないのです。
長距離版「キャンセル」の使いどころ
とはいえ、短距離のように激しく脚を引き戻す必要はありません。
長距離に必要なのは、
ほんの少し、素早く戻す意識。
後ろに流れきる前に、
「クッ」と前に戻す。
これができると、
・着地準備が早くなる
・地面反力をもらいやすくなる
・結果的に、楽にスピードが出る
という好循環が生まれます。
大迫選手の走りを横から見ると、
長距離なのに、どこか前で脚が回っているように見える瞬間があります。
あれこそが、
長距離の中に短距離の要素を取り入れた走りなのだと思います。
本質は同じ、でも使い分ける
今回の話を通して感じたのは、
・走る本質は同じ
・でも、使う割合が違う
ということです。
長距離では、
「流れ」と「リラックス」。
短距離では、
「回転」と「キャンセル」。
どちらが正しい、ではなく、
距離とスピードに応じて最適解が変わる。
丸亀ハーフを前に、
ただ距離を踏むだけでなく、
こうした視点で自分の走りを見直すことができたのは、大きな収穫でした。
残り2週間。
仕上げながら、少しだけ「前に戻す」意識を入れて、当日を迎えたいと思います。
走るというシンプルな動作の奥深さを、改めて感じさせてくれた、非常に学びの多い内容でした。
◻︎◻︎出典:為末大学 Tamesue Academy
https://www.youtube.com/@TamesueAcademy
【本日の一曲】
Weezer – Buddy Holly (2024 Remaster)
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