2026 02 27

出生数70万人時代に、私たちはどう向き合うか

2025年の出生数は70万5809人。
1899年に統計が始まって以来、過去最少を更新し、これで10年連続の最低記録となりました。

一方で、婚姻数は50万5656組。こちらは2年連続で増加しています。

死亡数は160万5654人。
単純計算でも、自然減は約90万人規模です。

この数字をどう受け止めるべきなのでしょうか。


数字が示す現実

「若年人口の減少」「晩婚化・晩産化」——
厚生労働省はそうした要因を背景に挙げています。

確かに、若い世代そのものが減っている以上、出生数が減るのはある意味で当然の流れです。

ただ、注目すべき点もあります。
結婚件数は増えているという事実です。

都内勤務の18歳~34歳の独身男女の約8割が「結婚したい」と答えているというデータもあります。
つまり、結婚願望が消えているわけではない。

それでも出生数が増えない。
このギャップの中に、今の日本社会の複雑さがあるように感じます。


住宅着工戸数との相関

昨年の新設住宅着工戸数は約74万戸。
これは62年ぶりの低水準です。

出生数が約70万人。
住宅着工戸数が約74万戸。

偶然とは思えない近似値です。

もちろん、インフレや建築コストの上昇といった景気要因もあります。
しかし、もっと根本的なところにあるのは、「人が減っている」という事実ではないでしょうか。

人が減れば、住宅の需要は減ります。
住宅が減れば、家族を形成する土台も減ります。

どちらがニワトリでどちらが卵か。
議論はあるでしょう。

しかし、双方に相関関係があることは、ほぼ間違いないように思えます。


縮小均衡へ向かう社会

出生数の減少と住宅着工戸数の減少が同時に進行すると、日本の不動産市場や住宅市場は長期的な縮小均衡に向かいます。

空き家は増え、土地価格は二極化し、経済活動は緩やかに縮小していく。

拡大成長を前提としたモデルは、徐々に成立しづらくなります。

これまでの日本は、人口増加とともに拡大してきました。
右肩上がりの時代が長く続いた。

しかし今は、明らかに違うフェーズに入っています。


抜本的な解決策はあるのか

正直に言えば、劇的な解決策は見当たりません。

子育て支援、教育費の軽減、働き方改革——
さまざまな政策が打ち出されていますが、人口構造そのものを短期間で反転させるのは難しい。

仮に今年生まれた子どもが社会人になるまで、約20年かかります。

20年後の出生数は、おそらく今よりさらに少ない可能性が高い。

そう考えると、アラフィフ世代の私が社会人として活動する残りの時間は、日本人という枠で見る限り、縮小均衡の中にある可能性が高いと言わざるを得ません。


前提を変えるという選択

ならばどうするか。

未来を悲観するよりも、前提を変えることの方が現実的かもしれません。

拡大を前提にした思考から、縮小を前提にした思考へ。

「増える」ことが善で、「減る」ことが悪、という価値観自体を見直す必要があるのかもしれません。

時代が変われば、善悪すら入れ替わります。

かつては常識だったことが、今では非常識になる。
その逆もまた然りです。

考え方ひとつで、景色は大きく変わります。


内需だけで成り立つ未来は来るのか

もし再び人口が増加に転じれば、日本の内需だけでも経済は回るでしょう。

しかしそれは、生物の寿命よりも長いタイムスケールになる可能性が高い。

私たちが生きている間に、劇的な人口増加に転じるシナリオは、現実的とは言い難い。

一方で、地球規模で見ると、人類は現在も指数関数的に増加しています。
地球全体だと、生きているうちに地球人100億人をむかえる経験のできる地球人の一人にもなることも。

食料問題、エネルギー問題、環境問題。
地球全体では別の課題が山積しています。

もしかすると、未来には「国」という概念自体が今とは違う形になっている可能性もある。

人口減少に悩む国と、人口増加に苦しむ地域。
そのバランスが再編される未来も、ゼロではないでしょう。


データをどう使うか

大切なのは、データを感情的に受け止めすぎないことです。

数字は数字。
そこから読み取れる傾向を冷静に汲み取り、自分の行動にどう反映させるか。

例えば不動産業界であれば、

・新築偏重から既存住宅の活用へ
・エリア戦略の再構築
・コンパクトシティ化への対応
・外国人需要の取り込み

など、発想の転換が必要になります。

拡大市場ではなく、成熟・縮小市場でどう価値を生み出すか。

そこにビジネスの本質が移っていくでしょう。


身軽さが最大の武器になる

これから訪れる未来は、今とはまったく違う形をしているかもしれません。

だからこそ必要なのは、フレキシブルに動ける身軽さです。

頭の柔軟さ。
そして身体の軽さ。

過去の成功体験に縛られすぎないこと。
「これまでこうだったから」という思考から自由になること。

縮小する社会の中でも、チャンスは必ず存在します。
ただし、そのチャンスは従来型の延長線上にはないかもしれません。


未来は暗いのか

出生数70万人。
住宅着工74万戸。
死亡数160万人。

数字だけを見ると、確かに厳しい現実です。

しかし、未来は常に「今の延長」だけで決まるわけではありません。

技術革新、価値観の転換、国境を越えた人の移動。
さまざまな要素が複雑に絡み合い、社会は形を変えていきます。

拡大から縮小へ。
均一から多様へ。
所有から共有へ。

時代の流れを否定するのではなく、前提として受け入れる。

そのうえで、自分はどう動くか。


結びに

今年生まれた70万人の子どもたちが、20年後に社会に出る頃、日本はどんな国になっているでしょうか。

私たちは、その変化の途中にいます。

大きな流れを一個人で変えることは難しい。
しかし、その流れを前提に自分の立ち位置を変えることはできる。

データは悲観の材料にもなりますが、戦略の材料にもなります。

来る「今とは異なる未来」に向けて、
柔軟に、軽やかに動ける準備をしておく。

それが、縮小均衡の時代を生き抜くための、一つの答えなのかもしれません。

◻︎◻︎時事通信 出生70万人、10年連続最少 昨年、少子化止まらず―婚姻数は増加・厚労省
  https://www.jiji.com/jc/article?k=2026022600688&g=eco

【本日の一曲】
Breakbot – Mystery

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