2026 05 29

答えはいつもお客さん側にある

マクドナルドのコーヒー開発に学ぶ「売れる理由」

「マックのコーヒーが変わった」。

そんなニュース記事を読んで、ふと住宅や不動産の仕事と同じだなと思いました。

商品やサービスを提供する仕事には、業種を超えて共通する大切な原則があります。

それは――

答えはいつもお客さん側にある。

ということです。

これは簡単なようで、実はとても難しい話です。

私たちはつい、「自分が良いと思うもの=相手も良いと思うもの」と考えてしまいます。けれど現実は、そう単純ではありません。

どれほど供給側が自信を持って「良い商品だ」と思っていても、誰も望んでいなかったり、一部の人しか求めていなかったりすることは珍しくありません。

むしろ、そのズレこそが商売の難しさなのかもしれません。


世界一のバリスタが最初にしたこと

2008年に登場したマクドナルドの100円コーヒーは、大きな話題になりました。その後、再び品質改善に取り組む際に監修を任されたのが、世界一のバリスタ・井崎英典さんでした。

彼が最初にしたことは何だったか。

特別な焙煎技術でも、豆選びでもありません。

店に立ち、お客さんを観察すること。

ここが面白いところです。

井崎さんは当初、マクドナルドのコーヒーは単体で飲まれるか、アップルパイなどの甘いものと一緒に飲まれることが多いだろうと考えていたそうです。

ところが実際は違った。

もっとも多かったのは、ハンバーガーやポテトとのセット利用だったのです。

つまり、マクドナルドに必要だったのは「バリスタが感動するコーヒー」ではありませんでした。

ハンバーガーに合うコーヒー。

これが真実だったのです。

さらに店内で長く過ごす人も多いため、「冷めても味が落ちにくい」という価値も重要だった。

この発見によって、開発の方向性は大きく変わりました。

もし彼が試作品をその場で飲み比べ、「これが一番美味しい」と自分の感覚だけで決めていたらどうなっていたでしょう。

それはきっと、

「井崎英典にとって美味しいコーヒー」

でしかなかったはずです。


熟練者ほど陥る「自分基準」という落とし穴

この話は、コーヒーだけの話ではありません。

むしろ、住宅や不動産の仕事こそ当てはまる部分があります。

経験を積んだ人ほど、自分なりの成功体験を持っています。

もちろん経験は大切です。

ただ、ときにその経験が強い確信となり、無意識のうちに「自分基準」で提案してしまうことがあります。

「この間取りが絶対いい」
「この設備が人気」
「こうした方が住みやすい」

どれも間違いではありません。

けれど、それは本当にそのお客様にとっての正解でしょうか。

実際には、

・家事負担を減らしたい人
・子育てを優先したい人
・趣味の時間を大切にしたい人
・価格を最優先したい人
・将来の資産性を重視したい人

それぞれ価値観は違います。

プロが「最高」と思う提案が、お客様にとっては「そこまで求めていない」こともあります。

逆に、専門家から見るとシンプルに思える選択が、その人にとって最適解であることも少なくありません。

商売で難しいのは、良いものを作ることだけではなく、

“誰にとっての良さなのか”を見失わないこと

なのだと思います。


ヒットは偶然ではなく、観察から生まれる

マクドナルドのコーヒー成功の裏には、徹底した市場観察がありました。

「なぜお客さんはここで飲むのか」
「どんな場面で選んでいるのか」
「何に価値を感じているのか」

それを丁寧に見たからこそ、結果につながった。

これは非常に本質的な話です。

世の中には「自分のセンスで売った」と語られる成功談があります。

もちろん、突出した感性が時代を動かすこともあります。

ただ、多くの場合、本当は違います。

たまたま自分の価値観とターゲットの価値観が重なっていただけ――そんなケースも少なくありません。

それを「自分の実力」と勘違いすると、次の提案でズレが生まれます。

だからこそ、商売は常に初心に戻る必要があります。

お客様を知ること。

観察すること。

思い込みを疑うこと。

答えを自分の中に探さないこと。


答えは会議室ではなく、お客さんの中にある

住宅でも、不動産でも、飲食でも、サービス業でも。

結局のところ、商品やサービスの価値は提供側が決めるものではありません。

受け取る側が決める。

マクドナルドのコーヒー開発の記事を読みながら、そんな当たり前だけれど忘れがちな原則を改めて考えさせられました。

どんなに良い提案を考えるより先に、

「この人は何を望んでいるんだろう」

と考え続けること。

遠回りに見えて、実はそれが一番の近道なのかもしれません。

答えはいつも、こちら側ではなく――

お客さん側にあるのです。


◻︎◻︎ダイヤモンド オンライン 「マックのコーヒー」と「コンビニのコーヒー」の決定的な違い【世界一のバリスタが解説】
  https://diamond.jp/articles/-/385195

  井崎英典オフィシャルサイト
  https://hidenori-izaki.com/


【本日の一曲】
Minnie Riperton – Memory Lane

◻︎◻︎せとうち不動産 https://setouchi-fudosan.com/◻︎◻︎