2026 05 19

夜を走り、朝の讃岐へ。寝台特急「サンライズ瀬戸」で出会う香川という旅

2026年夏、日本で唯一の定期寝台特急「サンライズ瀬戸」が、今年も高松駅から琴平駅まで延長運転されます。東京駅を金曜・休前日に出発し、翌朝はこんぴらさんのお膝元・琴平へ。鉄道ファンはもちろん、旅好きにとっても胸が高鳴るニュースです。

いま、日本で毎日走る寝台列車は「サンライズ瀬戸・出雲」だけ。かつて全国を駆け巡ったブルートレインが姿を消したなかで、サンライズだけが走り続けています。
高松も出雲も「讃岐うどん」「出雲そば」と名物が”麺”なのは、ご縁を感じます。

なぜこの列車は生き残り、いまなお多くの人を惹きつけているのでしょうか。そして、なぜ今回の琴平延長運転が香川旅をさらに特別なものにするのでしょうか。


“移動”ではなく“旅”になる列車

現代の移動は速さが正義です。

東京から高松へは飛行機なら約1時間。新幹線とマリンライナーでも日中に到着できます。効率だけで考えれば、寝台列車は決して最速ではありません。

それでもサンライズ瀬戸にしかない価値があります。

それは、移動時間そのものが旅になること

東京駅21時26分発。

仕事帰りの人、旅行へ向かう人、鉄道好きの親子、ひとり旅の乗客──それぞれの思いを乗せて列車は夜の東京を離れます。

発車ベルが鳴り、ホームがゆっくり後ろへ流れていく瞬間。そこから始まるのは単なる移動ではありません。

部屋に荷物を置き、駅弁を広げる。ラウンジで缶ビール片手に流れる夜景を眺める。シャワーを浴びて、静かな個室で横になる。

飛行機では味わえない、“夜を旅する感覚”があります。

朝6時台の羽田空港へ向かう慌ただしさもなく、ホテルに一泊する感覚で眠っているうちに、列車は西へ西へと走っていく。

そして目が覚める頃、窓の外には瀬戸内の朝があります。

この時間の流れこそ、サンライズ最大の魅力なのかもしれません。

   ◻︎◻︎サンライズ瀬戸 編


サンライズが愛される理由

寝台列車が減った理由は明快です。

新幹線や航空網の発達、ビジネスホテルの普及、そして維持コスト。かつて東京―九州を結んでいた寝台特急「はやぶさ」「富士」も消え、夜行列車は歴史の1ページになりつつありました。

そんな中でサンライズが残った理由のひとつは、個室中心の快適性です。

昔の寝台列車を知る人なら、カーテンで仕切られた開放型B寝台を思い出すかもしれません。周囲の音や視線、揺れのなかで眠る体験は、旅情と引き換えに快適さを多少犠牲にしていました。

一方、サンライズはほぼ全室が個室。

暗証番号式の鍵が付き、コンセントや照明も整い、木の温もりを感じる内装はまるで小さなホテルです。

最上級の「シングルデラックス」は洗面台や専用シャワーまで備えたプレミアム空間。

「サンライズツイン」は友人同士や夫婦旅に人気。

最も部屋数が多い「シングル」は、夜空を眺めながら眠れる2階室も魅力です。

そして鉄道好きに人気なのが「ソロ」。

必要最低限の空間だからこそ感じる秘密基地感。包み込まれるような空間で、レールの音を聞きながら眠る時間は、むしろ贅沢です。

さらに「ノビノビ座席」は寝台料金不要で利用できるため、若い旅行者や鉄道旅入門にもぴったり。

予算や旅のスタイルに合わせて選べる自由度も、サンライズの強みでしょう。


岡山で分かれる“物語”

サンライズ瀬戸・出雲は14両編成で東京を出発し、岡山駅で7両ずつに分離します。

高松へ向かう「瀬戸」と、出雲市へ向かう「出雲」。

この分割シーンは鉄道ファンにとって見逃せない名場面です。

一つの列車が異なる土地へ、それぞれの旅人を運んでいく。

効率だけでは説明できない、鉄道らしいロマンがあります。

そして瀬戸編成は瀬戸大橋を渡り四国へ。

朝の光の中、海の上を走る時間は格別です。

   ◻︎◻︎サンライズ出雲 編


琴平延長運転が生む、香川旅の新しい入口

2026年夏の延長運転では、高松駅到着後に多度津・善通寺を経由し、8時39分に琴平駅へ到着します。

これは単なる運転区間延長ではありません。

香川旅の入口が変わるということです。

琴平といえば、こんぴらさんこと金刀比羅宮。

785段の石段を登った先に広がる景色、門前町の朝の空気、うどん店から漂う出汁の香り。

夜行列車で目覚め、そのままこんぴら参りへ向かう──そんな旅が現実になります。

しかも到着は朝。

丸一日、香川をたっぷり楽しめる。

父母ヶ浜や紫雲出山、瀬戸内の島々、讃岐うどん巡り、古い町並みやローカル線の旅まで。香川は決して「通過県」ではなく、ゆっくり味わうほど面白い土地です。


香川へ行く理由は、目的地だけじゃない

寝台列車は実用性だけで語れば、もう主役ではないのかもしれません。

でも、旅に必要なのは効率だけでしょうか。

夜の東京を出て、列車の揺れに身を任せ、瀬戸内の朝へ辿り着く。

その時間には、飛行機や新幹線では得られない余韻があります。

サンライズ瀬戸の琴平延長運転は、そんな“旅そのものの価値”を思い出させてくれるニュースです。

香川は目的地であると同時に、旅の余韻が似合う場所。

今年の夏は、夜を走る列車に乗って、朝の讃岐へ向かってみませんか。


◻︎◻︎ JRおでかけネット サンライズ瀬戸・出雲
  https://www.jr-odekake.net/railroad/train/sunriseseto_izumo/


【本日の一曲】
Thundercat – Drunk

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