丹下健三設計の「県営一宮団地」に行ってきました
「船の体育館」だけじゃない香川県の丹下健三建築
最近、仕事の関係で高松市一宮町へ行く機会が増えていたので、「県営一宮団地」を見学してきました。
建築に興味のある方ならご存じだと思いますが、この団地は世界的建築家・丹下健三氏が関わった住宅団地です。
丹下健三といえば、最近では解体問題で大きな話題となった「船の体育館(旧香川県立体育館)」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
香川県には実は丹下健三が手掛けた建築がいくつも残されています。
代表的なものとして、
・香川県庁舎東館(旧本館)
・旧香川県立体育館(船の体育館)
・香川県営住宅一宮団地
があります。
どれも時代を超えて評価される名建築ですが、その中でも一宮団地は今も現役で人が暮らしている建築として非常に興味深い存在です。
見た時の印象は「未来感」
実際に久々に現地を訪れてまず感じたのは、
「なんだか未来に来たみたい」
という不思議な感覚でした。
県営住宅というと、どうしても機能優先でシンプルな建物をイメージしがちです。
しかし一宮団地は全く違います。
住棟が道路に対して斜めに配置され、一般的な団地にはない独特のリズム感があります。
歩いているだけで景色が変化し、どこか海外の住宅地を歩いているような感覚になります。
さらに細かな部分も面白く、棟番号の表示にはドットデザインが採用されています。
こうした細部へのこだわりを見ると、「ただ住むための箱」ではなく、「暮らしをデザインする建築」として計画されたことが伝わってきます。

実は1950年代から続く団地の歴史
現在の一宮団地は1980年代に整備された部分が中心ですが、その歴史はもっと古く、1958年から1964年にかけて整備された県営住宅団地が始まりです。
当時は東京大学丹下健三研究室が基本設計を担当し、スターハウスと呼ばれる特徴的な集合住宅などが建設されました。
しかし時代の変化とともに住宅の老朽化が進み、1980年代に大規模な建て替えが行われます。
その際に再び丹下健三・都市・建築設計研究所が計画に関わり、現在の街並みが生まれました。
つまり一宮団地は、
「戦後日本の住宅政策」
「団地建築の進化」
「丹下健三の都市計画思想」
が詰まった場所でもあるのです。
なぜ住みやすそうに感じるのか
一宮団地を歩いていて印象的だったのは、建物そのものよりも空間の作り方です。
住棟の裏側には「緑の広場」と呼ばれる大きな緑地空間があります。
公園や遊歩道が整備され、歩行者と車の動線も分離されています。
また住戸ごとに専用の庭や専用階段が設けられており、集合住宅でありながら戸建て住宅のような独立性を確保しています。
団地というと隣家との距離が近く、プライバシーが少ないイメージがありますが、一宮団地では住棟を45度振って配置することで視線が重なりにくくなっています。
建物同士の距離も一般的な団地より大きく取られており、圧迫感を感じません。
今から40年以上前に計画された住宅地とは思えないほど、現代的な考え方が取り入れられています。

住宅の本質は「建物」より「街並み」かもしれない
不動産の仕事をしていると、多くの方が住宅の間取りや設備に注目されます。
もちろんそれも大切です。
しかし一宮団地を歩いていると、住み心地を左右するのは建物だけではなく、
「街全体の設計」
なのだと改めて感じます。
道路の幅。
緑の配置。
歩行者の安全性。
近隣との距離感。
こうした要素が積み重なって、暮らしやすい街並みが形成されていきます。
近年ではコンパクトシティやウォーカブルな街づくりなどが注目されていますが、一宮団地にはそうした考え方につながるヒントが数多く残されているように感じました。

建築好きなら一度は見ておきたい場所
香川県には建築ファンが全国から訪れる香川県庁舎や船の体育館があります。
しかし一宮団地は観光施設ではないため、意外と知られていません。
それでも実際に訪れてみると、丹下健三が住宅団地に込めた思想や、豊かな住環境への工夫を感じることができます。
しかも現在も多くの方が暮らしている「生きた建築」です。
建築好きの方はもちろん、
・まちづくりに興味がある方
・住宅設計に興味がある方
・団地建築が好きな方
にはぜひ一度見ていただきたい場所です。
もちろん見学の際は、現在も住民の方が生活されている住宅地ですので、マナーを守りながら静かに散策してください。
高松市の郊外に残る丹下健三の名作。
香川県にはまだまだ知られていない建築の魅力がたくさんありますね。
◻︎◻︎文化庁 香川県営住宅一宮団地
https://www.bunka.go.jp/kindai/kenzoubutsu/research/kagawa/023/index.html
TANGE建築都市設計 Ichinomiya Housing Project
https://www.tangeweb.com/works/works_no-23/
【本日の一曲】
Pizzicato Five – This Year’s Girl
◻︎◻︎せとうち不動産 https://setouchi-fudosan.com/◻︎◻︎