2026 06 16

伊吹島の夏が始まる ― 今年も「伊吹いりこ」の季節がやってきた

香川県観音寺市の沖合に浮かぶ伊吹島。讃岐うどん好きなら一度は耳にしたことがある「伊吹いりこ」の産地として知られるこの島で、今年もカタクチイワシ漁が解禁されました。

毎年6月中旬になると始まる伊吹島のいりこ漁。島にとっては夏の訪れを告げる風物詩であり、香川県の食文化を支える大切な産業でもあります。

今年も瀬戸内海の燧灘(ひうちなだ)に漁船が出航し、讃岐うどんのだしに欠かせないカタクチイワシの水揚げが始まりました。

しかし、今年の漁は例年とは少し違う課題を抱えながらのスタートとなっています。


讃岐うどんを支える「伊吹いりこ」

香川県民にとって、うどんのだしは単なるスープではありません。

その味を支えている重要な存在が「伊吹いりこ」です。

伊吹いりことは、伊吹島沖で獲れたカタクチイワシを島内で加工した煮干しの総称です。

全国各地で煮干しは作られていますが、伊吹いりこが高く評価される理由はその鮮度にあります。

カタクチイワシは非常に傷みやすい魚です。

一般的には漁場から港まで運び、さらに加工場へ運搬する時間が必要ですが、伊吹島では漁場と加工場が驚くほど近い場所にあります。

漁獲されたイワシは高速運搬船によってすぐに加工場へ運ばれ、そのまま釜で茹でられます。

このスピードこそが、雑味の少ない上質なだしを生み出す最大の秘密です。

さらに、漁獲から加工までを「網元」が一貫して行う体制も伊吹島ならでは。

長年培われた経験と技術によって、高品質な伊吹いりこが生産され続けています。


初日の漁獲量はやや厳しいスタート

今年の漁解禁初日。

地元網元の話によると、昨年よりは良いものの、例年と比較すると漁獲量は半分以下とのことでした。

自然相手の仕事だけに毎年状況は異なります。

海水温の変化や潮流、プランクトンの量など様々な要因が漁獲量に影響します。

それでも今年獲れたイワシの品質については評価が高く、

「今年のいりこはうどんだしにちょうど良い」

という声も聞かれています。

量だけでなく質も重要な伊吹いりこ。

これから9月中旬まで続く漁の中で、どのようなシーズンになるのか注目されます。


重油高騰が漁業を直撃

今年の漁で大きな課題となっているのが燃料費の高騰です。

近年の世界情勢の影響を受け、船や乾燥機に使用する重油価格は大幅に上昇しています。

漁業は想像以上に燃料を消費する産業です。

漁船を動かすだけでなく、漁獲した魚を加工するためのボイラーや乾燥機にも多くのエネルギーが必要になります。

報道によると、重油価格は前年と比較してリットルあたり約60円上昇。

一日あたりのコスト増加は30万〜50万円にもなるそうです。

そのため、今年は燃料費を抑えるために予定より早く漁を切り上げた網元もありました。

私たちはスーパーでいりこを購入したり、うどんを食べたりするだけですが、その裏側では漁業者の皆さんがこうした大きな負担を抱えながら仕事を続けています。

食卓に並ぶ一杯のうどんの向こう側には、こうした現場の努力があることを改めて感じます。


「伊吹いりこ」はなぜブランドになったのか

伊吹いりこは全国的にも評価の高いブランドです。

サイズによって

  • 大羽
  • 中羽
  • 小羽
  • カエリ

という銘柄に分けられています。

特に讃岐うどん店では、それぞれの特徴を活かして使い分けることもあります。

だし用としてはもちろんですが、実は伊吹いりこの楽しみ方はそれだけではありません。


だしだけじゃない伊吹いりこの魅力

地元では昔からいりこをそのまま料理に使う文化があります。

いりこ飯

頭と内臓を取り除いたいりこを油揚げやこんにゃくと一緒に炊き込む郷土料理です。

炊き上がったご飯にはいりこの旨味がしっかり染み込み、シンプルながら深い味わいがあります。

いりこの天ぷら

そのまま衣をつけて揚げるだけ。

外はサクサク、中はいりこの旨味が凝縮され、お酒のおつまみにもぴったりです。

いりこ酒

炙ったいりこを湯呑みに入れ、熱燗を注ぐ昔ながらの楽しみ方。

香ばしい風味が日本酒に溶け込み、寒い季節にはたまらない一杯になります。


地域の宝を未来へ

観音寺市で暮らしていると、伊吹いりこはとても身近な存在です。

しかし、全国的に見るとこれほど高品質な煮干しを安定して生産できる地域はそう多くありません。

一方で漁獲量の減少や燃料費高騰、後継者不足など、漁業を取り巻く環境は決して楽観できる状況ではありません。

だからこそ、地元の私たちがその価値を知り、応援していくことが大切なのだと思います。

今年も始まった伊吹島のカタクチイワシ漁。

これから9月中旬まで、島では毎日のように漁船が行き交い、加工場からは湯気が立ち上ります。

讃岐うどんを支える名脇役であり、観音寺が誇る地域資源でもある「伊吹いりこ」。

うどんを食べるとき、だしの香りを感じながら、ぜひ伊吹島の海や漁師さんたちの姿にも思いを馳せてみてください。

きっといつもの一杯が、少し特別なものに感じられるはずです。


◻︎◻︎観音寺市 かんおんじの伊吹いりこ
  https://www.city.kanonji.kagawa.jp/soshiki/21/13865.html

  観音寺観光協会観光ガイド いりこ・海産物
  https://kanonji-kanko.jp/category/gift/seafood/

  KSB 伊吹島でカタクチイワシ漁が解禁 重油高騰で早めに漁をきりあげる網元も 香川・観音寺市
  https://news.ksb.co.jp/article/16644592


【本日の一曲】
Hugel – Jamaican (Bam Bam)

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