2026 08 07

「帰省」が当たり前ではなくなる時代。変わる暮らしと、変わらない地域の価値について考える

お盆が近づくと、高速道路の渋滞予測や新幹線の混雑状況がニュースになります。

一方で近年は、「今年は帰省しない」「オンラインで顔を見せるだけ」という家庭も増え、「帰省離れ」という言葉を耳にする機会も多くなりました。

先日、「帰省という習慣は1960年代以降に生まれた比較的新しい文化であり、今ではその意味が薄れつつある」という宗教学者のコラムを読み、とても興味深く感じました。

「帰省は日本の伝統」というイメージを持っていましたが、実は歴史的にはそれほど古い習慣ではないという視点は、新鮮な驚きでした。


帰省ブームは高度経済成長が生んだ文化

戦後、日本は高度経済成長期を迎え、多くの若者が地方から都市部へ就職や進学で移り住みました。

その頃に東海道新幹線や高速道路が整備され、お盆やお正月に実家へ帰ることが現実的になります。

さらに企業も一斉に長期休暇を設けるようになり、「故郷へ帰る」というライフスタイルが定着していきました。

つまり、帰省は何百年も続く文化というより、戦後の社会構造や交通網の発達によって広まった習慣だったというわけです。

当時は、都会で働くこと自体が一種のステータスでもあり、故郷へ帰ることは家族や地域へ近況を報告する特別な意味もありました。


習慣は「当たり前」ではなく、社会とともに変わる

人は、生まれたときにすでに存在しているルールや習慣は、あまり疑問を持たず受け入れることが多いものです。

一方で、自分が大人になってから新しくできたルールには、「昔は違ったのに」と抵抗を感じることもあります。

しかし、歴史を振り返ると、世の中の「常識」は驚くほど変化しています。

例えば数十年前は、お酒やたばこを楽しむことが「大人らしい」「かっこいい」とされる時代がありました。

ところが現在では、健康を意識し、お酒やたばこを控えるライフスタイルの方が支持される場面も増えています。

つまり、私たちが「常識」だと思っていることは、その時代の社会や価値観によって形づくられているに過ぎません。


コロナが教えてくれた「習慣は変わる」という事実

そのことを最も実感した出来事が、新型コロナウイルスではないでしょうか。

感染拡大を防ぐため、人との接触が制限され、帰省や旅行、地域のお祭り、会食など、多くの「当たり前」が一時的になくなりました。

それまで何十年も続いていた習慣が、ほんの数年で大きく変わったことに、多くの人が驚いたはずです。

そして収束後も、すべてが元に戻ったわけではありません。

リモートワークやオンライン会議が定着したように、一度変化した価値観は、そのまま新しい生活様式として根付くこともあります。

習慣とは、意外にも柔軟なものなのだと改めて感じます。


三世代で常識は変わる

よく「一世代は約30年」と言われます。

30年が3回積み重なると約90年。

つまり三世代が入れ替わる頃には、当時を知る人がほとんどいなくなり、「記憶」は途切れていきます。

もちろん歴史や記録は残ります。

しかし、人から人へ伝わる「当たり前」は少しずつ変化し、新しい常識へと置き換わっていきます。

だからこそ、昔は絶対だったルールも、100年後には全く違うものになっているかもしれません。

私たちが疑うことなく受け入れている価値観も、未来では「昔はそんな考え方だったんだ」と驚かれる日が来るのでしょう。


不動産も「変化」を見極めることが大切

不動産の仕事をしていても、この変化は強く感じます。

以前は「実家は必ず子どもが継ぐもの」という考え方が一般的でした。

しかし現在では、子どもは都市部で暮らし、実家へ戻らないケースも珍しくありません。

その結果、空き家が増え、相続や「墓じまい」と同じように、「実家をどうするか」という相談も年々増えています。

一方で、テレワークの普及や働き方の変化によって、地方移住や二地域居住という新しい暮らし方も広がっています。

同じ「住まい」であっても、求められる価値は時代によって変わり続けているのです。


諸行無常。変化を受け入れることが未来につながる

仏教には「諸行無常」という言葉があります。

この世のすべては変化し続け、永遠に同じものは存在しないという考え方です。

習慣も、常識も、住まいの価値も、人々の暮らし方も、時代とともに少しずつ姿を変えていきます。

だからこそ、「昔はこうだった」と過去に執着するのではなく、「今、社会はどう変わっているのか」「これから何が求められるのか」を見つめることが大切なのではないでしょうか。

変化は不安でもありますが、新しい可能性を生み出すきっかけでもあります。

時代の流れを受け止めながら、その時々で最善の選択を積み重ねていくこと。

それが、暮らしにおいても、不動産においても、そして人生そのものにおいても、変化の時代を生き抜くために最も大切なことなのだと感じています。


◻︎◻︎PRESIDENT Online そりゃ”帰省離れ”が加速するはずだわ…宗教学者が「帰省も墓参りも単なるブームだった」と断言するワケ
  https://president.jp/articles/-/116614


【本日の一曲】
YURUFUWA GANG – Ms.Groove & Mr.Freaky

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