【植物のある暮らし・梅編 梅の季節がやってきました】

最近、庭の果物の話が続いてしまってすみません(笑)。でも、季節ごとに変わる庭の景色や実りは、やっぱり記録しておきたくなるものです。今回は、梅のお話を少しさせてください。
わが家の梅の木は、庭の隅のほうに控えめに立っています。枇杷や柿の木に比べると幹も細く、枝ぶりもどこか控えめ。でも春先、薄紅色の花をふわりと咲かせる姿は毎年本当に見事で、「ああ、春が来たんだな」と感じさせてくれます。
5月の終わり頃から、花のあとに少しずつ小さな実が見え始め、6月に入るとぷっくりと丸みを帯びてきます。とはいえ、枇杷に比べると実の数はやはり少なめ。わが家の梅はあまり欲張らず、毎年10個か20個くらい、ほどよい数の実をつけます。その分、ひとつひとつがより愛おしく感じられるのかもしれません。
今年は春先に風の強い日が多かったせいか、花の時期に受粉がうまくいかなかったようで、例年よりもさらに控えめな数の実がついています。それでも、日ごとに膨らんで色づく様子を見ていると、「今年もありがとう」という気持ちが自然とわいてきます。
梅の実といえば、真っ先に思い浮かぶのは梅干しや梅酒でしょうか。わが家では、毎年ほんの少しだけ梅酒を漬けています。手のひらでそっと包み込むと、まだ青い梅からはほのかな香りが立ちのぼり、それだけで初夏の空気を感じられる気がします。収穫したその日の夕方、静かな台所で梅を一粒ずつ水で洗い、丁寧にヘタを取ってホワイトリカーと氷砂糖と一緒に瓶に詰める――このひと手間が、とても贅沢な時間に思えます。
もちろん、梅の実を育てるまでの過程にも楽しみがあります。実が膨らんできた頃から、鳥たちがそわそわと集まってくるのです。朝、窓を開けるとヒヨドリやメジロの声が賑やかで、「あ、そろそろかな」と思わされます。せっかくなので、今年は数個だけ鳥たちにおすそわけすることにしました。実をつつく姿を眺めるのも、なかなか楽しいものです。
それからもうひとつ。梅は、収穫だけでなく「待つ時間」そのものがいいのだなと改めて感じます。マンゴーや枇杷のように毎日の変化が大きいわけではありませんが、枝先の小さな実が少しずつ大きくなっていく様子を見守るうちに、こちらの心もゆったりとした気持ちになっていきます。自然のペースに合わせて過ごす時間というのは、日々の忙しさの中でとても貴重なものですね。
この時期、庭に出ると梅の木の下に心地よい木陰ができます。そこで少しの間腰をおろし、風の音や鳥の声を聞きながら、今年の梅酒の出来を想像したり、梅の花が咲いていた頃のことを思い返したりするのも、私にとってはささやかな贅沢です。
梅の収穫は、あと1週間ほどでピークを迎えそうです。今年も梅酒を仕込んだら、少しだけ塩漬けにして梅干しにも挑戦してみようかと考えています。保存食を自分の手で作るというのは、少しハードルが高いように思えますが、毎年少しずつ挑戦しているうちに、だんだん楽しみになってきました。
今回も、そんな庭からの小さな報告でした。次はまた、別の植物の様子もお届けしたいと思います。それではまた。
【本日の一曲】
The Beach Boys / Wouldn’t Be Nice