2025 06 15

新築住宅・中古住宅を検討する際に知っておきたい建物の地震に対する強さ

                    [熊本地震(2016年)における木造建物の建築時期別の被害状況]

新耐震基準・旧耐震基準・耐震等級の違いと確認ポイント

日本は地震大国です。2011年の東日本大震災以降も震度7の地震が約5回、震度6の地震が30回以上発生しており、家づくりや住まい選びの際に「耐震性」は欠かせない要素です。今回は、新耐震基準や旧耐震基準、耐震等級の違いを中心に、地震に強い家づくりのポイントを解説します。

耐震基準とは?

耐震基準は、建物が地震で倒壊しないことを目的とした設計基準です。建築基準法で定められた最低限のルールであり、大地震で建物の倒壊や崩壊を防ぎ、人命を守ることが目的です。

特に1981年6月以降に導入された「新耐震基準」は、震度6強〜7の大地震でも倒壊しないことを求めるもので、現在の建物の耐震設計の基本になっています。それ以前は「旧耐震基準」と呼ばれる基準が用いられていました。

旧耐震基準と新耐震基準の違い

旧耐震基準(1950年~1981年5月まで)

旧耐震基準は1950年の建築基準法制定とともに導入されました。当時の地震に関する知見や建材・工法に基づいたもので、震度5程度の中規模の地震で建物が倒壊しないことが目安とされていました。しかし、震度6以上の大地震はほとんど想定されておらず、「建物が大地震で損傷しても仕方ない」という前提に立っていたといえます。

具体的には、建物の耐震設計において壁の量や配置のバランス、接合部の強度に関する規定が緩く、大地震が発生すると倒壊や大破のリスクが高いものでした。

新耐震基準(1981年6月~)

1978年の宮城県沖地震での甚大な被害を受け、耐震基準は大きく見直され、1981年に新耐震基準が施行されました。この基準では、震度6強から7程度の大地震でも建物の倒壊や崩壊を防ぎ、人命を守ることが目的とされています。

特徴的なポイントは次の通りです:

  • 震度5程度の中地震では損傷しない(軽微なひび割れ程度)
  • 震度6強〜7の大地震では倒壊・崩壊しない
  • 建物の構造計算に「許容応力度計算」「保有水平耐力計算」を導入し、構造的な信頼性を向上

さらに、1995年の阪神・淡路大震災を経て2000年には「2000年基準」とも呼ばれる木造住宅向けの強化基準が加わり、地盤調査の義務化、柱・土台の接合部の金物の仕様の細分化、耐力壁の配置バランス(四分割法)などが導入されました。

被害データから見る旧耐震と新耐震の違い

過去の大地震において、旧耐震基準と新耐震基準で建てられた建物の被害には明確な差があります。

熊本地震(2016年)

熊本地震では、震度7の揺れが2度発生し、多くの木造住宅が被災しました。特に被害の大きかった益城町のデータは以下の通りです。

  • 旧耐震基準(1981年以前):倒壊率28.2%
  • 新耐震基準(1981年〜1999年):倒壊率8.7%
  • 2000年基準以降:倒壊率2.2%

新耐震基準の住宅であっても、倒壊や大破はゼロではなく、大地震の揺れにさらされれば損傷を受ける可能性があることが分かります。

能登半島地震(2024年)

2024年元日の能登半島地震でも同様です。震度7の激しい揺れにより、多くの住宅が被害を受けました。

  • 旧耐震基準:倒壊率19.4%
  • 新耐震基準:倒壊率5.4%
  • 2000年基準以降:倒壊率0.7%

こうしたデータから、旧耐震基準の住宅は大地震での倒壊リスクが高く、新耐震基準の住宅でも耐震等級や設計の質によって被害の程度が変わることが分かります。

新耐震基準だけで安心できる?耐震等級の重要性

新耐震基準はあくまで最低限の基準であり、「人命を守ること」が目的です。倒壊は防げても、建物が損傷すればその後の生活に深刻な影響を及ぼします。

そこで注目したいのが「耐震等級」です。耐震等級は1〜3まであり、

  • 耐震等級1:新耐震基準相当
  • 耐震等級2:耐震等級1の1.25倍の耐震性能
  • 耐震等級3:耐震等級1の1.5倍の耐震性能

熊本地震では、耐震等級3の住宅の多くが無被害、もしくは軽微な損傷にとどまりました。新耐震基準の住宅であっても等級3であれば、被災後も安心して住み続けられる可能性が高まります。

地震に強い住まいの選び方

新築・中古を問わず、耐震性を確認する際は以下を意識しましょう:

  • 建物の建築時期(1981年以降か、できれば2000年基準以降か)
  • 耐震等級(等級3がおすすめ)
  • 構造計算・地盤調査の実施状況

まとめ

地震の多い日本では、住まいの耐震性は家族の命と暮らしを守るための最優先事項です。旧耐震基準の住宅は補強を前提に、新築は耐震等級3以上を目指すのが安心です。住まい選びの際は、ぜひ耐震性をしっかり確認しましょう。

■■出典:国土交通省 住宅局 /「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント
     https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf

【本日の一曲】
Mac Miller / Good News