水不足の今、香川用水の水のルーツを考える
「当たり前に水が出る」暮らしを支えている、香川の水のルーツ
今年の夏も、暑い日が続いています。
そして、香川県でこの時期になると気になるのが「水」のこと。
香川県民にとってはおなじみのニュースですが、今年は高知県にある「四国の水がめ」こと早明浦ダムの貯水率が急速に低下しています。
8月3日には第1次取水制限、10日には第2次取水制限、そして19日からは第3次取水制限へ。
第3次取水制限では、吉野川から香川用水へ送られる水が通常より50%削減されています。
8月23日午前6時の貯水率は29.9%。平年の80.7%と比べると、かなり低い水準です。
今後2~3週間の雨が大きなポイントになると言われています。台風などでまとまった雨が降れば一気に回復する可能性もありますが、少雨が続けば、さらに厳しい状況になる可能性もあります。
そこで今回は、香川県民の生活を支えている「香川用水」について、改めてその仕組みを考えてみたいと思います。
「香川用水50%削減」=水道が50%になる?
「香川用水への供給が50%削減」と聞くと、
「じゃあ、家庭で使える水も半分になるの?」
と思ってしまいますよね。
実際には、そういう意味ではありません。
香川用水から供給される水は、私たちの水道だけではありません。
農業用水、上水道用水、工業用水として利用されています。
さらに香川県には、県内のダムや地下水、そして何といっても数多くの「ため池」があります。
香川県には、先人たちが築いてきた1万4,600余りのため池があるとされています。
雨が少なく、大きな河川にも恵まれていない香川県では、昔から「水をどう確保するか」が大きな課題だったのです。
そのため、現在の取水制限も、いきなり家庭の水道を半分にするという話ではなく、県内のさまざまな水源を活用しながら、できるだけ早明浦ダムの水を長持ちさせるための対策と考えることができます。
ただし、さらに状況が悪化すれば話は変わってきます。
過去には香川用水への供給が大幅に削減され、節水の強化や減圧給水、時間給水などが行われたこともあります。
そもそも「香川用水」はどこから来ている?
香川用水の水源は、高知県にある早明浦ダムです。
早明浦ダムに蓄えられた吉野川の水は、吉野川へ放流された後、徳島県の池田ダムでせき上げられます。
そこから取水され、約8kmの阿讃導水トンネルを通って香川県へ。
阿讃山脈をトンネルで抜け、旧財田町付近まで運ばれた水は、そこから県内を東西に延びる幹線水路を通って、香川県各地へ届けられます。
つまり、私たちが普段何気なく使っている水の一部は、
高知県 → 徳島県 → 香川県
という長い旅をしてやってきているわけです。
香川用水によって計画的に導水される水は、年間約2億4,700万トン。
その内訳は、農業用水が約1億500万トン、上水道用水が約1億2,210万トン、工業用水が約1,990万トンとされています。
まさに香川県の暮らしと産業を支える「ライフライン」です。
香川用水は「24年」をかけて造られた
香川用水は、決して簡単に造られたものではありません。
その背景には、長年にわたる讃岐の人々の「水が欲しい」という悲願がありました。
香川県は瀬戸内海式気候で、年間降水量が少なく、県内には大きな河川もありません。
そのため、昔から雨が少ない年には農業用水の確保が大きな問題となっていました。
そこで先人たちは、数多くのため池を築いてきました。
それでも十分ではなく、県外から水を引くという大規模な計画が進められます。
昭和25年に「吉野川総合開発計画案」が発表され、その後、早明浦ダムの建設や香川用水事業が進められました。
そして昭和49年5月30日に香川用水の共用区間が通水。
昭和50年には本格通水、昭和53年には全線通水となりました。
計画から完成まで、実に長い年月です。
しかも阿讃山脈を貫く8kmの導水トンネルは、硬い岩盤を掘り進める大工事。
早明浦ダム、池田ダム、導水トンネル、そして県内の幹線水路。
たくさんの人の技術と労力によって、現在の「香川の水」が作られています。
香川の「水不足」は昔話ではない
早明浦ダムの渇水は、今回が初めてではありません。
特に有名なのが1994年の大渇水。
空梅雨と猛暑が重なり、早明浦ダムの利水貯水率は0%となりました。
香川県では約76万人が給水制限の影響を受け、地域によっては1日のうち水道を使える時間を制限する「時間給水」も行われました。
その後も2005年、2008年などに深刻な渇水が発生しています。
そして2022年には、貯水率0%にはならなかったものの、取水制限が一時的な解除を含めて215日間に及びました。
渇水というと「ダムの水が何%残っているか」に目が行きますが、実は「どれだけ長く続くか」も非常に重要なんですね。
「水が出る」は当たり前ではない
私たちは蛇口をひねれば水が出ることを、普段ほとんど意識していません。
料理をして、洗濯をして、お風呂に入り、トイレを使う。
農業では作物を育て、工場では産業活動に水を利用する。
そんな当たり前の暮らしの裏側には、早明浦ダムから香川用水、そして県内の水路やため池へとつながる大きな水のネットワークがあります。
そして、そのネットワークができるまでには、長い年月と多くの人の努力がありました。
今回の渇水をきっかけに、改めて「香川用水って、すごい仕組みなんだな」と感じます。
もちろん、まとまった雨が降れば状況は大きく変わります。
だからこそ、今は必要以上に不安になるのではなく、できる範囲で節水を意識する。
そして、この夏をきっかけに、普段何気なく使っている「水」がどこからやって来ているのかを、少し考えてみる。
香川用水は、まさに**四国4県の「友情の水」**ともいえる存在です。
当たり前のように蛇口から出てくる水。
その一滴一滴の向こう側には、高知・徳島・香川をつなぐ長い物語があります。
今年の夏は、そんな「水の旅」に少し思いを巡らせながら、いつもより少しだけ水を大切に使ってみたいと思います。
◻︎◻︎香川県 香川用水の概要
https://www.pref.kagawa.lg.jp/tochikai/yousui/yousui_gaiyou.html
香川県 かがわの水 KAGAwater
https://www.pref.kagawa.lg.jp/mizusigen/mizu/kfvn.html
【本日の一曲】
Terri Lyne Carrington – TLC And Friends
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