2025 06 17

公共事業での「立ち退き」  実際には「収用」?

今、お客様からご相談を受けて進めている話の中で公共事業の関係で「立ち退き」になる案件があります。
よくニュースや日常会話で「立ち退き」という言葉を耳にしますが、法律的には「収用」という言葉が使われます。

今回は「立ち退き」と「収用」の違いや、収用があった場合に受けられる税制上の特例、そして住まい探しや解体といった実務面についてもわかりやすく解説します。


「立ち退き」と「収用」の違いとは?

どちらも「住んでいる場所や使っている土地・建物から移動すること」を意味しますが、背景や強制力が異なります。

立ち退きは主に賃貸借契約に基づくもので、大家さんの都合や建物の老朽化、再開発などの「正当な理由」により借家人に退去を求める場合に使われます。この場合、話し合いや訴訟を経て退去が進められ、補償も賃貸契約の内容や個別交渉によって決まります。

一方で収用は、国や自治体などが公共事業のために法律に基づき土地や建物を強制的に取得する手続きです。例えば道路建設や河川改修などの事業で必要になった場合、土地所有者の同意がなくても一定の手続きを経て進められます。補償金の支払いや税制上の特例も法律に基づいて行われます。

日常的にはどちらも「立ち退き」とひとくくりにされることが多いですが、法的な意味合いやその後の対応、受けられる補償・特例は大きく異なります。


収用に伴う税制上の特例とは?

公共事業のために土地や建物を収用された場合、所得税の面で次の2つの特例を受けることができます。

1. 収用等に伴う代替資産を取得した場合の課税の特例(買換えの特例)

これは、収用などで得た対価で別の土地や建物を購入した場合に、譲渡所得の課税を将来に繰り延べることができる制度です。条件を満たせば、その年の譲渡については「なかったもの」として扱われます。新たに購入した資産の価格が収用で得た金額より少ない場合は、その差額分のみが譲渡所得として課税対象になります。

この特例を受けるには、次の条件を満たす必要があります。

  • 売った土地・建物が固定資産であること
    (不動産業者が販売目的で持っているものは対象外です)
  • 原則として同じ種類の資産を買い換えること
    (土地なら土地、建物なら建物)
  • 原則、収用の前年・当年・翌々年の一定期間内に代替資産を取得すること

2. 譲渡所得から最高5,000万円までの特別控除の特例

代替資産の買換え特例を使わない場合、最高5,000万円まで譲渡所得から控除できる特例です。この特例を使うには、次の要件があります。

  • 売った土地・建物が固定資産であること
  • 代替資産の買換え特例を利用していないこと
  • 公共事業の施行者から最初に買取等の申し出を受けてから6か月以内に譲渡すること
  • その申し出を受けた本人またはその相続人が譲渡すること

どちらの特例も、確定申告の際に必要な書類を添えて申告する必要があります。受けられる特例は状況により異なりますので、専門家と相談しながら手続きを進めることが重要です。


収用が決まったら必要な準備

収用が決まった場合、金銭的な補償だけでなく、生活の再建に向けた準備が必要です。具体的には次のようなことがあります。

  • 新たな住まい探し
    収用によって住まいを失う場合、新しい住居の確保が最優先です。希望のエリア、価格、入居可能時期などの条件を整理し、早めに行動することが大切です。
  • 既存建物の解体や手続き
    収用では建物の解体や土地の明け渡しが必要になります。解体業者の手配や行政手続きなど、煩雑な作業も出てきます。
  • 売却・補償のスケジュール管理
    収用の日程、補償金の受取時期、代替資産の取得時期など、税制特例の適用を逃さないようスケジュール管理も重要です。

せとうち不動産ができるお手伝い

せとうち不動産では、このような収用に関わる一連の手続きを総合的にサポートしています。新たな住まい探し、土地・建物の売却・解体、税制特例の確認や必要書類の準備など、不安や負担を少しでも軽くできるようお手伝いいたします。

収用は人生の中でそう何度も経験することではありません。だからこそ、正しい知識と計画で備えることが大切です。もし公共事業による収用のお話が進んでいる方、今後の見通しに不安を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

【本日の一曲】
George Benson / Breezin’