「ユスリカ大量発生」から考える、住まい選びの“見えないリスク”

2025年の大阪・関西万博で、思いもよらぬ形で話題になったのが「ユスリカの大量発生」というニュースです。
会場周辺に無数に舞うユスリカに対し、薬剤散布などの対応が取られているという報道がありました。
ユスリカは人を刺すわけではありませんが、姿かたちは蚊によく似ていて、しかも群れで発生するため、心理的な不快感はとても大きいもの。SNSでも「洗濯物が干せない」「網戸を開けるのが怖い」といった声が多数あがっていました。
そして、この問題は「一時的な来場者の困惑」だけにとどまらず、近隣マンションの購入者にとっては、生活そのものを脅かす深刻な事態となっているようです。
見落としがちな「周辺環境」のリスク
今回の弁護士ドットコムの記事では、「ユスリカ被害にあった購入者が、販売業者に何かしらの責任を問うことができるのか?」という法律的な視点から問題を整理してくれています。
結論から言えば、マンションそのものに物理的な欠陥がない限り、ユスリカのような“周辺環境による不快”は、原則として契約不適合にはあたらず、売主側に対応を求めることは難しいということでした。
つまり、「虫が多いかどうか」や「匂いや騒音があるかどうか」など、自然環境に由来する部分は、「買う側の自己判断」に任されているというのが現実です。
これは、不動産に関わる私たちにとっても、そしてこれから家を買おうとしている方々にとっても、改めて考えさせられるポイントです。
家そのものだけでなく、“暮らしの質”を見る
不動産購入を検討する際、多くの方は「駅からの距離」「建物の築年数」「価格」「間取り」といった条件に目を向けます。もちろん、それらもとても大切です。
でも、実際に暮らしが始まると、生活の快適さを左右するのは「目に見えにくい要素」だったりします。
・どんな虫が出るのか?
・水辺や森が近いのか?
・風の通り道になっているか?
・においや音は?
・朝の通学路は安全か?
こうした「細かいけれど大事なこと」は、チラシやネット情報ではなかなか伝わりません。そして、売主側にはそれらを調査・報告する義務も基本的にはありません。
「買う前に足を運ぶ」ことの意味
今回のユスリカ問題を見て思ったのは、「住まいは建物だけではなく、環境も含めて初めて“暮らし”になる」ということです。
もし可能であれば、物件を見に行くときは、朝・昼・夕方など、時間帯を変えてみる。雨の日や風の強い日など、天気が違うとどう感じるかを確認してみる。近くを歩いてみて、どんなお店があるのか、どんな人が住んでいるのか。そういったことを自分の目と耳と肌で感じることが、本当の意味での“納得の住まい選び”につながります。
不動産屋としての役割
今回のようなニュースを目にすると、不動産を紹介する立場の私たちとしても、「目に見える情報だけでなく、暮らしの“気配”や“雰囲気”を伝える」ことの大切さを痛感します。
そして、お客さまが気になっている点があれば、それを一緒に調べたり、できるだけ率直にお話すること。ときには「虫が多いかもしれませんよ」とお伝えするのも、誠実な仕事のひとつだと考えています。
もちろん、全てのリスクをゼロにすることはできません。でも、「知らなかった」「聞いていれば避けられたのに」と後悔することは、できるだけ減らしたい。
そのためにも、購入する側・お手伝いする側が、それぞれの視点で「住まい」を見つめ直すことが大切だと思います。
最後に
ユスリカの大量発生は、ちょっとした異変かもしれません。でも、それが引き起こす暮らしへの影響は、決して小さくありませんでした。
家は「買って終わり」ではなく、「暮らして始まる」もの。
だからこそ、目には見えない部分まで丁寧に考えながら、後悔のない住まい選びをしていきたいですね。
これから住まいを考える方の参考になれば幸いです。
■■出典:弁護士ドットコムニュース
「万博会場のユスリカ大量発生」マンション買った人も悲鳴 「網戸びっしり」「洗濯物干せない」契約違反を主張できる?
https://www.bengo4.com/c_1012/n_18972/
:EXPO2025 大阪・関西万博国際サイト 大屋根リング
https://www.expo2025.or.jp/expo-map-index/main-facilities/grandring/
【本日の一曲】
Guru / No Time To Play