2026 10 21

なぜ不動産融資の不正利用をするのか? 住宅ローンの悪用が招く大きなリスク

不動産の仕事をしていると、住宅ローンの不正利用に関するニュースを目にするたびに、疑問に感じることがあります。

「なぜ、そんなリスクを冒してまで不正なことをするのだろう?」

「不動産」というだけあって、動かせない資産。調べに来られたら、逃げたり隠したりできないのに……。

それなのに、調べられたら問題になるような使い方を、なぜ安易にしてしまうのでしょうか。

今回は、住宅ローンの不正利用について、実際の事例も交えながら考えてみたいと思います。


■ そもそも住宅ローンは何のためのもの?

住宅ローンは、自分や家族が住むための住宅を購入する際に利用する融資です。

なかでも「フラット35」は、借入時に決まった金利が適用される全期間固定金利型の住宅ローン。長期にわたって返済計画を立てやすいことが特徴です。

しかし、当然ながら利用目的には条件があります。

自分で住むつもりがない住宅を購入して第三者に貸したり、民泊や店舗、事務所などに利用したりする目的で、居住用と偽って融資を受けることは認められていません。

また、住宅の購入費用にカードローンなどの返済資金を上乗せして申し込むことも、不適正利用にあたります。

ところが、こうしたルールを知らなかったり、知っていながら不正に手を出したりする人がいるのです。


■ なぜ不正利用がなくならないのか?

理由のひとつは、住宅ローンと不動産投資ローンの金利差です。

一般的に、住宅ローンは自宅を取得するための融資であり、不動産投資ローンとは審査の考え方や融資条件が異なります。

投資用ローンの審査が通らない、自己資金が足りない、毎月の返済負担を抑えたい……。

そんな事情から、住宅ローンを利用して投資物件を購入しようと考える人がいるのかもしれません。

さらに問題なのが、そうした人に不正な方法を持ちかける事業者の存在です。

「みんなやっているから大丈夫」
「金融機関には自分で住むと言えばいい」
「手続きはすべてこちらでやるので任せてください」

こんな言葉を聞いたら、要注意です。

住宅金融支援機構も、公式ホームページで不適正利用への注意喚起を行い、動画まで制作しています。

ここまで具体的な注意喚起をしていることからも、利用者が悪質な勧誘に巻き込まれないよう、対策が必要とされていることがわかります。


■ 実際に発覚した64件、融資額は約30億円

会計検査院が2023~2024年度に融資された住宅を調査したところ、フラット35で不適正利用が確認された事例は合計64件。融資額は約30億4,000万円に上りました。

内訳は、届け出なく住宅の一部を店舗などに使用していた事例が39件、民泊などに利用していた事例が25件です。

なかには、8,000万円の融資を受けて購入した住宅に本人が住まず、旅館業施設として利用していたケースもありました。

もちろん、この調査結果だけで不正利用全体の件数を推計することはできません。しかし、実際にこれだけの不適正利用が確認されているのは、見過ごせない問題です。


■ 「業者に任せた」では済まされない

住宅金融支援機構は、不適正利用が発覚した場合、残債務の一括返済請求や警察への通報、関係事業者の監督官庁への通報など、厳格な対応を行うとしています。

つまり、何千万円もの住宅ローンを、ある日突然、一括で返済しなければならなくなる可能性があるということです。

さらに、虚偽の申告によって融資を受けた場合には、詐欺罪などの刑事責任を問われる可能性もあります。

「不動産会社に言われたから」
「手続きを全部任せていたから」
「違反になるとは知らなかった」

そう説明したとしても、借りた本人の責任がなくなるわけではありません。

住宅金融支援機構は、融資後も住宅の利用状況を調査しており、不適正利用が疑われる場合には、詳しい確認を行うとしています。

不動産は動かせないからこそ、利用状況を確認される可能性があります。最初から発覚しないことを前提にするのは、あまりにも危険です。


■ 不動産の購入は、正直な資金計画から

不動産を購入したいけれど、自己資金が足りない。投資を始めたいけれど、融資の審査が難しい。自宅と店舗を兼ねた建物を購入したいけれど、どのローンを使えばいいかわからない。

そんなときは、不正な方法を探すのではなく、金融機関や不動産の専門家に相談してください。

物件の用途によって利用できる融資は異なります。住宅の一部を仕事場にしたい場合なども、自己判断で進めず、事前に条件を確認することが大切です。

不動産は、人生の中でも大きな買い物です。

目先の金利差や利益を優先して、将来の暮らしまで危険にさらす必要はありません。

不動産に携わる者として、購入する方には、安心して長く付き合える住まいを選んでほしいと思います。

「みんなやっているから大丈夫」ではなく、「ルールを守って、無理なく返せるか」。

不動産の購入では、そんな当たり前のことを大切にしていきたいですね。


◻︎◻︎フラット35 【フラット35】の不適正利用に巻き込まれないために
  https://www.flat35.com/hajimete/guide_caution.html

  読売新聞 住宅ローン「フラット35」使い民泊、墨田や豊島など25軒に中止要請…会計検査院「住宅に住む」規定に違反
  https://www.yomiuri.co.jp/national/20261020-GYT1T00293/


【本日の一曲】
Megadeth – Tornado Of Souls

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