2025 07 17

自分の家は、いったい誰のもの?

~登記制度と、暮らしを守る仕組みのお話~

朝、目が覚めたらいつもの景色。歯を磨いて、朝ごはんを食べて、カバンを手に外へ出る。昼間は仕事や学校で過ごし、夕方になるとまた同じ道を通って帰ってくる。そんな毎日は、まるで何度も再生されるテレビドラマのように、すっかりおなじみのルーティンになっています。

でも、ふと立ち止まって考えてみたことはありますか?
「そもそも、この家って、誰のものなんだろう?」

自分の家なのだから、もちろん「自分のもの」と言いたくなる気持ちはありますよね。でも、その「自分」って、たとえば子どもにとっては「パパとママの家」かもしれませんし、大人にとっても「ローンを払い終わるまでは銀行のもの」なんて冗談めかして話すこともあります。

けれど、もしある日、仕事や学校から帰ってきたら、家の中に知らない人がいて――
「この家は自分の持ち物だ」なんて言い出したら……?

さあ、どうしましょう?

おもちゃには名前を書く。でも家は……?

たとえば、子どもの大切なおもちゃや文房具には、名前を書いておくことがありますよね。「これは自分のものだよ」と、誰が見ても分かるようにしておく。あるいは、他の人に勝手に使われないように、大事に箱にしまっておいたり、肌身離さずポケットに入れて持ち歩いたり。

これって、とてもシンプルだけど、「所有」を守るための立派な工夫なんです。

でも、「家」はどうでしょう? 持ち歩くこともできなければ、名前を書く場所も限られています。たとえば玄関の表札だって、誰かが勝手に取り外してしまえば、その家が誰のものか、見た目では分からなくなってしまいます。

じゃあ、どうやって「この家は私のものだ」と証明すればいいんでしょうか?

登記制度ってなんだろう?

実は、日本にはとても大切なしくみがあります。それが「登記(とうき)制度」。

登記とは、かんたんに言えば「この土地・建物は誰のものです」と、きちんと公に記録しておく制度のこと。全国にある「法務局(ほうむきょく)」という役所が、その情報を一元的に管理しています。

つまり、どんな不動産(土地や建物)でも、法務局に行けば「これは誰の所有です」と、きちんと確認できるようになっているんですね。

これは、もしトラブルが起きたときだけでなく、不動産を売ったり買ったりするときにもとても役立ちます。「今この不動産は誰のものか」「他に借金の担保などがついていないか」などの情報を事前に調べることで、安全に、そして安心して取引ができるのです。

このように、「登記制度」は、日常の安心だけでなく、不動産の売買や相続、贈与といった大きな場面でも、私たちの暮らしを守る柱となっています。

登記簿には何が書かれているの?

登記簿には、大きく分けて以下のような情報が記載されています。

  • 不動産の所在や広さなどの基本情報(表題部)
  • 所有者の名前や住所(権利部・甲区)
  • その不動産に抵当権や地役権といった他人の権利がついているか(権利部・乙区)

たとえば住宅ローンを組んだときには、多くの場合、銀行が「抵当権(ていとうけん)」という権利を設定します。これも登記簿にしっかり記載されるため、誰が見ても「この家にはこういう契約があるんだな」とわかるようになっています。

こうした情報は、原則として誰でも閲覧可能です。もちろんプライバシーの配慮はありますが、「誰の所有かを隠して売買する」などの不正ができないよう、情報がオープンにされているのも大きなポイントです。

なぜ今、こんな話をするのか?

不動産の登記なんて、一見すると「法律の話」「専門家の領域」と思われがちです。でも、実際にはとても身近で、誰にとっても無関係ではありません。

とくに、最近は空き家の増加や相続登記の義務化など、私たち一人ひとりが登記について知っておく必要性が高まっています。

たとえば、「亡くなった親の土地を名義変更しないまま放置していたら、後で相続が大変になった」という話はよくあります。これも、登記制度の仕組みを知らないことが原因で起きる問題のひとつ。

また、不動産を買うときに登記をしっかり確認しなかったために、あとから他人の権利がくっついていた――なんていうリスクもあります。
そうしたトラブルを防ぐためにも、**「所有を証明する」=「登記を整える」**という意識がとても大事なんですね。

家は、安心して帰れる場所であってほしい

私たちが「ただいま」と帰るその場所が、自分のものであるという確かな証拠。それが、登記というしくみです。

表札だけでは不十分。契約書だけでも足りません。
登記簿にしっかり名前が載っていること――それこそが、法律的に「この家はあなたのものです」と示す、一番確かな証明なんです。
第三者に「ここは私の家です!」と証明できる書類が登記簿になります。

日々の暮らしの中ではなかなか目にしない話かもしれませんが、自分や家族の大切な暮らしを守るために、知っておいて損はありません。

「家は誰のもの?」という問いの答えが、これからも変わらずに「私たちのものです」と言えるように。
法務局と登記制度は、今日も静かに、私たちの暮らしを支えてくれているのです。

【本日の一曲】
mei ehara / 毎朝