街の紹介vol.4 観音寺市編 「有明浜 〜映画のワンシーンに息づく風景〜」

香川県観音寺市にある「有明浜」。
穏やかな波が打ち寄せる白砂の浜辺は、海水浴場としても人気の名所でありながら、実は映画のロケ地としてもたびたび登場していることをご存知でしょうか。
観音寺が映画の話題になると、近年ではアニメ『結城友奈は勇者である』の舞台となったことが大きな反響を呼びました。アニメファンにとっては、観音寺の街並みや神社、商店街の風景が“聖地”として親しまれ、多くのファンが足を運ぶようになりました。
一方で、地元の人たちの心に残る作品として忘れられないのが、1992年に公開された実写映画『青春デンデケデケデケ』です。原作は観音寺第一高等学校出身の作家・芦原すなおさんによる小説で、直木賞も受賞した名作です。映画では、観音寺第一高校の校舎が実際に撮影に使われ、当時の在校生や地域の人々にとっては、まさに地元の誇りとなる出来事でした。
実はこの映画の撮影は、私が観一に入学する直前に行われていました。校内の一角にカメラが入り、機材が運び込まれ、俳優さんたちが行き交う風景を、当時の生徒たちはどんな気持ちで見ていたのでしょうか。学校がまるで映画の舞台になる、そんな非日常に包まれた日々の記憶は、今も地元に息づいています。
そしてもうひとつ、観音寺が映画ファンにとって密かに知られている作品があります。2002年公開、北野武監督の『Dolls』です。主演は西島秀俊さんと菅野美穂さん、そしてその中で深田恭子さんが登場する印象的なシーンが、有明浜で撮影されました。
『Dolls』は、北野武監督ならではの静謐で美しい映像美が特徴の作品で、有明浜の白い砂浜と青い海が物語の一部として深く溶け込んでいます。観音寺市内でロケ地として使われたのはこの一部のシーンのみでしたが、それでも地元にとっては大きな出来事でした。
撮影当時、まだSNSやネットニュースが主流になる前の時代。どこからともなく「北野武が来てるらしい」「あの琴弾荘に泊まってるんだって」と噂が広まり、街がそわそわとした空気に包まれていたのを思い出します。実際に監督や出演者の方々は、有明浜のすぐ近くにあった「琴弾荘」に宿泊されていたそうです。今はもう閉館してしまったその宿も、地元の人にとっては“映画の一部”として記憶に残る場所になっています。
このように、有明浜はただのビーチではありません。
映画の世界に溶け込むほどの美しさと静けさを持ち合わせた、まさに観音寺の宝と言っても過言ではない場所なのです。
有明浜海水浴場は、「日本の渚100選」「日本の夕陽100選」「日本の水浴場88選」にも選出されており、2kmにわたる白砂のビーチは四季折々に異なる表情を見せてくれます。遠浅で波も穏やか。夏はファミリーでにぎわい、浜辺には市の指定文化財にもなっている珍しい植物が多く見られることでも知られています。
また、近くには展望台のある琴弾山や、観音寺市の名物「銭形砂絵」などもあり、訪れる人を飽きさせないエリアです。天気の良い日には、展望台から海岸線を一望し、映画のワンシーンを想像しながら浜辺を歩くのもおすすめです。
映画に登場した風景を辿りながら、地元の歴史や記憶に触れる。
観光やレジャーだけでなく、そんな“記憶を旅する”時間も、有明浜だからこそ味わえる魅力かもしれません。
今回は少しマニアックな観音寺の映画事情をご紹介しました。
映画好きな方はもちろん、ふらっと訪れた方も、ぜひこのロケ地の風を感じてみてください。
■■出典:観音寺市「有明浜」
https://www.city.kanonji.kagawa.jp/soshiki/21/342.html
【本日の一曲】
Tres Leches / Make Friends