不動産の裏側をゲームで体験!? 『日本事故物件監視協会』が話題に

皆さんは「事故物件」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?
ちょっと怖い、近寄りたくない……そんな印象を持つ方が多いかもしれませんね。
でも、そんな事故物件を題材にした、ちょっと変わったゲームが登場しました。
今回注目するタイトルは『日本事故物件監視協会 -Japan Stigmatized Property-』という作品です。テーマは「事故物件」、つまり過去に自殺や事件、火災などが起きた不動産。日本では心理的瑕疵物件とも呼ばれるこのジャンルを、ゲームという娯楽に昇華させたLoxarcの視点は、単なるホラーではなく、現実社会に深く根差した問題意識を感じさせます。
2025年8月15日、PC(Steam)とiOSとAndroidで正式リリース。価格は760円(税込)と、比較的手に取りやすい設定です。
■ ゲームの基本システム──「監視」という単純さが生む緊張感
本作でプレイヤーは、「日本事故物件監視協会」の新人監視員となり、深夜0時から朝5時まで、事故物件に設置された監視カメラを通じて異常をチェックします。業務内容は極めてシンプル。発生する“異常”を見つけ次第、速やかに報告すること。
一見簡単そうに思えますが、異常のパターンは多彩で、家具の移動、人影の出現、物体の消失といった現象がランダムで発生します。しかも、通常カメラだけでなく、暗視カメラを駆使しなければ確認できないケースもあるため、画面を凝視する集中力と観察力が試される仕組みになっています。
報告を続け、勤務時間を乗り切れば業務成功。しかし、報告漏れや誤報を繰り返すと評価が下がり、最悪の場合「業務失敗」。この緊張感は、まさに「簡単なお仕事」の裏に潜む重圧そのもの。単調な作業の中に潜む異常を見逃すことがどれほど致命的か、プレイヤーは身をもって体験することになります。
■ 「時給2970円」の裏にあるリアル
作中で提示される監視員の報酬は時給2970円。現実であれば破格の高給ですが、深夜勤務であること、精神的な負荷の高さを考えれば納得できる数字です。しかも、対象となるのは曰くつきの事故物件。高額報酬の裏には、誰もやりたがらない危険な仕事という現実が潜んでいるというメッセージを強く感じます。
実際、日本では年間数千件に及ぶ自殺や孤独死が発生しており、それらが物件にどのような影響を与えるかは、不動産業界では深刻な問題です。「告知義務」「瑕疵物件」という言葉は、業界にとって避けられないテーマであり、そこにスポットを当てた本作の着眼点は非常に鋭いといえるでしょう。
■ 驚くべき“公式サイト”の完成度
ゲーム自体の面白さに加え、Loxarcが力を入れているのが公式サイトの作り込みです。サイトには「協会概要」「代表挨拶」「業務報告」「求人情報」など、実際の法人サイトさながらのコンテンツが並びます。しかし、よく見ると写真に写る人物の顔はすべて黒塗り、業務報告には異常発生件数がデータとして掲載され、不穏な空気を醸し出しています。
さらに、地域別調査実績やFAQなど、プレイヤーの没入感を高めるための要素が充実。単なるゲームのプロモーションサイトを超え、“架空の組織のリアリティ”を体験できるコンテンツとして仕上がっています。この演出は、『SCP財団』や『ペーパーズプリーズ』のような没入型ゲームを彷彿とさせ、プレイヤーの想像力を刺激します。
■ 隠し要素──リアルイベント「暗夜-ANNYA-」とのコラボ
さらに驚くのは、実在する団体「暗夜-ANNYA-」とのコラボです。この団体は、実際の曰くつき物件を買い取り、そこに一晩宿泊するイベントを開催していることで知られています。本作では、その暗夜が隠しステージとして登場。実際の物件データをモデルにしたマップや、現実世界とリンクする要素が含まれており、単なるバーチャル体験にとどまらない仕掛けが用意されています。
こうしたコラボは、ホラーとリアルの境界線を曖昧にし、プレイヤーに「これはゲームなのか、それとも……」という感覚を与える重要な要素です。
■■暗夜 -ANNYA- [Youtube] : https://www.youtube.com/channel/UCHw1nFWDnDBXWiYFNGWeU_A
■ なぜ今「事故物件」なのか?
本作が注目を集める背景には、現代日本が抱える住宅問題があります。人口減少、空き家問題、そして高齢化による孤独死の増加。こうした社会問題が、事故物件の増加と深く関わっています。事故物件は、不動産価値の下落や心理的抵抗を生み、結果的に市場全体に影響を及ぼします。
こうした現実をゲームという娯楽で疑似体験することは、決して無駄ではありません。むしろ、「不動産の裏側」や「死と日常の距離感」を考えるきっかけとなり得ます。
■ プレイして感じた「やりがい」と「恐怖」
実際にプレイしてみると、序盤は“異常報告”という単純作業に思えます。しかし、時間が進むにつれ、異常の発生頻度や種類が増え、監視画面を一瞬でも見逃せない緊張感に包まれます。報告を成功させるたびに得られる達成感と、見逃したときの絶望感。この心理の揺れが、プレイヤーをゲームに没頭させる大きな要因です。
また、ホラー要素は決してジャンプスケアに頼るものではありません。画面の隅に一瞬映る影、わずかな音の変化、気づいたときには“そこにある”異常──そうした静かな恐怖が、このゲームの魅力です。
■ 最後に
『日本事故物件監視協会』は、単なるホラーシミュレーションではなく、日本社会が抱える現実問題を反映した作品です。不動産業界のダークサイドに光を当てながら、プレイヤーに強烈な没入感を提供する。その両立を実現した本作は、2025年のゲームシーンにおいて間違いなく注目作となるでしょう。
事故物件というテーマに恐怖を感じる人もいるかもしれません。しかし、だからこそ体験する価値がある――あなたは、この“監視”の仕事を最後までやり遂げられるでしょうか?
✅ タイトル:日本事故物件監視協会 -Japan Stigmatized Property-
✅ 対応機種:PC(Steam)、iOS、Android
✅ 価格:760円(税込)
✅ ジャンル:監視シミュレーション・ホラー
✅ 公式サイト:日本事故物件監視協会 https://jp-stigmatized-property.com/
■■暗夜 -ANNYA- https://r.goope.jp/annyaobake/
【本日の一曲】
Mike Oldfield / Tubular Bells (Pt. I)