2025 09 04

地盤調査から地盤改良まで──香川県で家を建てる前に知っておくべきこと

香川県はお隣の岡山県や高知県に比べると、比較的安定した地盤が広がっている地域です。そのため、住宅、特に木造住宅のように重量の軽い建物を建てる場合には、必ずしも地盤改良まで行わずに済むケースが少なくありません。しかし「地盤が安定しているから安心」と思い込むのは危険です。実際には、地盤の状態を正しく把握せずに建築を進めた結果、大きなトラブルに発展する例もあります。

この記事では、地盤調査と地盤改良の重要性、調査方法や工法の種類、さらには費用や注意点までを整理してご紹介します。


なぜ地盤調査が必要なのか?

家は基礎とその下の地盤によって支えられています。どんなに耐震性能の高い住宅を建てても、肝心の地盤が軟弱であれば、建物が傾いたり、不同沈下(家の一部だけが沈む現象)を起こしたり、液状化によって沈み込んでしまう危険があります。

実際に静岡県掛川市の商業施設では、複雑な地盤形状を正しく把握できず、一部の杭が支持層に届かないまま施工された結果、最大14cmもの沈下が発生しました。これは住宅ではないものの、地盤調査の精度がいかに重要かを示す典型例です。

つまり、建物の耐久性や安全性は「建物の設計」だけでなく「地盤の状態」に大きく左右されるのです。


地盤調査の義務化とその背景

実は、地盤調査は昔から行われていたわけではありません。現在のように義務化されたのは、2000年(平成12年)以降です。そのきっかけとなったのが、1995年に発生した阪神淡路大震災でした。

震度7を記録した大地震では、多くの住宅やビルが倒壊しました。しかし、同じ地域でも倒壊を免れた建物もあり、その違いを調査すると「地盤の強さ」が大きく関係していたことが分かりました。

この経験を踏まえて建築基準法が見直され、建物の安全性を確保するために地盤調査が義務付けられたのです。今では住宅瑕疵担保履行法の関係で、保険加入や保証の観点からも、ほぼ全ての住宅建設において地盤調査が実施されています。


地盤調査の方法と費用

一般的な木造住宅でよく行われるのが「SWS試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)」です。建物を建てる予定の敷地の四隅と中央、計5カ所で鉄の棒を地面にねじ込み、その抵抗から地盤の強度(N値)を調べます。

  • 目安:一戸建てならN値3以上が望ましい

より詳細なデータが必要な場合、マンション建設などで行われる「ボーリング調査」もあります。支持層まで掘削してサンプルを採取し、地層や地下水位も確認できる方法です。


地盤改良が必要になるケース

調査の結果、以下のような場合には地盤改良が必要と判断されます。

  1. 耐震力が20〜30KN/m²未満の軟弱地盤
  2. 埋立地・盛土・過去に陥没のあった土地
  3. 液状化や不同沈下のリスクが高い土地

つまり、「地盤改良が必要かどうか」は調査データだけでなく、その土地の履歴や周辺環境も含めて総合的に判断されるのです。


地盤改良の主な工法と特徴

1. 表層改良工法(浅い軟弱地盤向け)

  • 土の表層(約2m)を掘り、固化材を混ぜて固める方法
  • 一戸建てでは最も多い
  • メリット:工期が短い、経済的
  • デメリット:地下水位が高いと施工不可

2. 柱状改良工法(支持層が浅い場合)

  • コンクリートの柱を何本も地中に注入して補強(杭よりコンクリート柱の表面積が大きので摩擦力で支持する)
  • 摩擦や支持層で建物を支える
  • メリット:支持層が浅くなくても施工可
  • デメリット:一度施工すると原状復帰が困難

3. 鋼管杭工法(重量建築物向け)

  • コンクリートの代わりに鋼管を打ち込む方法(支持層に杭を打ち込む)
  • 大きな建物や3階建て以上に有効
  • メリット:強度が高い
  • デメリット:騒音・振動が大きく、費用も高い

香川県での地盤事情と注意点

香川県は比較的安定した地盤が多いとはいえ、必ずしも安心ではありません。埋立地や造成地では不同沈下のリスクがありますし、同じ敷地内でも部分的に強度が異なる場合もあります。

例えば、擁壁を設置するために土を埋め戻した場所は周囲より地盤が弱いことが多く、建物の一部だけが沈下してしまうケースもあるのです。そのため「一部分だけを改良」するのではなく、敷地全体を均一に補強することが重要です。

また、香川は降水量が少ない地域でありながら地震のリスクもゼロではありません。耐震設計と同じくらい、地盤改良の必要性を見極めることが大切です。


地盤改良が不要な土地を探すには?

工事費用を抑えるために「地盤改良が不要な土地」を選びたいと思う方も多いでしょう。そのためには以下の方法があります。

  • ハザードマップで液状化リスクを確認
  • 古地図や地域の人から土地の履歴を調べる(昔、川だった場所は要注意)
  • 標高が高く、地下水位が低い土地を選ぶ

ただし、地盤は100m離れるだけで状況が変わるほど複雑です。最終的にはやはり地盤調査を行わなければ正確には分かりません。


まとめ

  • 地盤調査は2000年から義務化され、建物の安全を守るために不可欠
  • 調査方法にはSWS試験とボーリング調査がある
  • 地盤改良は「表層改良」「柱状改良」「鋼管杭工法」が主流
  • 香川県は比較的安定した地盤が多いが、造成地や一部の地盤には注意が必要
  • 専門家に相談し、必要な改良を行うことで安心して暮らせる家づくりが可能

家づくりにおいて「見えない部分」である地盤。しかし、その強さこそが家族の安心と資産価値を支える大切な基盤です。土地を購入する際、そして建築を計画する際には、ぜひ地盤調査と地盤改良の重要性を意識してください。

【本日の一曲】
PREFUSE 73 / Vocal Studies + Uprock Narratives