2025 09 14

「Just The Two Of Us進行(丸サ進行)」とは?40年の歴史をやさしく解説

近年、音楽好きのあいだで「丸サ進行」「Just The Two Of Us進行」という言葉がよく聞かれるようになりました。
「丸サ」とは椎名林檎さんの楽曲「丸の内サディスティック」の略称です。この曲の都会的でおしゃれな雰囲気が再評価され、さらにその元ネタとされる「Just The Two Of Us」という1980年の名曲にも注目が集まりました。
では、この「Just The Two Of Us進行」とはどんなものなのでしょうか。音楽の専門知識がなくてもわかるように、歴史や魅力をひも解いていきます。


1. そもそも「コード進行」って何?

まず「コード進行」という言葉を簡単に説明します。
コードとは複数の音を同時に鳴らした和音のこと。進行とは、その和音が曲の中でどのように移り変わっていくかというパターンを指します。
「曲の雰囲気」を決める基礎のようなもので、どんなにメロディーが違ってもコード進行が似ていれば「なんとなく似てる」と感じる理由にもなります。


2. 「Just The Two Of Us」誕生とその衝撃(1980年)

1980年、サックス奏者グローヴァー・ワシントン・ジュニアがリリースした「Just The Two Of Us」は、ビル・ウィザースの甘いボーカルをフィーチャーしたスムーズな曲です。
邦題「クリスタルの恋人たち」としても知られ、グラミー賞を受賞。アルバム『Winelight』はジャズやフュージョンの名盤として今でも多くの人に愛されています。

この曲の特徴は、メロディーだけでなく、心地よく循環するコード進行にあります。
実はこの進行自体は完全なオリジナルではなく、1970年代後半に流行していたソウルやR&B、フュージョンの要素を組み合わせたものでしたが、「Just The Two Of Us」で一気に有名になりました。


3. 日本人好みの“切なさ”と“おしゃれさ”

「Just The Two Of Us進行」は、メジャー(明るい和音)とマイナー(暗い和音)を行き来する特徴があります。このため、単に明るい・暗いのどちらかでなく、独特の哀愁や大人っぽさが出るのです。
日本の歌謡曲や演歌に多い「ペンタトニックスケール」(ド・レ・ミ・ソ・ラの5音だけを使う音階)とも相性がよく、童謡やポップスのメロディーに当てはめても一気におしゃれに聞こえるという“魔法”があります。


4. 「丸の内サディスティック」で再ブレイク(1999年)

1999年、椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」が発表されます。この曲のコード進行は「Just The Two Of Us進行」をシンプルに取り入れたもの。
当時はそこまで目立つ存在ではありませんでしたが、SNSや動画投稿サイトの普及とともに再評価され、若い世代を中心に人気が再燃。「丸サ進行」という愛称が誕生しました。

椎名林檎さんの楽曲では、独特の日本語詞の美しさと「Just The Two Of Us進行」の大人びた響きが見事に融合しています。結果として、多くの若手ミュージシャンが「自分も取り入れたい」と感じるようになりました。


5. 現代のヒット曲にも続々採用

YOASOBIの「夜に駆ける」、Official髭男dismの「I LOVE…」、あいみょんの「愛を伝えたいだとか」など、今のJ-POPヒット曲にも「Just The Two Of Us進行」が多く使われています。
特に「夜に駆ける」以降、サブスク世代に爆発的に広がり、丸サ進行は「おしゃれで今っぽい曲」を作る定番パターンとして定着しました。

このコード進行は、ループしても飽きにくい・メロディを乗せやすい・アレンジしやすいという三拍子が揃っています。音楽のジャンルを問わず、ヒップホップやボカロ曲、ジャズ系インストなどでも活用されています。


6. なぜ40年経っても色あせないのか?

「Just The Two Of Us進行」が40年以上愛されている理由は、いくつかあります。

  1. 耳に残る“転調感”
     進行の中で自然にキー(調)が変わるため、印象的で飽きにくい。
  2. どんなジャンルにも合う万能さ
     ポップスからジャズ、ヒップホップ、ボカロ曲まで幅広く対応。
  3. 日本人の感性にマッチ
     哀愁や切なさを帯びた響きが、日本人の心に刺さる。
  4. 簡単にオシャレに聴こえる
     同じメロディーでも、コード進行を変えるだけで大人っぽくなる。

7. コード進行を知らなくても楽しめる

音楽を聴くときに「コード進行を知らなければいけない」ということはありません。ただ「この曲はあの曲に似てる感じがする」と思うことが、実はコード進行によるものかもしれません。
「Just The Two Of Us進行」や「丸サ進行」を知っておくと、好きな曲を聴くときに新しい発見があるはずです。


8. まとめ 〜“丸サ進行”は未来へ続く〜

「Just The Two Of Us進行(丸サ進行)」は、1980年の名曲から始まり、1999年の「丸の内サディスティック」、そして2020年代の「夜に駆ける」や「I LOVE…」まで、世代を超えて受け継がれています。
たった4つのコードの組み合わせが、40年以上にわたって人々の心をつかみ続けているのです。

今後も新しい世代のミュージシャンがこの進行を使い、自分たちの感性でアップデートしていくでしょう。
「丸サ進行」は、音楽の世界における“共通言語”として、これからも私たちの耳に心地よく響き続けるに違いありません。

【本日の一曲】
椎名林檎 / 丸の内サディスティック