「遺留分(いりゅうぶん)」とは?
~知らないと損をするかもしれない、相続の権利について~
「遺留分」という言葉を耳にしたことはありますか?
知っている方は「相続トラブルでよく聞く言葉だ」と思うかもしれません。一方で、「聞いたことがない」という方も多いでしょう。
それもそのはず。遺留分は「相続」が発生したときに初めて関係する“特別な権利”だからです。
■ 遺留分とは何か?
遺留分とは、法律で保証された最低限の相続取り分のことです。
たとえ被相続人(亡くなった方)が遺言書で「すべての財産を〇〇さんに渡す」と書いていたとしても、一定の相続人には「これだけはもらえる」という権利が残されています。
この制度がある理由は簡単です。
家族の生活を守るため。
もしすべての財産が特定の人に偏ってしまったら、残された家族が生活に困ることもあります。
その不公平を防ぐために、民法で「遺留分」という仕組みが設けられているのです。
■ 遺留分の対象となる人
では、誰がこの権利を持っているのでしょうか?
遺留分を主張できるのは、
- 配偶者(夫または妻)
- 子(実子・養子を含む)
- 直系尊属(父母・祖父母など)
この3つのパターンのうち、兄弟姉妹には遺留分はありません。
例えば、子どもがいない方が亡くなり、兄弟姉妹だけが相続人になる場合、遺留分の主張はできないということです。
■ 遺留分の割合
では、どのくらいの割合が保証されているのでしょうか?
民法では、相続人の構成に応じて次のように定められています。
- 相続人が 配偶者と子 の場合 → 遺産の1/2が遺留分対象。
その1/2をさらに法定相続分で分ける。
(例:配偶者と子が1人なら、配偶者1/4・子1/4) - 相続人が 配偶者と直系尊属(親など) の場合 → 同様に遺産の1/2が遺留分対象。
- 相続人が 直系尊属のみ の場合 → 遺産の1/3が遺留分対象。
つまり、全財産を「長男にだけ」と遺言で書いても、配偶者や他の子どもには法律上一定の取り分があるのです。
■ 遺留分侵害額請求とは?
遺留分が侵害された場合、どうすればよいのでしょうか。
このときに登場するのが「遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)」という手続きです。
たとえば、遺言書で「全財産を長男に相続させる」と書かれていた場合。
次男や配偶者は、「自分の遺留分が侵害されている」と主張し、金銭で補償を求めることができます。
以前は「物を取り戻す(減殺)」という仕組みでしたが、法改正によって、現在は金銭での支払いが基本となりました。
つまり、「家を分ける」「土地を分割する」という複雑なトラブルを避けやすくなっています。
■ 遺留分侵害額請求の期限に注意
この権利には、時効があります。
侵害を知った時から1年以内、または相続開始から10年以内に請求しなければなりません。
期限を過ぎると、遺留分を請求することはできません。
「落ち着いたら考えよう」と思っているうちに、時効が過ぎてしまうケースもあるので注意が必要です。
■ どんなときに遺留分トラブルが起こるのか?
実際に問題になるのは、主に次のようなケースです。
- 生前に特定の子どもだけに多額の贈与をしていた
- 再婚していて、前妻の子と現配偶者の間で遺産配分が偏る
- 家業を継ぐ長男にすべての財産を譲るように遺言した
- 自宅不動産を特定の相続人だけが相続するよう指定していた
このような場合、「他の相続人が納得できない」と感じ、遺留分請求に発展することがあります。
■ 遺留分を巡る現実的な課題
実は、遺留分を主張することは簡単ではありません。
請求をする側は、
「どの財産が相続対象になるのか」
「生前贈与はどの範囲まで含まれるのか」
「評価額をどう計算するか」
といった複雑な判断を迫られます。
また、家族間で話し合う必要もあり、感情的なもつれが生じやすいのも現実です。
■ 遺留分をめぐるトラブルを防ぐには?
トラブルを未然に防ぐために大切なのは、「事前の準備」です。
- 遺言書をきちんと作成しておくこと。
不公平にならないよう配慮しつつ、理由を明確に書くことで誤解を防げます。 - 家族に生前から話しておくこと。
「なぜこのように分けるのか」を生前に説明しておくことで、感情的な対立を和らげられます。 - 専門家に相談すること。
弁護士や司法書士、税理士など、相続に強い専門家に相談することで、法的リスクを最小限にできます。
■ 「遺留分」は“もらうための権利”ではなく“守るための権利”
遺留分は、「財産をもらうための制度」というより、「家族の最低限の生活を守るための仕組み」です。
亡くなった方の意思を尊重しつつも、残された家族が困らないように――
そんなバランスを保つための法律なのです。
■ 遺留分を知っておくことの大切さ
遺留分をめぐるトラブルは、決して他人事ではありません。
家や土地、預金といった資産がある家庭なら、誰にでも起こり得る問題です。
もしも「うちは相続の話なんてまだ先」と感じていても、今から少しずつ知識を持っておくことが大切です。
いざというときに慌てないよう、家族で話し合うきっかけにしてみてください。
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Goldoe Alexander – Show You My Love