家族のライフステージと住まいの選び方
不動産は「動かせない資産」です。
建物は建て替えることができても、土地そのものを別の場所に動かすことはできません。
この“動かせない”という特徴こそが、不動産の価値を考える上で最も重要なポイントのひとつです。
今回は、不動産の立地と家族の状況──特にお子さんの成長やライフステージの変化──がどのように関係しているのかを考えてみたいと思います。
■ 学校の統合と「距離」の問題
少子化の影響で、ここ数十年の間に多くの地域で小学校や中学校の統廃合が進んでいます。
かつてはどの町にもあった小学校が統合され、今ではいくつかの地域をまとめて一校でカバーするような形になりました。
その結果、通学距離が大きな問題となっています。
徒歩圏内に学校があった世代に比べ、現在の子どもたちは遠くの学校まで通わなければならないケースも少なくありません。
特に、登下校の時間帯に交通量が多い道路を渡る必要がある場合などは、保護者にとっても心配の種です。
この「学校までの距離」は、不動産の価値に大きく影響します。
一般的に、小学校に近いエリアは人気が高く、相場も上がる傾向にあります。
特に徒歩10分以内の距離に小学校がある土地・住宅は「ファミリー層に選ばれやすい」という特徴があります。
逆に、かつては小学校が近くにあった地域でも、学校が統合されてしまったことで利便性が下がり、土地価格が緩やかに下落していくケースも見られます。
このように、行政の教育施策や人口動態の変化が、地域の不動産価値に直接的な影響を与えているのです。
■ 家族構成によって変わる「理想の立地」
不動産を購入する際に考えるべきポイントのひとつは、その家族の今と未来です。
家族構成やお子さんの年齢によって、「住みやすい」と感じる場所は大きく変わります。
小さなお子さんがいるご家庭
まず、幼稚園や小学校に通うお子さんがいる場合。
やはり一番の優先事項は「学校や子ども園に近いこと」です。
徒歩や自転車で安全に通える距離にあるかどうかは、毎日の安心感に直結します。
また、公園や小児科、スーパーなどが近くにあることも、子育て世代には大きな魅力になります。
中学生・高校生のご家庭
一方で、お子さんが中学生や高校生になると、少し状況は変わってきます。
多くの生徒が自転車通学をするため、小学校ほど「徒歩圏であること」にこだわる必要はなくなります。
むしろ「通学ルートが安全であるか」や「坂道が多すぎないか」など、日常的に使う道の状況がポイントになります。
また、この頃になると塾や部活で帰宅が遅くなることもあるため、夜道の明るさやバス停の距離なども重要になります。
子育てが一段落した世帯
さらにお子さんが独立し、夫婦二人の暮らしが中心になった場合。
「学校に近い」という条件よりも、「病院やスーパーに近い」「坂の少ない場所」といった条件を重視される方が増えます。
年齢とともに生活リズムが変わり、車を運転する機会が減ってくると、徒歩圏内に生活施設がそろっているエリアが理想的になります。
■ 「動かない資産」を選ぶということ
不動産を購入する際、多くの方は「建物」ばかりに目を向けがちです。
もちろん間取りやデザイン、築年数も大切ですが、それ以上に重要なのが「どこに建っているか」。
家族のライフステージが変わっても不便を感じにくい立地かどうかを、あらかじめ考えておくことが長い目で見た資産価値を保つコツです。
また、将来的に売却や賃貸に出す可能性を考えたときも、「学校に近い立地」「交通アクセスが良いエリア」は常に需要があります。
つまり、子育て世代が選ぶエリア=資産価値が安定しやすいエリアといえるのです。
■ 不動産と地域のこれから
ここで少し視点を広げてみましょう。
香川県でも、市街地と郊外で不動産の動き方に違いが出ています。
駅や学校、商業施設の集まるエリアには新しい住宅が建ち続ける一方で、かつて学校があった地域では空き家が増えつつあります。
しかし、これを「不便になった地域」として切り捨ててしまうのは早計です。
近年では、地域コミュニティの再生や子育て支援の取り組みなど、住み続ける工夫をしている町も少なくありません。
また、リモートワークの普及により、「通勤に便利な場所」よりも「自然が多くて落ち着ける場所」を選ぶ人も増えています。
つまり、家族構成やライフスタイルの変化に応じて、エリアの魅力の見方も変わってきているのです。
■ 不動産購入のタイミングをどう考えるか
「今買うべきか」「もう少し待つべきか」。
多くの方が悩まれるポイントです。
しかし大切なのは、“誰のための家か”を明確にすることです。
お子さんの成長に合わせて引っ越すのか、
将来の介護や老後を見据えて暮らすのか。
目的によって選ぶ場所も、間取りも、予算の考え方も変わってきます。
たとえば、子育て中のご家庭であれば「小学校卒業まではこの家で」と期間を決めるのも一つの考え方です。
逆に、定年後を見据える方なら「バリアフリー対応」「病院が近い」など、生活動線を中心に考えることが大切です。
■ “家族の今”と“未来の暮らし”を見据えて
不動産は“動かせない”からこそ、“今の便利さ”だけで決めてしまうと、数年後に後悔することもあります。
家族が成長し、環境が変わったときにも「ちょうどいい」と思える家。
そんな家を見つけるためには、目先の条件よりも「この先どう暮らしたいか」を考えることが大切です。
もし購入を検討されているなら、不動産会社に相談する際にはぜひご家族の状況や今後の予定も共有してください。
「お子さんがあと何年で小学校卒業なのか」「将来親御さんと同居する予定があるのか」など、家族の情報をもとに立地や物件タイプの提案がより具体的になります。
■ 〜家族の形に合った“動かない資産”を〜
不動産の価値を決めるのは、立地とタイミング、そして家族の暮らし方です。
同じエリアでも、子どもが小さいご家庭と夫婦二人暮らしの世帯とでは、理想の条件がまったく違います。
少子化や学校統合といった時代の流れを踏まえつつ、
「今」と「これから」のバランスを見極めることが、後悔しない不動産選びの第一歩。
動かせない資産だからこそ、
家族の“動き”や“変化”に寄り添う視点を持って選びたいものです。
✳︎せとうち不動産では、
お客様の家族構成やライフステージに合わせた物件探しをお手伝いしています。
学区・周辺環境・将来の資産価値まで含めて、長く安心して暮らせる住まいを一緒に考えましょう。
【本日の一曲】
AIR – Grieve Not the Spirit