2025 10 29

「左右盲」と「LR盲」──とっさに判断できない、あの瞬間の話

最近、「左右盲(さゆうもう)」という言葉を知りました。
「盲」とつくと少し重い印象がありますが、これは病気や障害を指す言葉ではありません。
左右盲とは、「右」「左」という言葉は理解しているものの、とっさにどちらか判断できない状態のことを指します。

たとえば運転中に「次、右に曲がって」と言われても、「右?左?どっちだっけ?」と一瞬迷ってしまう。
そんな経験、誰しも一度はあるかもしれません。
左右盲の人はその“迷う一瞬”が、日常のさまざまな場面で頻繁に起こるのです。


■ 左右盲の主な特徴

左右盲の人は、「右」や「左」という言葉自体はきちんと理解しています。
しかし、その言葉を自分の体の向きや空間の方向と瞬時に結びつけることが難しいのです。

特徴としては、

  • 指示されても判断に少し時間がかかる
  • 言葉は理解しているが、即座に方向と結びつかない
  • 日常のさりげない動作でも混乱が起こる

といったことが挙げられます。


■ 左右盲が困る場面

左右盲の人が特に困るのは、「一瞬の判断」が求められる場面です。

・運転中

カーナビが「次の交差点を右折です」と案内したとき、
頭では理解しているのに、手が動かない。
結果、曲がりそびれてしまうこともあります。

・視力検査

ランドルト環(Cの形をしたマーク)の切れ目を「右」「左」「上」「下」で答える検査。
このとき、左右盲の人は頭で理解していても、口から反対の言葉が出てしまうことがあります。

・日常動作

浴衣を着るときの「右前」、あるいは体操やダンスで「右手を上げて」と言われると、
反射的に逆の手を動かしてしまう──そんなことも珍しくありません。


■ 左右盲の原因は?

興味深いことに、左右盲の原因ははっきりとはわかっていません。
脳の障害などではなく、あくまで「個人差」とされています。

一説によると、幼少期に利き手を矯正された経験がある人に多いとも言われています。
左利きだった人が無理に右手を使うように教育されると、
脳内で左右の情報処理が混乱しやすくなる可能性があるそうです。

ただ、これはあくまで一説であり、科学的に明確な因果関係はまだわかっていません。


■ 「私、LR盲かもしれない」──気づきの瞬間

この「左右盲」という言葉を聞いたとき、
私はあることに気づきました。

「左右」なら判断できる。
でも、「L(レフト)」と「R(ライト)」になると、途端にわからなくなる。

そう、私は『LR盲』なのです。


■ 「L」「R」だけがわからない不思議

運転中、カーナビの画面に「R turn」「L turn」と表示されていても、
一瞬「どっちだっけ?」と止まってしまう。
考えればわかるのですが、とっさには出てこないのです。

「LeftはL、RightはR」──頭では理解している。
でも脳がその文字情報と空間的な左右の方向を瞬時に結びつけられない。
英語が苦手というわけではなく、認識のスイッチが遅れる感覚に近いのです。

これまで「自分だけかな?」と思っていたのですが、
調べてみると意外にも同じような人が多いことがわかりました。


■ 意外と多い「左右識別困難者」

ある大規模調査によると、約15%の人が左右識別困難であるという結果があります。
さらに別の研究では、4人に1人が何らかの形で左右判断に迷う経験を持つとのこと。
つまり、クラスに40人いれば、10人前後が「左右盲」的傾向を持っているのです。

また統計的には、女性左利きの人に多い傾向があると言われています。
脳の情報処理の仕方が微妙に違うことが関係しているのかもしれません。


■ 日常に潜む「LR盲」あるある

私自身の「LR盲」エピソードをいくつか挙げると、

  • 車のカーナビで「R turn」が出た瞬間、脳内が一瞬フリーズする
  • 英語教材の指示「Look to the left!」で体が逆を向く
  • カメラの設定画面で「L-ch」「R-ch」の表示に少し考える
  • ステレオのスピーカー接続で「L」「R」を何度も確認する

……毎回ではないのですが、とっさに判断できない瞬間が確かにあるのです。


■ どうすれば克服できるのか?

左右盲やLR盲は「克服」というよりも、
**“工夫して共存する”**ことのほうが現実的です。

たとえば、

  • 運転時は「時計の針がある方が右」と自分の体基準で覚える
  • ステレオ接続では「L=Left=Love(心臓=左)」のように語呂で覚える
  • 英語のLとRを意識する場面では、あえて文字を見ないようにし、直感で判断する練習をする

といった方法があります。

私の場合、親指と人差し指を90度にした時に「L」の形になるのが「Left」と結びつけるようにしてからは、
以前よりも判断が早くなりました。


■ 「迷う」という感覚を持つことの意味

左右盲やLR盲は、日常生活で少し不便なことはあっても、
致命的な支障があるわけではありません。

ただ、それを知ることで、
「自分の感じ方・考え方は人それぞれなんだ」と気づけるきっかけになります。

世の中には「右も左もわからない」と笑い話にされがちな感覚が、
実は誰にでも少しはある。
そしてそれが、脳の情報処理の“多様性”を示しているとも言えるのです。


■ 「わからない」を受け入れる

私にとって「LR盲」は、少し笑える自分の特徴のひとつです。
でも、これをきっかけに「人にはそれぞれ違う認識のクセがある」と思うようになりました。

とっさに判断できないことがあっても、それは“劣っている”のではなく、
“違っている”だけ。

左右盲やLR盲を知ることは、
人の感覚や思考の多様さを受け入れる第一歩なのかもしれません。


■ おわりに

「左右盲」という言葉をきっかけに、
自分の中の「LR盲」という小さな発見に気づいた今回。

右と左、LとR──どちらも単純な言葉ですが、
私たちの脳の中では思った以上に複雑な処理が行われているのだと感じます。

もしあなたも、英語でのLとR、あるいは右と左の判断で迷うことがあるなら、
それは“おかしいこと”ではなく、“人らしいこと”かもしれません。

【本日の一曲】
Hotei · Takkyu Ishino – Move Your Body