食糧危機のカギ? 注目を浴びた昆虫食とグリラスの自己破産

近年、世界的に「将来の食糧問題」が現実味を帯びて語られるようになってきました。
地球の人口は増え続け、特に肉や魚などの動物性タンパク質の需要が急増すると言われています。
国連の食糧農業機関(FAO)も「2030年代には深刻なタンパク源不足が起こる可能性がある」と指摘しており、代替タンパク源として「昆虫食」が注目されています。
中でもコオロギは、飼育に必要な水や餌が少なく、環境負荷が低い優等生。
そんなコオロギに早くから着目し、食用として商品化を進めていたのが、**徳島大学発のスタートアップ企業「グリラス」**でした。
グリラスは、徳島大学での長年の研究をもとに2019年に設立。
自社ブランドでコオロギ粉末を使用したスナックやクッキーなどの商品を展開し、大手小売りや航空会社とも取引を拡大。
コンビニでの全国展開も視野に入れ、大規模な工場建設にも着手していました。
私も「地元・四国の企業が未来の食を切り開く!」と期待を寄せていた一人です。
実際に無印良品で販売されていたコオロギ入りお菓子を食べてみたところ、ほんのりエビのような香ばしい風味で、「言われなければ昆虫とは気づかないかも」と思うほどでした。
しかし、グリラスは2024年11月、徳島地方裁判所に自己破産を申請。
急成長の裏で、SNSでの根拠のないデマ投稿が相次ぎ、炎上状態に。
誤情報が広がる中、企業側は法的対応に踏み切らず、結果として信頼を失い、取引先の離脱が続出。
約1億5000万円の負債を抱え、事業継続が困難となってしまったのです。
「新しい食文化を築く」という難しさを、グリラスのケースは物語っています。
とくに昆虫食のように馴染みのないテーマでは、正しい情報を発信し、消費者の理解を得る地道な努力が必要です。
それでも、地球の未来のためには避けて通れないテーマであることも事実。
今はまだ「昆虫を食べるなんて…」と抵抗のある人も多いかもしれませんが、栄養価や環境面のメリットを冷静に見てみると、昆虫食はとても理にかなっています。
コオロギは良質なたんぱく質、ビタミン、ミネラルを豊富に含み、養殖にかかる資源も最小限。
サステナブルな食のあり方として、今後も世界的な注目は続くでしょう。
グリラスの自己破産は本当に残念ですが、その志や研究成果は、今後の昆虫食の未来に何らかの形で生かされていくことを願っています。
「地元企業の挑戦が社会にどんな影響を与えたのか」――
今こそ、改めて私たち一人ひとりが考えるタイミングなのかもしれません。
【本日の一曲】
RAMONES – Blitzkrieg Bop