最近の相続事情②
家族の多様化で、遺産はどうなる?
「相続」と聞くと、多くの人が
配偶者がいて、子どもがいて、親族みんなで話し合って…
そんな“昔ながらの家族像”を思い浮かべるかもしれません。
しかし現実は、ここ数十年で大きく変わってきています。
おひとりさま、生涯未婚、子どものいない夫婦、事実婚、疎遠な親族関係。
家族の形が多様化したことで、相続の現場も確実に変わりつつあります。
今回は「相続人が誰になるのか」「誰も相続しない場合どうなるのか」といった、
家族の多様化がもたらす相続のリアルについて考えてみたいと思います。
相続手続きは、基本的に「相続人」が行う
まず大前提として、相続の手続きは相続人が中心となって行います。
不動産の名義変更、預貯金の解約、相続税の申告など、
どれも相続人がいなければ進められません。
では、その「相続人」とは誰なのか。
民法では、相続人には優先順位が定められています。
- 1配偶者(常に相続人)
- 2子ども(子が亡くなっていれば孫、さらにひ孫へ)
- 3親・祖父母
- 4兄弟姉妹(亡くなっていれば甥・姪)
配偶者や子どもがいない場合、相続は一気に“遠い親族”へと広がっていきます。
親族が遠くなるほど、相続は難しくなる
配偶者も子どももいない。
親や祖父母もすでに亡くなっている。
そうなると、相続人は兄弟姉妹、もしくはその子どもである甥・姪になります。
ここで一気に現実的な問題が出てきます。
- 日頃ほとんど付き合いがない
- 住所や連絡先が分からない
- そもそも存在を知らない
- 高齢で判断能力が低下している
- 相続に全く興味がない
相続手続きは、相続人「全員」の協力が必要な場面が多くあります。
一人でも連絡が取れなければ、話が前に進まないケースも珍しくありません。
不動産業務をしていると、
「相続人が10人以上いる」
「何十年も会っていない親族がいる」
という話も決して珍しくありません。
逆の立場になることもある
ここで視点を逆にしてみます。
ある日突然、
「固定資産税の納付書」が自分宛に届く。
差出人を見ると、全く心当たりのない自治体。
調べてみると、
会ったこともほとんどない叔父や叔母が亡くなり、
自分が相続人になっていることを初めて知る。
こうしたケースも、実際に増えています。
相続というと「財産をもらえる」というイメージが強いですが、
不動産の場合、必ずしもプラスとは限りません。
- 管理できない遠方の土地
- 売れない山林や原野
- 老朽化した空き家
- 毎年かかる固定資産税
知らないうちに「負の遺産」を背負うこともあるのです。
相続放棄が増えている理由
こうした背景もあり、
相続放棄を選ぶ人は確実に増えています。
20年前と比べると、相続放棄の件数は2倍以上になっていると言われています。
理由のひとつは、
「親族関係が希薄な相続」が増えたこと。
- 面識のない親族の相続
- 思い入れのない不動産
- 管理や処分に手間と費用がかかる
「相続するメリットが見当たらない」
そう判断する人が増えているのも、ある意味自然な流れかもしれません。
ただし、相続放棄には期限があります。
原則として「相続開始を知ってから3か月以内」。
気づいた時には期限を過ぎていた、というケースも少なくありません。
相続人がいない場合、遺産はどうなる?
では、相続人が誰もいない場合、
あるいは全員が相続放棄をした場合、遺産はどうなるのでしょうか。
結論から言うと、
最終的に遺産は国庫に帰属します。
ただし、すぐに国のものになるわけではありません。
- 家庭裁判所で相続財産管理人を選任
- 債権者への弁済
- 特別縁故者(内縁関係など)への分配の可能性
- 残った財産が国庫へ
かなり長い時間と手続きを経て、ようやく国のものになります。
不動産が含まれている場合、
その管理費用は税金で賄われることになります。
社会全体で負担しているとも言えます。
「誰に遺すか」を考える時代
家族の形が変わった今、
「相続は自然にうまくいくもの」と考えるのは、少し危険かもしれません。
- 子どもがいない
- 親族と疎遠
- 相続させたくない親族がいる
- 特定の人に遺したい
こうした思いがあるなら、
遺言書を残すことは非常に重要です。
相続は、亡くなった後の問題であると同時に、
「残された人たちの負担」の問題でもあります。
まとめ:相続は“家族の形”を映す鏡
相続の形は、そのまま家族の形を映します。
家族が多様化した今、相続もまた、複雑になっています。
- 誰が相続人になるのか
- 相続したくない場合はどうするのか
- 誰にも相続させない場合はどうなるのか
元気なうちに考えておくことで、
将来のトラブルや負担を減らすことができます。
「うちは大丈夫」ではなく、
「うちの場合はどうなる?」
そんな視点で、一度考えてみることが、これからの時代には必要なのかもしれません。
◻︎◻︎国税庁 相続税のあらまし
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/souzoku-aramashih30.pdf
【本日の一曲】
TENDRE – LULLABY
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