2025 06 08

過去最少だった新生児出生数・新築着工棟数から考えられること。

2024年、日本で生まれた赤ちゃんの数は68万6061人。初めて70万人を割り込み、統計が始まった1899年以降で過去最も少ない数になりました。
この数字だけでも少子化の進行を物語っていますが、さらに注目したいのは「合計特殊出生率」という数値です。これは1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの平均数を示すもので、2024年は1.15人と過去最低を記録しました。

この数字、すこしだけ未来の話につながっています。

たとえば、今生まれた赤ちゃんたちが大人になり、住宅を建てたり買ったりするタイミングはおおよそ30年後。その時代に、家を必要とする人たちがどれくらいいるのか…と考えると、将来の家づくりの需要はどうしても減っていくことが想像できますよね。

実際、住宅を新しく建てる件数も年々減っており、2024年の新築着工棟数は約79.2万戸で、リーマンショックの年を除けば初の80万戸割れ。前年比でも3.4%の減少となりました。
家が建てられないというより、「家を建てる人が減っている」というのが現実です。

ただ、そんな中でも、土地の価格(地価)は全国平均で4年連続の上昇となっています。特に東京・大阪・名古屋といった三大都市圏では上昇率が目立ち、転入者の多い地域やリゾート地、半導体工場の進出などで人が集まるエリアでは住宅の需要も高まっています。

これは一見すると矛盾しているように見えますが、「全体の人口は減っていても、人気エリアには人が集中している」という傾向の表れです。
つまり、どこでも家が売れる・建てられるわけではなく、「選ばれる場所」「選ばれる価値」がより重要になってきているということ。

不動産業界は「衣食住」の“住”を担う、生活に欠かせない仕事です。家はこれからも必要とされ続けるでしょう。
でも、これまでと同じ考え方では、立ち行かなくなるのは明らかです。

人口が増えていた時代は「需要に供給を合わせれば良い」状態でしたが、これからは「減る需要の中で、どう選ばれるか」が問われます。
そのためには、家や土地をただ“売る”だけでなく、「暮らし方の提案」や「将来を見据えたサポート」、そして地域の価値を高める発信も含めた“提案型”の不動産業が求められます。

たとえば、地方の中でも地価が安定していたり、子育て環境が整っていたりするエリア。
私たちが活動する香川県もその一つで、落ち着いた環境、穏やかな気候、都市へのアクセスの良さなど、多くの魅力があります。
このような地域の“本当の魅力”を、必要としている人にきちんと伝えることが、これからの不動産の役割の一つだと考えています。

家を建てる人が減る。
でも、家を必要とする人は「いなくなるわけではない」。

だからこそ、目の前のお客様ひとりひとりに丁寧に向き合い、「この家にして良かった」「この場所にして良かった」と思っていただけるような提案を続けていきたい。
時代が変わる中でも、そうした“暮らしの伴走者”として、不動産のあり方を少しずつバージョンアップしていくことが大切だと感じています。

【本日の一曲】
Lorraine / I’ve Got To Let Him Know